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( 香水工場の )

香る生活


九州の櫨4 和蝋燭とイケているオトコのポマー
●和蝋燭

ハゼ蝋(櫨蝋)からは、どんな製品が作られているのでしょうか?

和蝋燭(わロウソク)に欠かせないのがハゼ蝋(櫨蝋)。和蝋燭は現在でも仏像など安置するお寺などで使用されています。ヨーロッパの古い教会を訪れると、その神秘的な空間とは裏腹に煤(スス)で教会内部がかなり痛んでいる様子が観察されます。

ヨーロッパの教会では現在はおそらくパラフィン・ロウソクが使用されていると推測されますが、古い時代ではミツロウのロウソクがメインでした。

日本のお寺は西洋の教会と比較して、より頻繁で日常的にロウソクが焚かれてきたと考えられますが、お寺内部のスス汚れは少ないと思います。それはハゼ蝋(櫨蝋)から制作される和蝋燭に理由があります。

ハゼ蝋(櫨蝋)の和蝋燭はススが少ない上に、ススそのものが簡単にふき取れます。パラフィンなど石油系のロウソクは、煤(スス)が多く、さらに悪いことに壁や物への付着後、ヤニのように粘着性が高いのです。

仏像の表面を覆う金箔を痛めやすくパラフィンロウソクは注意が必要です。そのため現在でもお寺では和蝋燭は欠かせないものになっています。逆に西洋や中東・インド・アジアの教会・モスク・お寺などに和蝋燭をお勧めしたいくらいです。


●イケているオトコのポマード
ロウソク以外にどんな製品がありますか?と荒木製蝋の荒木社長に聞いてみました。

高い需要があったのが「ポマード」とのこと。現在でもお相撲さんの鬢付け油(びんつけゆ)にはハゼ蝋(櫨蝋)は欠かせません。「鬢付け油」とは「日本髪で、鬢を張らせたり、髪を固めて形づくるのに用いる固く練った油。生蝋を植物油で練って香料を混ぜたもの。固油(かたあぶら)」(三省堂 大辞林)。鬢付け油=和ポマードですね。

ポマードといえば、元祖「柳屋 ポマード」。若い人はわからない、私の世代も微妙にズレてはいますが、もう少し上に行くとあの頃オトコを決める整髪料はポマードでした。

昭和20年代〜30年代の映画を見るとカッコいいオトコたちの頭はテカテカに輝いていたものですが、あの多くは創業1615年(関ヶ原の戦からわずか15年)、日本を代表するヘアケア・ブランド柳屋さんのポマードだったに違いありません。

「柳屋 ポマード」の成分を調査してみました。

「ヒマシ油、モクロウ、水添ヒマシ油、香料、ソルビタン、脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン、クエン酸、・・・」(株式会社柳屋本店)

2番目にリストアップされている(つまり、2番目に配合比率が高い)「モクロウ」こそが、ハゼ蝋(櫨蝋)そのものです。「櫨の実」から精製される蝋(ロウ)は「櫨蝋(ハゼロウ)」または「木蝋(モクロウ)」と呼ばれます。化粧品原料としてのネーミングは化粧品連合会にて「モクロウ」という名称にて統一されています。

なるほど、ハゼ蝋(櫨蝋)は日本のイケているオトコたちを支えてきた小道具だったんですね。柳屋ポマード全盛期の頃の男性ファッションはけっこうガツンとカッコよかったものですが、メトロセクシャルと呼ばれる現在流行のメンズコスメブームとは一線を画すセンスでした。


(2007-11-15)
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