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( 香水工場の )

香る生活


香水瓶の歴史#9 ローマ時代のガラス3

香料人気とガラス瓶


ローマで香料がこれだけ人気の対象になると当然その容器として最適なガラス瓶の発展にも大きな変化が見られます。

ガラスの製造に熱心でなかったギリシア時代に比較してローマ時代には多数のガラス製品が製造されました。

これらガラス製品は「ローマンガラス」(ローマングラス、ローマガラス)と呼ばれます。


ローマングラス


ローマ帝国時代の定義は諸説ありますが、紀元前27年、カエサル暗殺後のローマの混乱に終止符を打ったアウグストゥスがローマ帝国初代皇帝に就き、共和政ローマ(古代ローマ)から帝政(ローマ帝国)に移行した時点からローマ帝国が東西に分裂する395年までとする人が多いようです。

ローマンガラスの隆盛は、紀元前1世紀くらいから始まりローマ帝国の勃興とともに発展します。ローマンガラスの発展を支えた事件が「吹きガラス」製造方法の発明です。


ガラス工芸史のビッグバン「吹きガラス」


吹きガラスとは、文字通り吹いて成形するガラス成形方法でありガラスの成形技術です。

中が空洞になっている鉄パイプなどに熔解炉で溶解しているガラス原料からボール大の「ガラス種」(ガラス玉)を巻き取って、一方の口から風船のように強い息を送り込む(吹き込む)ことでガラス種の中を空洞化し容器として成形します。

溶解したガラスには水飴のように粘度があり、その性質をうまく利用した賢いやり方です。

コアガラス製法と比較して高度な成形が可能なこと、量産に適していること(それゆえ安価な製造が可能なこと)、などメリットは大きくガラス工芸史の中では、ビッグバン的な事件です。


技術のシンプルさが普及に拍車をかける


吹きガラス技術がどこで発明されたか定かでありません。

しかし、高度な機材や設備が必要ないため職人の習熟だけで、それまで王侯貴族の宝物だったガラス製品の製造が可能になったことで爆発的な技術拡散と発展を遂げます。

2世紀頃にはヨーロッパ全体でガラスが製造されるようになったと考えられています。

今でこそヨーロッパは世界の先進国ですが、当時ローマより北方は「原住民」の住む秘境程度に考えられていました。

実際文明らしい痕跡も少ないので、ガラスの製法がヨーロッパ全土に伝播した事実は、この技術がいかにすぐれ、また価値があるかを物語ります。

現在で言えば、密林の中にまで浸透するインターネットの普及と似ているかもしれません。

こうしてガラス製品は、それまでの「王様の宝物」から、あとっという間に庶民にも所有可能な容器(とはいっても現代とは比べものにならないくらい高価ですが)へと変貌していきました。


現在でも主流の吹きガラス技法


吹きガラス技法は現在でもガラス成形の主流です。

当時発明されたばかりの吹きガラス技法は「宙吹き」と呼ばれ、成形にばらつきがありました。

しかし、すぐに「型吹き」という金属や石膏の型に流し込んだガラス種に対して吹き込む技法も生み出されました。

現在のガラス工場でも「型吹き」が行われています。巻き取りや吹き込みが機械化された点は違いますが成形原理は同じという点が驚異的です。

(2010-02-19)
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