アトマイザーに惚れ込んだ男・・・ヒロミチの○○社長
日本のアトマイザー トップブランド


(注)「香る生活」WEB版では、取材対象者の個人名は「○○」にて代用されている場合があります。ご了承ください。

○○社長がアトマイザーと関わりを持つようになるのは最初に就職した貿易会社からです。輸出業務に携わる○○さんの取扱商品の一つがアトマイザーでした。昭和20年代後半。戦後の混乱からようやく立ち直りかけた日本経済の足取りは輸出関連産業から始まりますが、昭和30年代初頭、無数の小さな貿易会社には早くも、盛り上がる日本経済とは裏腹に斜陽化の波がゆっくりと押し寄せてきました。

「なぜだと思います?」

と逆に質問されましたが、記憶のない時代です。

「三井・住友・三菱といった旧財閥系商社が巨大化します。一方多くの製造業が貿易会社なしで自力に輸出入業務を行うようになったからです。小さい貿易会社は存在意義が薄れていきました」

そんな中、あるアトマイザーメーカーからアトマイザーの経験を買われ転職の話が舞い込みます。今度はメーカーで輸出業務と営業を担当しましたが、運悪くその会社は転職からわずか1年後に倒産。

「早かったです」

と感慨深く、しかし、ニコニコ語る○○さん。就職した会社が倒産後、○○さんは自分が持っている財産についてよくよく考えてみました。自分に残っていたものはアトマイザーの知識と今までお付き合いしてきた取引先からの信用しかないと考え

「自分でやるしかない」

と決心しました。設立したのは個人事業所「○○アートグラス工業所」。後の株式会社ヤマダアトマイザーです。

カネなし、職人なし、ノウハウ不足のナシナシ状態から始めたビジネスは、○○さん自身が比較的手先が器用だったことが幸いし、自分が営業から製造までなんでもこなすことで初期の資金不足と職人不足をカバーできたといいます。

「もう必死ですから、何でも自分でやるわけですよ。アトマイザーといっても案外部品数が多いんですね。弁、玉、ネジ、樹脂、ネット、ポンプ、パッキン・・・。取引相手は瓶工場、デザイン事務所やデザイナー、部品メーカー、アセンブリ業者・・・といろいろあります」

これら多様な部品の調達と多様な取引業者との折衝に、ほぼすべてに自分自身で関わり、なんでも自分でバリバリと仕事をこなしていくことで会社を何とか盛り立てていったそうです。もちろん、製品は販売しないことには収益になりませんので営業も○○さんの重要な仕事でした。お話を伺っていると昭和30年代の、貧しかったけど日本人みんなが懸命に生きていた頃の活気が伝わってきます。

当時アトマイザーメーカーは現在よりもかなりの数あったそうで、小さいながらも切磋琢磨しながら伸びていきました。やがて○○さんの会社はヤマダアトマイザーとして、アトマイザーでは日本のトップブランドへと成長していきます。

しかし、ディスペンサー方式のアトマイザーが開発されたことでアトマイザー産業は大きな転換期を迎えます。香水自体が特別な商品からコモディティ化し量産化されたことで、容器は簡略化し使い捨ての時代となります。需要は、○○社長が得意としていたゴージャスなバルブ式アトマイザーから安価で簡略化したパース式アトマイザーへと転換していきます。

ここでアトマイザーの話を少し。現在市場に流通している一般的なアトマイザーは通常中指程度の大きさの霧吹き機です。ガラスやプラスティックの容器にポンプとスプレイヤーがついています。香水の小分けなどに利用されます。語源は、Atomize(細分化する)にerを付加して「霧吹き」「噴霧器」「香水吹き」の意味になります。フレグランスの保存性という観点では通気性がほとんどないガラス製の方が理想的ですが、割れる危険性とコスト面からプラスティック製も多くで回っています。
商品として大切な点はデザインが美しいこと、機能性が優れていること。機能性はポンプの使い心地と性能が勝負です。スムーズで押しやすく、細かで均一なミスト(霧)になることが大切です。アトマイザーの噴霧量(吐出量)は、0.04cc〜0.15cc程度。外国人は比較的たっぷり出ることを好むため輸出用は日本向けより多く噴霧するポンプが使用されるケースが多いようです。

ヤマダアトマイザーでも時代の需要に応じてパースアトマイザーがメインになっていきます。しかし、○○さんはこういいます。

「アトマイザーといえば、昔ながらのバルブアトマイザーがいいですね。人の手のひらでもっとも自然に押せる形態ですから。またお部屋の装飾品としても美しいと思います」

バルブアトマイザーは球形ゴム製のポンプが取り付けてあるアトマイザーです。昔の映画にでてきそうな風貌がなつかしさと美しさを醸し出します。バルブアトマイザーは、時代とともに生産量を減少させていきましたが、ヤマダアトマイザーでは時代の需要に応じるとともに、それとは別に○○さんは、バルブアトマイザーを中心とした高級路線のアトマイザー制作も模索します。その結果生まれた会社が株式会社ヒロミチです。

「バルブアトマイザーは、数こそ多くは出ませんが根強い人気があり、2000年くらいからお部屋を飾るアイテムとして盛り返してきました。これからも新しいデザインのアトマイザーを投入していく予定です」

機能性だけでなく装飾性という観点から考えればバルブアトマイザーがはるかに楽しいと考える○○さん。ご自身はバルブアトマイザーを作りたいというお気持ちが強いようです。需要が少ないため、部材や材料の仕入れも大変です。たとえばネットに使用される糸はレイヨンがもっとも優れているそうですが、現在は入手し難いと言います。

「貧しかった頃は、少しでもお金が入れば、消費は服や鞄や車や、そんな外から見えるモノに向かいましたが、今は豊かな時代です。これからの消費は、家庭の中など外からは見えにくい部分で、自分の満足のための消費に向かうと思います。バルブアトマイザー人気に復活の兆しが見える理由の一つはそういう
ことでないかなと考えています」

と分析してくれました。バルブアトマイザーは現在、男性から女性へのプレゼントとして若い人から年輩まで幅広く人気があるそうです。若い人にとってはレトロで新鮮なモノであり、年輩の方には懐かしく大切な品物かもしれません。

○○さんの作るバルブアトマイザーは芸術品ですか?という質問を向けてみました。○○さんはにっこり笑って

「いや、芸術品だなんて大げさなものでなく、置物かな?・・・お部屋を明るく飾る置物くらいに考えています。しかし、こんなきれいなモノがあれば仕事からお部屋に戻ってきたとき、ちょっとうれしいじゃないですか」

今後の夢は?

「アトマイザーはデザインが命です。デザインを極めたいですね。新製品もドンドン出していきたいですね」

ヒロミチ社製アトマイザーのデザインは、○○さん自身による
デザインも多く含まれています。いろいろ考え工夫を重ねてアトマイザーを創り上げていくことが楽しくて楽しくて仕方ない、
というパワーを感じさせるお話でした。

【企業データ】
●株式会社ヒロミチ
・東京都江戸川区北小岩1-3-1-101
・TEL:03-3672-4100
http://www.hiromichi.co.jp
・商品ブランド名:HIROMICHI

●株式会社ヤマダアトマイザー
・東京都江戸川区北小岩1-2-7
・TEL:03-3672-9141
http://www.atomizer.co.jp
・商品ブランド名:MIKADO


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