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( 香水工場の )

香る生活


フィトンパワー
フィトンチッドとは植物が発散する香気成分の総称です。「フィトン」が植物で「チッド」が殺すというロシア語で、本来の意味は「植物の殺傷成分」です。英語ではPHYTONCIDE。穏やかでないネーミングですが、植物世界の「生き馬の目を抜く」激しい生存競争を象徴する成分です。

森林をハイキングすると「なんて穏やかなところ」と感じるかもしれませんが、人のリラックス感とは裏腹に植物同士は太陽光(人でいえば食料)と大地(人でいえば不動産)を奪い合う熾烈な競争を繰り広げています。大木の下や周囲には雑草や他の樹木が育たちにくいことを知っていますか?大木がフィトンチッドで敵対するライバルたちを芽のうちに殺すためです。

また、虫や動物に対してもフィトンチッドは有効です。スギやヒノキなどに殺菌・抗菌作用があること日本人には馴染みの事実です。クスノキから採れる樟脳(カンファー)は長い間箪笥の虫除けとして、またお寿司屋さんではヒノキのカウンターを使用し、スシネタはスギやサワラの葉とともに保管します。ワサビも一種のフィトンチッドです。ピリッとうまいだけでなく殺菌効果も効いています。

フィトンチッドの成分はテルペン類です。テルペンとは、ある種の有機化合物(イソプレン C5H8)をベースとする複合体で多様で多彩な種類があります。テルペン類は香気成分となるものが多く、香水にとってはなくてはならない原料です。テルペン類の例を挙げてみると

ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、ボルネオール、ファルネソール、ネロリドール、α-ピネン、カジノール・・・

一般の人には馴染みがないと思いますが、香水・香料の「いろは」をかじった人には、ゲラニオールやリナロール(バラや花の代表的香気成分)など、香水の典型的な成分ばかりで驚くことでしょう。

フィトンチッドには殺菌・抗菌作用があり、虫よけにもなるということは、実は人にも影響を及ぼします。日本(日本だけでなく世界的な傾向ですが)の消費者の方々には「天然信仰」のようなものがあり、「天然ならすべてOK」のような誤解があります。

しかし、じっさい木材の精油として有名なα-ピネンやリモネンは人をリラックスさせる効果を発揮すると同時にハウスシック症候群の原因となるアセトアルデヒドを生成することも知られています。

要は用量や使用方法を間違えば、天然物であろうと人工合成化学物質であろうと無関係に毒性を発揮します。


参考資料・・・フィトンチッドについてたいへん有意義な情報を提供されているサイト:
フィトンチッド普及センター
(2007-04-24)
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