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( 香水工場の )

香る生活


オリ、天然成分の異物

オリとは?


「オリ」というコトバを聞いたことはありますか?食品や化粧品製造関係者の間では普通に使われるコトバです。

漢字は「澱」(おり)と書きます。いかにも沈殿物っぽい感じですね。


ワインのオリ


日本酒や赤ワインは製造過程で様々な成分が浮遊したり沈殿したりします。それら成分を澱(オリ)と呼びます。

商品にするには透明度が要求されますので、それらは濾過されたり、強制沈殿され取り除かれます(澱引き)。

ワインのボトル内で澱(オリ)が浮いたり沈殿していては、「異物」や「不純物」に見えて消費者は恐ろしくて買えません。

しかし、澱(オリ)は、アルコールに溶けきれなかった天然成分です。

大量の澱(オリ)が発生する赤ワインの醸造では、その澱(オリ)はタンニンやカロチノイド(色素成分)であることがわかっています。

これらには抗酸化成分であるポリフェノールの一種でアンチエイジング効果が期待される天然のミラクルサプリになりえます。

これらが産業廃棄物としてワイン醸造所から廃棄されるのはとてももったいない。


香水のオリ


それはさておき、実は、香水の製造過程でも澱(オリ)は白濁(はくだく)同様大きな問題です。

天然成分、天然香料には澱(オリ)の原因となる成分がいっぱい含まれています。

これらはふつう濾過などによって取り除くのですが、数日後〜数ヶ月後、数年後に再結晶化して沈殿したり浮遊物のようになる場合があります。

これは恐ろしい。悪い成分や異物ではないはないのですが、お客様からすれば「気持ち悪い〜」という印象は避けがたい。


いろいろ形状のオリ


香水の液体の中に何やら半透明でウニュウニュしたものや、糸状につながった何か、あるいはボトルの底に沈殿する白い球体や茶色の固体・・・いろいろなものがあります。

まるで山中湖に浮遊するマリモ(毬藻)のようなヤツもいます。事情がわかっている私が見ても「これはちょっと・・・」と悩みます。


業界の多くの人が対策に頭を悩ませる


昨年ブルガリア、バラの谷のエニオ蒸留所を見学の際にローズウォーターの品質管理のすばらしさに感動したのですが、澱(オリ)の問題は悩ましいとのことでした。

ローズオイルは非常に強烈で強力なオイルですが、成分も濃厚である種のタンパク質が溶けずにウニュウニュしがちです。いくら濾過しても出てきます。

澱(オリ)の解決には界面活性剤の添加や高分子多糖類や鉱物性物質などの添加剤(澱下げ剤)を使用するのも一つの方法です。

しかし、当社では界面活性剤や澱下げ剤などは使用していません。


界面活性剤は使用しないスタンス


澱(オリ)を事前に落とす低温保管&濾過(フィルタリング)という伝統的な製法と、香料によりますがその他の製法に依存して澱(オリ)の除去を行っています。

しかし、製法だけの手法では限界があるのも事実です。

経験的に強い天然香料(ローズオイルのように生理的な作用が大きいと言われる精油など)により大きな澱(オリ)のリスクがあります。

幸い、今までのところ澱(オリ)によるクレームはそう多くはありませんが、お客様が増えるにしたがいこの辺の問題解決はもっと研究が必要と考えています。




(2007-02-27)
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