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( 香水工場の )

香る生活


水蒸気蒸留、ハーブのディープな楽しみ方
精油(エッセンシャル・オイル)が水蒸気蒸留から採れることはよく知られています。

ハーブ栽培の愛好家は、最初は我が家の食卓の香味としてバジルやパセリ、ルッコラ、シソなど植えて、香り足しと生の葉をそのまま料理に落とす程度から始める人が多いと思いますが、そのうち乾燥させてハーブティーにしたりお酒に混ぜたりいろいろ利用範囲が広がっていきます。

そして、最終的には蒸留してエッセンシャル・オイルやハーブウォーターを採取して手作りコスメや手作りアロマテラピーまで行ってしまう愛好家の皆さんも少なくないようです。特に一定の広さの畑を持てる方なら自家製エッセンシャル・オイルには心惹かれるものがあるのではないでしょうか?

ドライフラワーなどで蒸留することもできますが、お花の最高のエッセンスを採るには摘み立てが一番。自分の畑がないと最高の精油は採れません。

実は武蔵野ワークスも会社で小さな畑を所有したいと考えています。バラやハーブなどを自社栽培し精油精製を行う予定です。もちろん実験用もしくは限定リリースのための製品用です。通常のプロダクトラインに採用するには、とても量・質ともに安定供給が望めないことがわかっているからです。

近場で借りれる小さな畑がないか不動産屋さんに相談していますが、実現したらスタッフには通常業務に農作業が加わります。

武蔵野ワークスが仕入れるエッセンシャル・オイルは現状ほとんど海外からの輸入です。残念ながら日本では精油生産を目的としたハーブ農場は少なくまた産業目的の精油蒸留所も多くありません。当然蒸留器を生産している企業も多くありません。

機会があれば、日本のハーブ産地や蒸留所(蒸留所は刈り取ったハーブの鮮度が落ちないうちに運び込めるように通常ハーブ畑の近くに建てます)の取材をしたいとかねがね考えていますが、その一部として先週、蒸留器を制作している会社さん(東京都東久留米市)にお話を聞いてきました。当社がある国分寺から車なら30分程度で行くことができるという立地のよさがラッキーでした。

その前に・・・蒸留器とは何でしょう?

蒸留とは加熱によって液体を気化させる行為を指し、そのための装置が蒸留器です。たとえば、水を蒸留する場合、水を沸騰させ水蒸気を生成させることが蒸留で、その水蒸気を冷却して再度水に戻したものが蒸留水です。

蒸留水は異物が取り除かれるため純度が高いことが特徴です。日本酒やワインを蒸留するとそれぞれ焼酎、ブランデーといった蒸留酒になります。ウイスキーもスコッチも蒸留されてできた蒸留酒です。

蒸留器は、ごく単純にいえば、原料を加熱・沸騰させるタンクと蒸気を冷却し、その結果生成された液体を貯めるタンク、及びそれらをつなぐパイプの3パーツで構成されています(実際はもっと複雑です)。


精油精製用の蒸留器

さて、ハーブの精油はどのように採取するのでしょうか?グレープフルーツやオレンジなどの柑橘系はその皮を低温のまま圧搾しますが、多くのハーブは「水蒸気蒸留法」によって精油を取り出します。

水を焚き、立ち上る水蒸気がハーブを通過する過程でハーブの細胞壁が壊され内部のエッセンスが水蒸気とともに放出されます。それを冷やすと水蒸気は水に戻りますが、その水にはハーブエッセンスが含まれ(ハーブウォーター)、その上澄みとして精油がたまるという仕組みです。


東久留米の会社さんの蒸留器

会社名は許可が出ませんでしたのでここでは公開できませんが、仮に○○技研と呼びます。

○○技研はプラントの設計事務所。本業は様々なプラントの設計を行っていますが、7年くらい前に事業拡大というより社長さんの趣味の延長線上で蒸留器を開発してみたのが始まりです。

「本当はハーブ園やハーブ教室などからの需要を見込んでいたのですが、作ってみると国の研究機関や、業務用、農林試験場などからの問い合わせがほとんどでした。まあ、個人で使うには大きすぎるし、ハーブ園や教室でも、やはり大きかったんでしょうね」

と笑いながら答えていただきました。原料タンクの直径が45cm。ちょっと考えただけでも原料タンクを満たせるだけのハーブを入れるのは個人やちょっとしたハーブ園ではかなりハードルが高そうです。

「そんなことがあって、今度こそ家庭用の小型卓上蒸留器を開発しようかと考えています」

といって部品を見せてくれましたが、試作段階とのこと。

「ある程度試作したんですが、長いことそのままになっているですよ」

お聞きすれば本業の方が多忙になり、ミニ蒸留器の開発は宙ぶらりん状態。蒸留そのものは昔から普及している技術で、蒸留器の開発は、完成度の善し悪しはあるとしても特殊な技術力は要求されないとのこと。

しかし、個人向け・家庭用ミニ蒸留器は、実験器材のような見栄えになったら消費者には受け入れてもらえないので「インテリアとしても可愛い、あるいは趣のあるデザインにするのが、どうも大変でネ〜」と社長さんはニッコリです。

現状、家庭用ミニ蒸留器のリリースは未定とのこと。またすでにリリースしている業務向け蒸留器も多忙のため現在は一時生産を休止しているそうです。

想定外のお客様からの問い合わせはありますか?

「面白いところではお茶屋さんや漢方薬のお店ですかね。私はエッセンシャル・オイルの精製用を想定していましたが、蒸留という行程は、食品や医薬品を作る行程に応用できます。

お酒だって造れますし、薬も作れます。石油の精製にも・・・驚くべき問い合わせも多いのでびっくりです。お取引できないケースも多々あります。化学装置屋さんには、どうしても多少付いて回る問題なんですけどね」

家庭用ミニ蒸留器を近い将来リリースされる可能性はありますか?

「ハーブ蒸留人口増えれば。それと、私のデザインがよくなれば、という条件がつきますけど」

現在、日本中で数十基稼働している○○技研の蒸留器。日本の精油カルチャーに貢献してくれることを祈ります。



(2007-06-13)
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