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( 香水工場の )

香る生活


香水の種類分け #8
「香水の種類と分類」の8回目。下記は香水タイプ・種類分類方法の一つです。

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(1). フローラル・タイプ(花束をイメージ)
(2). アルデハイド・タイプ(モダンなイメージ)
(3). グリーン・タイプ(緑をイメージ、ユニセックス)
(4). フルーティ・タイプ(果物をイメージ)
(5). ウッディ・タイプ(樹木をイメージ、知的)
(6). シプレー・タイプ(オークモスとベルガモット、格調)
(7). フゼア・タイプ(メンズ)
(8). タバック・レザー・タイプ(葉巻タバコと皮革、ダンディ)
(9). オリエンタル・タイプ(東洋、エキゾチック)
(10).シトラスコロン・タイプ(柑橘系、爽やか)
(11).マリーン・タイプ(海をイメージ)
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きょうは(11). マリーン・タイプ(海をイメージ)の続編です。


1980年代の後半、世界のパフューマーたちはこの水の匂いを求めていました。そこで登場したのが、合成香料の「キャロン」です。(※私はフランス人やアメリカ人がどんな風に発音しているのか知りません。私は「キャロン」といいますが「カロン」や「キャローン」と呼ばれることもあるようです)

合成香料や合成物質というと何かすべてが悪事の賜物にようなイメージを抱いておられる方がおられますが、実はかなり自然なモノが多いのです。たとえば、ビタミンC。私たちの毎日の食品や薬品やサプリメントに配合されるビタミン類はほぼ100%合成で製造されていることはご存じの通りです。

合成香料や合成物質の多くは、自然界に存在する優れた天然成分を分子レベルで再現することで得られます。ところが、一方で合成香料や合成物質の中には自然界に存在しないモノで化学的プロセスを経て人工的に作り出されるものがあります。これが「ニューケミカル」(アーティフィシャル=人工物質)です。

キャロンは完全なニューケミカル。自然回帰というトレンドにおけるヒットの立役者がキャロン!?・・・ニューケミカルがヒット立役者だったという事実は皮肉です。

「自然界に存在しない物質=ニューケミカル」に対しては様々な賛否両論があり簡単に白黒つくものではありませんが、少なくとも安全性の検証という観点からすれば、10年や20年、どうかすると半世紀や一世紀後に発ガン性や環境ホルモン問題がわかるようなものもあるので、扱いが大変難しいことは間違いありません。

自然界に存在しないアーティフィシャル物質は「作らない」・「使わない」・「捨てない」という「アーティフィシャル3原則」を唱える人々が多いことも事実です。また一方で炭素繊維や新素材の分野ではもはや後戻りできないほど人類はそれまで自然界に存在しないか、存在してもごく微量にしか存在しなかったモノを大量に生産し、そしてすでにどっぷりと依存していることも事実かもしれません。この問題は奥が深く今後も論争は続くと思います。

さて、キャロンに戻ります。ネットでマリーン・タイプやオゾンノート系の香水の説明を読むと「朝霧にかすむ森林の中の透明感のある香り」のような説明があります。キャロン香水の説明、万事この類で、歯が浮くような褒め言葉に満ちているものが多いようです。

それはちょっと褒めすぎのような気もします。日本人にはキャロンが強すぎると具合が悪くなる人が多いことは経験的に感じることです。おそらく海外の人々も具合が悪くなる人は多く、近年、欧米でも香水を嫌う人が増え始めていますが、そのきっかけはキャロンや合成ムスクではないかと個人的に考えています。

キャロンについて貴重な資料がありますのでご紹介します。

なお、キャロンは英語で「Calone」と書きます。

下の記事にはコム・デ・ギャルソンの香水の調香を担当しているシムライズ社(メジャー香料会社の一つ)のパフューマーの話が掲載されています。「彼はその匂いが嫌いだった。しかし、その静かで、通り抜けるような拡散効果に魅了された(hated the smell but loved the effect, that quiet, penetrating radiance)」という表現が見えます。個人的にこれがCaloneの特徴をよく言い表している気がしています。

●要約:
「ファイザー製薬の科学者が1966年にトランキライザー(精神安定剤)に分子構造が似ている奇妙な分子構造の成分のパテントを申請しました。匂いはなかったのですが、あえて表現すれば「メロンのような」匂いでした。

ファイザー製薬は当時買収したグラースの香水メーカー"Camilli Albert Laloue"社にその物質を渡します。彼らは社名にちなんで「Calone」(キャロン)と命名しました。しかし、その後この物質は長い間放置されました。

1989年、イヴ・タンギーというパフューマーは「水の匂いの香水の時代が来た」(the time for watery notes had come)と考え「New West」という製品をリリースします。その数年以内にエスケープ、ケンゾーオム、ロードイッセイなどにキャロンは採用されていきました。」


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Calone
NZZ Folio 09/07 - Thema: Sicherheit Inhaltsverzeichnis
Calone
By Luca Turin

In August 1966, chemists at the drug giant Pfizer filed a patent for a strange molecule that looked like a tranquilizer (distantly related to Valium) and smelled like nothing on earth, or “melon” as they prosaically described it. Pfizer had bought the venerable Grasse firm of Camilli Albert Laloue two years earlier, so they handed the beast over to their perfumed friends who christened it Calone after the firm’s initials. There it slept for twenty years, while the patent ran out. Then in 1989 perfumer Yves Tanguy understood that the time for watery notes had come and composed New West. Within three years Escape, Kenzo Homme and Eau d’Issey had put Calone at the forefront of perfumery, where it still is. (略)

Synchronicity: I called Mark Buxton, a Symrise perfumer who did many Comme des Garcons fragrances and, almost alone, created the new aesthetic of transparent woody florals that everyone is imitating. I asked him how it all started. He said “Calone”. He hated the smell but loved the effect, that quiet, penetrating radiance. (略)
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(2009-02-09)
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