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( 香水工場の )

香る生活


目利きができないので何枚も買ってしまう
香水のプロにもいろいろいます。前に自称「香水のプロ」から電話がありました。

私が知らない銘柄の香水をどんどん上げて、上げるごとに「知っているか?」と聞かれましたが、程々で打ち切ったので、その男が香水の何のプロだったか、何のための電話だったかわかりません。

推測するに自称「香水の仕入れのプロ」だったかもしれません。珍しい香水を調達できるルートを持っていて卸したかったのでしょうか。

もしそういうことなら、この男はバイヤーということになります。

バイヤーには、市場の需要を読む能力や珍しいメーカーや供給者を開拓してくる能力などのさまざまな能力が求められますが、中でも製品や商品の品質を目利きできる能力は非常に大切だと思います。

当社は香水専門店ではなく、香水メーカーなので、他社製の製品の目利きよりも、どちらかといえば、原料に対する目利き重要です。特に天然香料は産出する地域や時期によって品質が違いますし、年ごとに違いますし、もっと言えば農家ごとにも、その農家の畑ごとにも微妙に違ってきます。

コーヒー豆の買い付けバイヤーが豆を手のひらで転がし、つぶし、口に入れて味と香りを見るという光景はテレビなどで記憶の方もおられるかもしれませんが、天然香料の仕入れも少し似ています。研究機関には高価な分析機もありますが、天然香料の購買は、人の鼻、場合によっては口に入れて香りを確かめることで最終的な判断を下します。

私もこの業界に転職してきて数年、担当違いですが、なるべく香りの目利きができるよう機会あるごとに香料の目利きをトレーニングしています。その成果もあって天然香料の善し悪しの判断はまだできないものの、クオリティに対して自然と注意が向き、感性が刺激されるようになりました。


話は変わります。

昨日、近くの百貨店でジャケットとシャツを購入しました。私はお世辞にもオシャレではありません。昨日、自分が人生でオシャレな着こなしをできなかった原因が判明しました。

・国分は、服の生地に対する目利きができない。
・国分は、服の仕立てに対する目利きができない。

少しシュールな感じで売る気がありない男性店員さんに薦められ、あるイタリア製の生地を使用したシャツを試着してみました。

シャツが自分の体型に馴染むようにメリハリを付ける様子に、昔からの疑問が解けた思いがしました。ヨーロッパ人のスーツの着こなしは、一般的な日本人と比較すると体型以外に「何かが違う」と今まで感じてきましたが、彼らはシャツに気を遣うに違いありません。

イタリア製だから生地がよいというわけではないでしょうが、生地の品質は相当よいものが使用されているという説明を受けて納得。そう言われて触る生地の感触は確かに違います。柔らかいのに腰があり、しかもサラッとして気持ちの良い感触です。

自分は生地そのものにあまりにも無関心に暮らしてきた生活を発見しました。

私の普段着の買い方は、比較的安いお店で目先の柄や色、デザイン、価格だけで何枚も買い込む傾向がありますが、生き残る服は多くありません。結局気に入らず何回もはかず・着ずお蔵入りという無駄なサイクルを繰り返していました。飽きもせずムダとなったズボンは山のよう。オシャレになれないわけです。

ファッションを選ぶ際、生地に対する目利きができるのとできないのでは、ファッションに差がでそうです。おじさんオシャレ改造計画のベーシックコースは、生地の見方からはじめたい。

これは、香水の選び方にも通じるかな、と感じています。

同じ原料でも原料には多彩なグレードが無数に存在し、グレードが違えば同じ処方で制作された製品にも大きな差が出ます。香水ファンの中には使用されている原料それ自体の目利きができるお客さまの多いものです。コストが許される範囲で、彼らが納得する原料や唸る原料を常に捜し、原料に対する緊張感を失わないことが私のミッションです。
(2008-07-28)
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