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( 香水工場の )

香る生活


香りのフリージア、エアリーフローラ
(2014/03/10)

石川県・金沢にフリージアを見に行きました。いや、香りを嗅ぎに行ってきました。(2014/02/25)
フリージア at 石川県農業総合研究センター


県がプロモートしているフリージア


向かうは石川県庁・農林水産部さん。フリージアの新品種「エアリーフローラ」を独自に開発し、県特産の花としてプロモーション活動をされている生産流通課さんへ。この日は生産流通課の中村さんと素都さんにお話を聞くことができました。


現在7種類が石川県のフリージア「エアリーフローラ」として生産販売されています。エアリーフローラは全国公募で選ばれたネーミングです。品種名ではなく商標(JA全農いしかわ)、もしくは商品名またはブランド名と言えます。




新しいフリージアの香り


はるばる金沢まで足を運んだ理由は、このエアリーフローラの香りを見せてもらえるとのお誘いを受けたからです。当社は香りのある花には目がなく、香りあるところには喜んで出かけます。

2014年、金沢フリージア

2014年2月25日、石川県農業総合研究センターのビニールハウスの中でつぼむエアリーフローラと初対面。香りを確かめるには、少し早すぎたようですが、雰囲気は伝わってきました。

どんな香り?・・・その前にエアリーフローラってどんな花?から始めます。




エアリーフローラの由来


中村さんによると、国内でのフリージア切り花の年間流通量は2500万本。フリージア栽培は、関東各県や静岡などでが盛んとのことです。たとえば、茨城県では500万本程度が生産されているとのことです。


エアリーフローラは、2012年から販売が開始され、今年は10万本の出荷を見込まれているとのこと。これを早期に100万本程度の拡大することが生産流通課さんのミッションです。




米所の隠れた有望新人


石川県で県主導のフリージア栽培がプロモートされている理由をお聞きしました。石川県は高品質なお米の産地です。冬期間は積雪のため水田では作物が作れません。

そこで、遊んでいる水稲の育苗用ビニールハウスを有効活用する作物が検討されてきました。その行き着いた結論がフリージアでした。


石川県周辺には「福井県のスイセン」「富山県のチューリップ」「新潟県のユリ」など、特徴ある切り花の産地が目白押しです。いずれもキーワードは「球根植物」。


北陸地方が全体として球根大陸になりかけている中、生産流通課さん内での検討も初期段階から自然と球根植物がテーマだったようです。とはいえフリージアの原産地は1年を通じて温暖な南ア。北陸の厳しい冬を越せるか、が一番の不安でした。


「これが、案外、行けましてねー」


にっこりする中村さんの表情がまぶしかったです。



エアリーフローラの誕生


フリージアは、霜に弱いのでハウス栽培になりますが、既存のビニールハウスが利用可能なこと、手間暇をかけずに、また冬場で昆虫被害も少ないため、ほぼ無農薬で栽培可能な点がポイントです。

お花の栽培は、とくに女性にとってちょっとロマンチックな部分があり、仕事の楽しさにもつながるかもしれません。


2004年、石川県農業総合研究センターではじまったフリージアの品種改良事業は8年の歳月をかけてエアリーフローラへと結実しました。パープルやオレンジ、レッド、ピンクなどカラフルな色彩と日本人好みな中間色がよくでたフリージアです。花持ちが良いことも特徴です。




2014年、金沢フリージア 石川県農業総合研究センター





エアリーフローラの香りの特徴


ハウス内では今ひとつ弱かった香りを確かめるため温度調整で早咲きしているエアリーフローラを別のお部屋で確かめることができました。一言で言えば、フリージアらしい優しいフルーティなフローラル。


7品種あるので順番に香りを確かめますが、個性がいろいろでフローラルの中にスパイシーな香りやシトラスのような爽やかさや甘酸っぱい香りが感じられるものがありました。その場にいた人々からは「紅茶のような」「胡椒のような」という表現も聞こえていました。


ちなみにエアリーフローラの中の「エアリーピーチ」は、47品種中、日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2013「フレグランス特別賞」に輝きました。フレグランス特別賞は「芳香がうるわしく、香りのデザインが優れた品種に授与」されるとのことです。



香りの成分


香りの成分分析リストもいただきました。香り分析はガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)と呼ばれる分析機で測定しますが、これは大企業の研究室か公的な研究機関さんでないとちょっと購入できない代物。


