廃盤になった香水の復刻
生産が終了した香水は、永久に再制作不可能と考えた方がよいかもしれません (2018/01/10)

香水の復刻
(香水の復刻は、難あり)


香水復刻の問合せ


よくあるお問い合せの一つに香水の復刻があります。廃盤になった市販香水の再製造です。

当社サイトではあちこちに「(注意)他社製フレグランス・香水類のコピー・イミテーション・復刻は行っておりません」と注意書きを入れています。

それでも・・・

・「なくなりかけたおみやげの香水を制作してください」

・「20年前に愛用していた○○のローションの香りを再現して」

・「少量残っているのでこれを送れば再現してくれますか?」

・「あと少し香水が残っていますので、それをもとに同じ香りの香水を作っていただけますか?」

などなど・・・お気持ちはわかります。しかし、いろいろな問題があり、当社ではお受けしません。困難が多すぎますので。


成分分析の問題


香料成分は分析機(ガスクロやガスマス)にかけても100%成分を分析できることは希です。

仮に99%分析できても香りとしては不完全なことが多い。成分によっては0.01%でも香りは変化しますので。


香料・原材料が入手できない


仮に成分が100%判明したとして、その成分が入手可能かというと、これが問題。

実は、毎年業界の自主規制などで使用できない成分が増えています(反面新しい成分が作り出されています)。使用できなくなった成分を他の成分を代替することが一つのリスクなんです。また苦労も大きい。

ある世界的な大手化粧品会社さんの話です。80年代にリリースされ、すぐに廃盤になったある名香はファンが根強いため、2000年くらいに再リリースのプロジェクトが持ち上がりましたが、結果的に頓挫しました。

プロジェクトがなかなか進まなかった理由として、規制上使用できなくなっていた香料の代替品でのアコード取りに苦悩されたという話です(このときのパフューマーは、これが直接の原因かどうか不明ですが、自殺されたと聞いています)。


予算・資金的な問題


ガスマス成分評価だけで、おそらく一般のお客様のイメージされている価格を超えます。

仮に成分が100%分析されて、仮にその成分が入手可能として(実際は入手できないことが多い)、その原材料の仕入れコストがご予算に合うかどうか、考えるまでもなく予算オーバーのはずです。


著作権・工業権の問題


近年、香水の処方には知的所有権、工業権、著作権などが認められるようになりました(とくにEU内)。

近年まで人気ブランド香水のコピー商品が堂々と販売されている観光地などありましたが、今後は世界的に減少していくと思われます。EUはこのへんに敏感で今後規制を強めてくると思います。


お客様の満足度・期待値の問題


仮に苦労して製品制作にたどり着いたとします。それで、お客さまが満足してくれるかどうかが、また別問題です。

「ちょっと違うわ・・・」という感想が容易に予想されます。

それは思い入れが強すぎてイメージが膨らみすぎているためです。特に現物が既に手元になく実際の香りと比較できない場合、容易に起こります。

また、実際のモノが手元にあっても、年月が経過した現物と新しく制作した香りでは違う香りになっているリスクもあります。

香りの感じられ方は、非常にナイーブで気持ち一つでよくも悪くも感じられるもの。その時の心境一つでかなり揺れることは経験上歴然です。心理実験でも確認できます。このリスクは予想以上に高いものです。


自社製品でさえ復刻しないメーカー


以上の事情のために、なんとメーカーは自社製品さえ復刻やコピーをやりたがりません。

世界には数々の名香が、香水史に刻まれてきましたが、名香でありながら廃盤になったものも少なくありません。人気があっても廃盤になる理由は、使用できなくなった香料の問題が大きいと思われます。

代替品の開発に膨大な時間的・金銭的・人員配備的な投資が必要で、それでもそれまでのファンを満足させられるかリスクが大きい。それだけのお金を投じて、なお勝算があるかという問題ですね。


イミテーション


最後にイミテーション(似せた物)の問題です。復刻でなくイミテーションでよいのではというご意見もあるかと思います。

イミテーション香水は、現在でも世界中で後を絶ちません。海外旅行すれば、大手ブランドさんのイミテーション香水が破格な値段で露天に並んでいる光景に出くわすことがあります(近年は減少傾向ですが)。

しかし、このイミテーションでハッピーなる客層と、復刻を望む客層はまったく別の客層です。復刻を望むお客様がイミテーションで満足することはないでしょう。


※この記事は、2005-11-13に投稿した記事を加筆訂正して新規に投稿したものです
  • (2018-01-10)
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