香水トレンドを探る取材その2・・・
流行とは一線を画し続けてきたフレグランスショップ『香水セレクト』


(注)「香る生活」WEB版では、取材対象者の個人名は「○○」にて代用されている場合があります。ご了承ください。

今度は自由が丘にある香水ショップ『香水セレクト』(以下セレクト)さんにお話を聞いてみます。渋谷から10分。小さいながらもセンスある生活雑貨屋・スイーツ・インテリアショップが点在するこの街はショッピングが楽しい街として有名です。夕暮れ時、そろそろ通勤混雑がはじまる時間帯、もう駅周辺は重箱をひっくり返したようなにぎわいです。

お店は、自由が丘駅に隣接して古き良き時代のレトロな面影を残す自由が丘デパートの地下1階にありました。店長兼オーナーの内海さんにお話を聞くことができました。もともと外資系化粧品会社で働いていた内海さんは10年前に独立後、この地に香水専門店をオープンさせました。香水が好きだったことが一番の理由ですが「化粧品はお客様の要望に誠実になればなるほど薦められるものが少なくなりますが、香水は逆に拡げられるし満足度も高くなります」と最初からカウンセリング重視の販売に徹しています。

このお店の特徴は入った瞬間に感じられます。一般的な香水ショップや量販店では、ブルガリ、ジバンシー、グッチのようなメジャーブランドの人気香水が目に飛び込みますが、ここで目に飛び込むのは他のお店ではあまり見かけない香水です。ロジーヌ、カルティエのソープリティ、ル・ベゼ・デュ・ドラゴン、キャロンのナルシス・ノアール、サラ・ジェシカ・パーカーのラブリー・・・

企業秘密をお聞きします。どのようなところから仕入れているんですか?

---通常の香水商社です。日本のさまざまな輸入業者さんと取引がありますよ。ただ、当店の場合、私自身で海外へ買い付けに行きます。米国をはじめ数ヶ国、年に最低4回程度でしょうか。取引相手は現地のディーラーさんが多いのですが、珍しいものを探すには特定のディーラーさんだけでなく、新しいディーラーさんとのネットワークを拡げる必要があります。現在は、インターネットが普及して海外の情報も比較的入手が容易になってきましたが、インターネット情報の信頼性の低さを考えると今でも「自分の足で探し、自分の鼻で確かめる」ことが大切。「マメに歩くこと」が仕入れの基本ですね。

セレクトは自由が丘店だけの1店舗展開。量を回転させるより珍しい商品の種類を増やすことで特色を出されようとしています。セレクトのコレクションは1300種類。海外で発表され日本未公開の香水や数量限定のプレミア商品は要チェックアイテムですが、それらにプラスしてお客様から指定された商品や「こんな香水ない?」とご要望いただくものがそれなりに多くあるそうです。見せていただいた大学ノートにはお客様からの要望がぎっしりと書き込まれていました。

お目当ての商品を見つけても実際に自分で香りをチェックし納得がいかなければ取引しないこともあります。内海さん自身は自分の好みがはっきりしているのですが、商品選びはあくまでもお客様の視点から見て判断すること「いい香りだけど日本でニーズはある?」と経験を積んだ現在でも迷うことがあるそうです。ニーズ予測はバイヤーの究極の能力です。そのへんは奥が深そうです。

お客様の接客は簡単なアンケートからはじまります。どんなシーンで使用したいか、今まで使用した香りで好きだったもの、嫌いだったものなどを内海さんやスタッフの方が聞きながらメモしていきます。もし何かをお買い上げいただければ、メモされた内容は顧客ごとに「カルテ」として記録されてます。不特定多数のお客様を対象とするセルフ方式を好むお客様がいる一方、コミュニケーションのあるショッピングを楽しむお客様も多い。カウンセリング方式のメリットは購入後「こんなはずではなかった」というリスクの軽減につながると思います。

取材中、はじめてのお客様が来店され偶然接客を拝見できる場面に遭遇しました。さりげなく好みや過去の香水経験を聞き出した上でお客様が手に取ったあるセレブリティ香水を「ちょいかぎはいいけど時間がたっても好みに合うか試してくださいね」とさりげなく注意を促したり、ジーンズ姿のお客様に「メイクしないのに香りだけが○○姉妹のようになるのも・・・」と笑わせたりしている間にお客様も「仕事の後、こう、なんというか疲れがぶっ飛ぶような香りが欲しいんです」と探しているものを話してくれました。

お客様の香りの嗜好や動向に変化は感じますか?

---香水に関して言えばお客様層は4つに分かれると思います。まったく関心がないし付けない層、付けるけど自分の強い好みやこだわりより貰い物などで代用する層、3番目に香りを文化として生活の中に持っている層。この層はすでに様々な香水をもっていても、さらによいもの、シチュエーションに合わせて、といったように自分の香りを育てている層です。そして最後は多くはありませんがコレクター。自分の生活で必要とする以上のアイテムをマニア的に集める層です。すべての層で「香りの洗練度」が上がってきていると思います。香りに関心が薄い層の一部が次第に「香りを文化として持っている層」に移行しているなとも感じます。それと男性客が増えてきました。

お客様からの質問の変化は?

---2年くらい前から芸能人御用達香水の質問がなくなりました。セレクトの香水はオートクチュールではありませんが、なるべく「あなたのための香水」をお薦めしたいので御用達が下火になったことは歓迎です。また「何が一番売れている?」もなくなりました。あと「お安いですか?」は相変わらず多い質問です。最近この質問についておもしろい発見をしました。おそらく8割程度の方は、本気で安いかどうかを聞いているのではなく会話のキッカケみたいな感じで聞かれているようだということです。話していると価格は実はあまり気にされていないケースが多いのです。そもそも本当に値段だけで香水を探すのならまずは他のお店に行かれると思います。


セレクトさんのお話を聞いて、ここでも「香りの嗜好の多様化」というトレンドが日本の消費者の中に芽生えている状況を実感しました。一方でヒット商品を連発する量販店やドラッグストアのプレゼンスは依然強大です。その意味で香水の流通も二極化の方向へと加速しているようです。さらに調査を進めるため、香水商社フォルテさんがある吉祥寺に向かいました。


【データ】
 香水 SELECT
・東京都目黒区自由が丘1-28-8
・自由が丘デパートB1 TEL.03-3725-2237
・営業時間11:00〜19:30 定休日(水)


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