しかも計測には高度なテクニックと経験が要求されるためなかなか手が出せませんが、さすがに県主導のプロジェクトだけに手厚いサポートは頼もしい限りです。


私がいただいたリストには主要成分のみで微量成分は省略されていましたが、香りの成分名が一部でもはっきりしていることは大きなヒントになります。簡単に紹介しますと、7種類のフリージアに含まれている大まかな香り成分は下記の通りです:



  • ・リナロール(Linanol)・・・モノテルペン
  • ・αテルピネオール(Terpineol)・・・モノテルペン
  • ・リモネン(Limonen)・・・モノテルペン
  • ・βミルセン(Myrcene)・・・モノテルペン
  • ・オシメン(Ocimene)・・・モノテルペン
  • ・酢酸エチル(Ethyl Acetate)・・・果実臭




香り成分の説明


フローラルな香りが特徴のリナロールは、香りのよい花でこの成分を含まない花は、むしろ探す方が大変です。テルピネオールもリナロール同様、うっとりする芳香性成分です。


リナロールとテルピネオールは分子構造が非常に似ています。専門的になりますがヒドロキシ基(OH)の位置が違うだけです。ごく大ざっぱに言われることは

  • リナロール = スズランの香り
  • テルピネオール = ライラックの香り



甘酸っぱく爽やかな香りのリモネンは、柑橘類の果皮などに多く含まれます。有機化学ではテルペン類の超代表的な成分。リモネンも広範囲な植物に含まれる生体物質です。


あと上記以外の成分として、スパイシーさや紅茶様の香り、グリーン感を感じさせる香りの微量成分も含まれていそうです。




成分がわかっても香りの再現には遠い


上記成分を配合するとエアリーフローラの香りになるかと言われると、エアリーフローラの香りにはなりません。


これらの成分は、お花の香りとして多くの花に共通した成分ですので、おそらく心地よいフローラルな香りになりますが、しかし、エアリーフローラの香りの特徴は出しにくいでしょう。


お花の香りの調香は、多数の種類の香料から正しい香料をチョイスして、バランスが取れた配合比率を探ることですが、そのチョイスと比率の組み合わせは無限大です。カンとインスピレーションも重要です。運も大きいかもしれません。


余談ですが、調香にはそういう部分がありますので、歴史に残る名香も偶然できたものが案外多いと言われる理由かもしれません。香水業界の秘密なんですけどね。




エアリーフローラの香り


今回、お花の香りがまだ弱かったので、今ひとつエアリーフローラの香りのイメージができていませんが、お花が咲いた頃、再度エアリーフローラの香りを確かめて香りのイメージを頭の中に作ってみたいと考えています。


「武蔵野ワークスが作るエアリーフローラの香り」・・・試作のさらに前の段階ですが、どの段階まで行けるか、まだ予断を許しません。









※(補足:フリージアのウンチク)

フリージアの故郷は南アフリカ


フリージアは、現在16種の原種があるされ、多くはケニアから南アフリカまでのアフリカ大陸の東海岸で発見され、とくに南アフリカの最南端ケープ州で多くが発見されました。現在でも新しい原種が発見され続けています。


私自身、フリージアの原種を見たことがないので空想ですが、南アフリカの海岸では現在でもフリージア原生群が大地を黄色く染めているのでしょう。香りがよい花だったので、それをはじめて発見した西洋人が美しさと香りに驚き酔いしれたことは想像に難くありません。




フリージアの品種改良が盛んなオランダ


フリージアは姿のかわいさと香りのよさ、それと複数の原種が南ア共和国のケープ州という比較的狭いエリアで採取できたことで、品種改良の対象となりやすかったと思われます。


フリージアの品種改良が盛んな国はオランダです。オランダ産フリージア品種は現在150種類程度あるとされます。


オランダは、17世紀にかの有名なチューリップ投資バブルが発生したお国柄、伝統的に花や野菜の品種改良が盛んで、現在でも世界有数のハイテク農業国です。フリージアの新品種は現在も毎年のように作出されています。



日本のフリージア


現在、日本では花びらの数(一重や八重)が違うもの、色彩(白や紫、ピンク)が違うものなど様々なフリージアが流通しています。代表的なフリージアは、黄色が鮮やかなアラジン(Aladdin)。フルーティで爽やかな香りが特徴です。




(2014-03-10)
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