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( 香水工場の )

香る生活


木蓮のちょっと切ない思い出
木蓮(モクレン)の花が咲きました。東京ではすでに散りかけています。完全に散ったものも少なくありません。

この季節は桜というスーパースターの存在が大きすぎて、木蓮はイマイチ話題に上りませんが、豪快ながら上品な咲きっぶりが素敵な花です。またその香りも上品の一言です。

私の実家の玄関には見事な花をつける木蓮が植えてありました。紫と純白の大柄な花がパカッと割れるように咲く様は子供心にもわかりやすく、木蓮が咲く季節は小学生のガキにとっても気分がよかったのですが、ある日、父親が乱心して主木を伐採するという事件を起こしました。学校から帰宅すると木蓮のあの大木が小さくなっていたのです。

「木蓮は、家の高さより高くなると、その家は繁盛しない」という迷信をどこかのお寺から聞いてきたらしく、そのあげくの果ての乱心でした。本当に悲しかったです。しかし、今でもその木蓮は脈々と毎年花を付けてくれています。


ところで、現在住んでいるマンションの裏手のお宅の庭には梅・木蓮・桜が植えてあります。部屋の窓からも毎年それらが春、順々に花を付けていく様が楽しめます。

今年、窓から見える木蓮の花に異変を感じました。花が例年より少ないのです。

老夫婦だけで暮らされているそのお宅では、おじいさんが庭いじりを趣味とされていて、お庭にも家の周囲にも様々な花や草木が植えられていました。

私が出勤時に裏口から出るとき、おじいさんとはよく顔を合わせるので「おはようございます」と声を掛け合います。お互い名前さえ知らないまま何年も挨拶をしてきました。

つい最近も声を掛けたような記憶があるのですが、近所の方の話によるとおじいさんが亡くなった後、おばあさんだけでは樹木の手入れができないという理由で大きな枝をかなり落とされたということです。

一年前の話だそうです。

考えてみれば去年見事な花が咲き、散った直後木蓮の枝は伐採されたことになります。つい先日挨拶をしたかのようなあのおじいさんがお亡くなりになられたことが、にわかに実感できず言葉がでませんでした。知らない人とはいえ、心に穴が空いたような寂しさです。

ご冥福をお祈りいたします。

そして、明日は我が身、またどこかでお会いしましょう。

木蓮モクレン
(2008-04-05)
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