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バラの物語 |
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■バラの歴史とエピソード
●かなり古い時代の話 バラの原産は野薔薇です。中国西南部の亜熱帯地方(チベット周辺、中国雲南省、ミャンマー)にはバラの野生品種が多数生息していることから原産地は中国〜ヒマラヤ〜インドあたりにはなかったと推測されます。世界の古代遺跡や伝説にはかなり古くからバラが現れており古代から人々に愛されていたことがわかります。バラを「花の女王」と謳ったのは古代ギリシャの女性詩人サッフォー。紀元前7世紀、はるか昔のことです。 ●クレオパトラ〜ローマ クレオパトラ7世。カエサルとアントニウスというローマ帝国屈指の英雄達を手玉に取ったクレオパトラ伝説には「バラ風呂」と「バラ床」が必ず語られます。宮殿の床をバラの花びらで敷き詰めたり、膝の高さまでバラの花びらを敷いた寝室の話しなど空想をかき立てられます。ローマ時代はバラの花が貴族の贅沢品としてしっかり根付く時代です。古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』には祭りの日にはバラの花びらが惜しげもなく街頭でまかれた光景が記録されています。 暴君ネロ皇帝のバラシャワー(花びらを天井から雨のように降り注いで晩餐会の部屋をバラの花で埋め尽くした)伝説は有名です。君主がバラ遊びに高じれば貴族や民も同じ対象に関心を持っただろうことは歴史の語るところですが、この時代には大変なバラ需要が発生していたことが推測されます。 このことからバラはクレオパトラ時代からローマ時代には権力者の旺盛な需要を満たすために大がかりなバラ栽培が始まっていたのではないかというのが今日の定説になっています。ローマの場合、バラ栽培技術が未熟でエジプトより船でバラを輸入していたという記録があるそうですが、冷凍設備がないこの時代にそんなことが可能だったか素朴に疑問に感じています。 ローマ時代のバラは装飾に使用されると同時にお酒や入れて飲まれたり様々な利用方法がありました。お風呂文化が盛んだったローマ時代はバラ風呂が人気でした。ローマ帝国崩壊後はヨーロッパは風呂文化を衰退させることになりますが、同時にバラ文化も衰退します。 ●中東のバラ 一方中東では宗教儀式や生活の一部にローズウォーターの需要がありバラ文化を温存することになります。十字軍はその本来の目的とは別に中東の様々な産物をヨーロッパに持ち帰る結果となりますが、この中にイラン、イラク、シリアなどのバラがありました。 中世ヨーロッパではキリスト教会や修道院の中庭などでは薬草としてバラは栽培されることになります。それらは薬局の前進になりますし、現代のイングリッシュ・ガーデニングの基礎を作ることにもなります。数年前日本に上陸した「サンタ・マリア・ノヴェッラ」は今日では化粧品会社ですが13世紀フィレンツェのドミニコ会修道院付属の薬局が起源です。様々な効用が知られているバラは大切な「薬品」の一つでした。 ●ヨーロッパのバラ バラはその優雅さからヨーロッパの権力者の家紋やエンブレム、シンボルなどにも採用されていきます。薔薇十字団(ローゼンクロイツ。17世紀ヨーロッパで流布した魔術の秘密結社)、薔薇戦争(赤薔薇を家紋とするランカスター家と白薔薇家紋のヨーク家の熾烈な戦争。イングランドの内戦)など「バラ」の名前をもった団体や集団が歴史上に躍り出ます。またキリスト教では、赤バラはキリストの血、白バラはマリアを象徴し、イスラム教では赤バラは唯一神アッラー、白バラはムハンマドを象徴する花として不動の地位を獲得します。 ●近代のバラ 「朕は国家なり」と言い放ったルイ14世に象徴されるフランス絶対王政時代になると大がかりなバラ庭園が出現するようになります。その中で特に重要な庭園がナポレオン皇后ジョゼフィーヌのマルメゾン宮殿です。バラの熱心な愛好家であったジョゼフィーヌは、夫の不在の寂しさを紛らわせるためバラの蒐集に執念を燃やします。彼女は道半ばで燃え尽きるように亡くなるのですが世界中からバラをコレクションし、一方画家のルドゥーテを支援し「バラ図譜」を描かせました。 時代を同じくしてアンドレ・デュポンによる人工受粉による育種の技術が確立され、マルメゾン宮殿はジョゼフィーヌ没後も世界のバラ園の殿堂としてその地位と役割を果たすことになります。観賞用のモダンローズはジョゼフィーヌのマルメゾン宮殿にその基礎があるといえそうです。 ■バラの系譜図(系統) ●古代バラ ブルガリアローズと普通のバラがなぜあれほど違う印象を受けるのでしょうか?それはバラの家系図に秘密があります。バラ科には桜や桃も含まれておりかなり広範囲な仲間を形成しています。一般にバラといえばバラ科バラ属で、その遠い祖先には西洋バラの4種類と東洋バラの2種があります(その前をたどればけっきょく同一の野生バラに行き着くと思いますが、教科書的にはここからバラ系譜図が始まります)。 西洋バラ
●モダンローズの誕生 現在私たちが日常的に見るバラは高芯剣弁咲きのモダンローズがほとんどで、ダマスクローズなどを見るとバラには見えないかもしれません。カップ咲きや平咲きと呼ばれ、花びらは薄くヒラヒラとして気高いモダンローズと比較するとよれた感じです。 これら西洋バラと東洋バラが交配されることによって新種のバラが次々と生まれました。それらはダマスクローズの芳香にプラスしてティー系の香りを獲得し、四季咲きで、花びらは高芯剣弁咲き、さらに耐寒性、強健性というマルチな性質を獲得しました。代表するバラが『ラ・フランス』(1867)です。モダンローズの記念すべき第一号でこの系統は「ハイブリッド・ティー」と呼ばれとくに観賞用として現代のバラ品種の主流です。「ハイブリッド・ティー」以前をオールドローズ、以降をモダンローズと呼びます。モダンローズには上品なティーの香りがありますが精油用途としては向かず現在でもローズオイルといえばダマスクローズとセンティフォーリアが使用されています。 ローズオイルの香りを「バラではない」と断言するお客様がたまにいますが、その理由はエッセンシャル・オイルと生きている花の違いということと、またそもそも品種が違うという事実によります。
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