JR吉祥寺駅から徒歩7分、活気あるサンロード商店街を突き抜けると突然閑静な住宅街になります。フォルテはそんな住宅街の中にある社員6〜7名の会社です。対応いただいたのは、かってエリザベスアーデンのマーケティング部に勤務、その後独立された吉岡さんです。「フォルテ」がこの市場にどのように切り込んでいるのか企業秘密までお聞きします。
ブランド香水が現在「コモディティ化」(日用品化)の傾向を強めているのは「やはり1996年の並行輸入の解禁が大きかった」と吉岡さんは分析します。現在、日本は世界でもっとも安く香水が買える国の一つです。マクロ的には、並行輸入の解禁が招いた商品の過剰在庫と、家電量販店量販店・ディスカウントショップ・ドラッグストアなどの小売りによる熾烈な総力販売の結果と言えます。しかし、そもそもメーカーサイドの過剰な生産計画にも原因があるのではないかと吉岡さんは考えています。
有名ブランドでも単独で存続できるブランドは確実に減少しています。たとえば、LVMHグループ傘下のブランドを思いつくままに上げてみましょう。ルイ・ヴィトン、ロエベ、セリーヌ、ケンゾー、クリスチャン・ディオール、ジバンシー、フェンディ、ゲラン・・・。有名ブランドで独立系はむしろ探す方が困難なくらいです。多くのブランドが巨大資本のM&Aに飲み込まれました。ロレアル、LVMH、P&Gなど巨大多国籍コスメグループは今後も旺盛に対ブランドM&Aを繰り返すでしょう。
買収されたブランドは創業一族が去るケースも多く、買収後は大資本の理論に基づく経営方針が敷かれます。香水はバッグやファッションと違い量産の許容範囲が広いこともあり大量生産、多チャネル販売という現象が起きやすい。これは資本主義の原理であり否定するものではありませんが、一方、正規ルートで仕入れプレスティージャスな商品イメージを育ててきた百貨店や一部の専門店にとってみれば、同じ商品が隣のディスカウントストアで叩き売り状態になっている現象は歯がゆいことでしょう。
世界の百貨店は、香水を商品としてどう扱ってよいのか、岐路に立たされていると吉岡さんは考えています。香水がコモディティ化すれば、それはもう百貨店で扱う商品ではなくドラグストアでシャンプーや歯ブラシとともに日常的にすぐとれる場所に並べておく商品になるのです。どちらがよいというものではありません。「そうなってほしい」と願う人がいる一方「夢とストーリーを維持してほしい」と願う人もいます。百貨店と一部の専門店は明らかに後者を願います。
「メゾン系香水に向かうと思います」
「メゾン系香水」は、香水業界ではすでに一部の人によって日常的に使用されていますが、まだ一般的ではありません。 メゾン系香水を定義すると、小規模で歴史と伝統があり量産されていない香水のことです。メゾンとはフランス語で家や建物を意味しますが、ディオール氏が最初に開いたお店が「クリスチャン・ディオール・オートクチュール・メゾン」と呼ばれるように特にファッション用語として小規模なお店や店舗を供えた工房をさします。
エルメス、シャネル、ジバンシー、ニナ・チッリ・・・ブランドを思い出してみればわかりますが、もともとヨーロッパの伝統的な製造業は、2階が工房で1階が店舗といった形態のお店から始まりました。現在の大資本経営では、工場は中国、ブティックは世界大都市のプレステージ・スポット、販売店は全世界の有名デパートや空港免税店という形態に変化しましたが、「店舗兼工房」つまりメゾンがブランドの基本形であり、現在でもメゾンというコトバには愛着が込められています。 メゾンは、大資本経営に対する原点回帰です。メゾンフレグランスでは家名や社名ブランドとともに、クリエイターやパフューマーに焦点が当たっている印象もあります。
香水商社・輸入業者・香水バイヤーの気持ちがデザイナー香水(主にもともとファッションブランドで、かつ大資本系列の香水)からメゾンフレグランスに移ったのは日本だけでなく本家のヨーロッパでもアメリカでも観察されます。百貨店には世界にまだ知られていないメゾンブランドの香水が発掘され、セレクティブ(精選)コレクションとして並び始めています。
そういったブランドを発掘し育てることが一つのトレンドになろうとしています。フォルテはもともとメゾン系香水を得意としてきました。フォルテがロジーヌを発掘し日本に紹介したのは1999年。最初「どこにも置いてもらえなかった」このブランドは現在多くの引き合いに恵まれるようになりました。ロジーヌとは、ナポレオン三世皇室御用達化粧品メーカーの調香師の末裔、マリー・エレーヌ・ロジョンが立ち上げた香水ブランドです。当初どこも相手にしてくれなかったロジーヌは、日本のフレグランスシーンをリードする伊勢丹新宿店とバーニーズニューヨークが取り扱ってくれたことで細々とつないできたブランドです。
吉岡さんはロジーヌの販路拡大に積極的ではありません。安定した供給が保証されていないからです。少人数で運営されているロジーヌは量産を目指すことはありません。注文しても半数も出してくれればいい方で電話するとマダム・ロジョンに「ゴメンネ〜」と言われます。
「香水はコモディティとプレステージの2極化方向にあります」。
デザイナー香水の出荷量は相変わらず凄いものがあり、香水市場は現在500億円程度と推測されます。香水に縁遠かった人々に香水を行き渡らせてくれたデザイナー香水は日本の香水文化に貢献してくれたことは確かです。
しかし、香水を覚えると、そのうち「さらに自分に合うもう一品」ほしいという人々がでてきます。そういう人々が向かうお店はセレクトされたコレクション(ここでは「セレクティブ香水」と呼びます)のお店になるだろうと吉岡さんは考えています。ハイセンスな人々がセレクトショップに向かったファッション界とイメージが重なります。キーワードは「メゾン・ブランド」「セレクティブ香水」。それにもう一つ吉岡さんは追加しました。
「メンズ」
「メトロセクシャル」というマーケティング用語が使用されるようになりました。メトロセクシャルとは、都会やその近郊に住み、心とカラダを洗練させることに熱意のある男性層とその行動をさします。彼らはメンズ化粧品消費の主役となっています。フォルテはこのトレンドにも敏感で数年前からメンズフレグランスと化粧品の導入を加速させてきました。
フォルテが展開するフレグランスは、仏パルファン・ロジーヌ、仏モリナール、英デザイナー・パルファン(オーシャンドリーム)、仏パルファン・オーブッソン、伊プロモパーフ(アクア・ディ・ポルトフィーノ、ジャンギイ)、伊フォール(パルジレリ)・・・そして今年は満を持してミラノのブランド「ランセ」が日本上陸です。
「ランセには今まで輸出がなかったようですが、最近になってようやく輸出部門ができました。それでも担当重役は一人しかいないので、バケーションに入ったらお手上げ」とうれしそうに語る表情に期待の大きさが感じられます。ランセ家はもともとグラースで皮革製品を製造していました。グラースの皮革工房は多くがパフューマリーに変化していきますが、ランセ家もパフューマリーとして発展しナポレオンとジョゼフィーヌの香水を制作するようになります。ランセは現在イタリア・ミラノに拠点を置くブランドとして急速に注目を集めるようになりました。
フォルテさんはどのようにおもしろい香水ブランドを発掘してくるのですか?という質問に対して「展示会場や見本市」という吉岡さんですが、それもありますが個人的なネットワークが大きなチャネルになっていることは充分に推測できます。ヨーロッパは案外プライベートなコネクションが重要な情報源で個人の信用に関するウワサがインターナショナルに広まる業界です。
メゾン系ブランドさんとのお取引は「お互いのパーソナリティと信頼関係により依存します」と教えてくれました。長年の信用がモノを言うのは日本の商い習慣にも似た世界です。「複雑な契約書はあまり結びませんよ」という吉岡さんの言葉を考えてみれば、メゾン系ブランドのビジネススタイルが推測されますね。
【データ】
株式会社 フォルテ
東京都武蔵野市吉祥寺東町1-4-14
TEL:0422-22-7331
FAX:0422-22-7386
info@forte-tyo.co.jp
http://www.forte-tyo.co.jp
●今年日本市場投入予定の『ランセ』●よくそんな由緒正しきブランドを探してきましたね、と質問すると「企業秘密」とかわされました。
●フォルテの吉岡さん●「香水は生活に必要というわけでないけど、一度覚えたら、やっぱり、みんな、欲しいのよ」と明るい香水マーケットの展望を話してくれました●「これからは、もう少し大人のマーケットになると思いますよ」とも。
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