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( 香水工場の )

香る生活


昨夜の風雨でトドメをさされた東京の桜
東京は昨夜の風雨で桜がトトメをさされた感じです。しかし、例年よりは長く美しい姿を持ったようにも思います。

日曜に武蔵野線で西国分寺から千葉県流山まで行きました。車窓からら見える桜の美しいこと。目的地に行くことより電車の中で一杯やりたい気分(こんなときは旨い日本酒です、ビールもOK)で、ぼんやり眺めていました。

日本の桜は本当に美しいです。

資生堂さんが「椿」、しかも「白椿」で勝負にでてきたら花王さんの対抗策はもはや「桜」しかないだろう、と余計な戦国風景を空想したりしました。

近年海外では「ジャパニーズ・チェリーブロッサム」がブーム。

ヨーロッパや米国では「ジャパニーズ・チェリーブロッサム」をテーマとしたローションやスキンケア、香水類の新製品が次々に作られています。それらは当初日本市場攻略の切り札的なポジショニングだったのではないかと推測されますが、現在では現地で受け入れられるテーマです。

それだけ物語性のある花ですからね。中国などでももっと愛されていいのでは?と願っています。世界的には桜の持つナチュラルで健康的なイメージとリンクしているようです。世界の人に普遍的に人気の花になってきました。

桜の花は香りが薄く、桜の香りは多くの人にとってイメージしにくいのですが、欧米人が作る桜の香りは、どちらかというと豪華で派手な印象を感じさせます。おそらく桜吹雪の美しさに調香師が心打たれたるのかもしれません(香水ファンには誰のことをいっているのかご存じかも)。

しかし、私たち日本人が感じる桜は、また少し違います。

桜の季節、上野公園や代々木公園に行くと花見で大変混雑していますが、外国人はあれを見て「ほー、日本人は本当にピクニックがスキなんだな」と思うらしいですが、違うんですね。

桜に込められた日本の心のようなものを小さい頃から知らず知らずのうちに共有しているこそだとと思うのです。歴史と伝統に違いがあります。

花見の日、早朝から場所取りに駆り出される日本の少年達の心には、あれはピクニックではなく「宴」としての記憶が濃厚です。

桜というだけでウルウルするくらい思い入れの深い方もおられるかもしれません。日本の花といえば貴族や朝廷に愛された「梅」が定番でした。

しかし、鎌倉時代〜戦国時代になると武士が社会のメインプレーヤーとして台頭してきます。パッと咲き、豪快に散っていく姿に武士たちは自分達の運命を重ねたのでしょうか。桜の「はかさな」「潔さ」が愛され日本の花としてのイメージが定着していきます。

今年の桜も潔く散りました。

世間では、入学式や入社式もそろそろ済み、新しい職場や新しい学校で連休まで新鮮な気持ちで過ごし、連休開けて5月病を疾患し、苦悩のウチに梅雨を迎え、バカ暑い夏を乗り切ったら、秋から師走までのクライマックスを突っ走ろうという構図が見えてきます。

まだまだ一年の前半、気合い入れていきましょう。
(2008-04-09)
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香る生活


木蓮のちょっと切ない思い出
木蓮(モクレン)の花が咲きました。東京ではすでに散りかけています。完全に散ったものも少なくありません。

この季節は桜というスーパースターの存在が大きすぎて、木蓮はイマイチ話題に上りませんが、豪快ながら上品な咲きっぶりが素敵な花です。またその香りも上品の一言です。

私の実家の玄関には見事な花をつける木蓮が植えてありました。紫と純白の大柄な花がパカッと割れるように咲く様は子供心にもわかりやすく、木蓮が咲く季節は小学生のガキにとっても気分がよかったのですが、ある日、父親が乱心して主木を伐採するという事件を起こしました。学校から帰宅すると木蓮のあの大木が小さくなっていたのです。

「木蓮は、家の高さより高くなると、その家は繁盛しない」という迷信をどこかのお寺から聞いてきたらしく、そのあげくの果ての乱心でした。本当に悲しかったです。しかし、今でもその木蓮は脈々と毎年花を付けてくれています。


ところで、現在住んでいるマンションの裏手のお宅の庭には梅・木蓮・桜が植えてあります。部屋の窓からも毎年それらが春、順々に花を付けていく様が楽しめます。

今年、窓から見える木蓮の花に異変を感じました。花が例年より少ないのです。

老夫婦だけで暮らされているそのお宅では、おじいさんが庭いじりを趣味とされていて、お庭にも家の周囲にも様々な花や草木が植えられていました。

私が出勤時に裏口から出るとき、おじいさんとはよく顔を合わせるので「おはようございます」と声を掛け合います。お互い名前さえ知らないまま何年も挨拶をしてきました。

つい最近も声を掛けたような記憶があるのですが、近所の方の話によるとおじいさんが亡くなった後、おばあさんだけでは樹木の手入れができないという理由で大きな枝をかなり落とされたということです。

一年前の話だそうです。

考えてみれば去年見事な花が咲き、散った直後木蓮の枝は伐採されたことになります。つい先日挨拶をしたかのようなあのおじいさんがお亡くなりになられたことが、にわかに実感できず言葉がでませんでした。知らない人とはいえ、心に穴が空いたような寂しさです。

ご冥福をお祈りいたします。

そして、明日は我が身、またどこかでお会いしましょう。

木蓮モクレン
(2008-04-05)
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香る生活


練り香水製品版(沈丁花&金木犀)
ついに製品版練り香水リリースの発表ができました。

なんだかんだで難産でした。

練り香水の製造自体は技術的に難しくありません。通常の工場の通常の設備で行えます。ノベルティ(プレゼント)版ではホホバ種子油やミツロウを加熱して香料を練り込むだ後、容器に充填したて一定の割合でゆっくりと時間をかけて冷せば出来上がりです。

ホホバ油やミツロウ、香料は一般に腐敗せず防腐剤の添加が必要なければ、乳化の問題もないので界面活性剤も必要ありません。香水に起こりがちな充填後のオリや異物の発生や生成も心配なく、とっても気持ちのいい製品です。

にもかかわらず、今回の練り香水が難産だった理由は、基材をいろいろ試しすぎた点です。骨が折れました。

素直にホホバやミツロウだけなら、すでに安定した処方があるのですが製品版を開発するにあたりノベルティと同じ処方では「ワザがない!」と気負ってしまいました。

なるべく天然素材にこだわりつつ暑い暑い夏から凍る真冬まで使用できる通年の練り香水。ホホバ種子油+ミツロウ版は、真夏に汗をかき、冬場はカチカチになるので使い憎い点が問題でした。

基材候補には、ミツロウ、ライスワックス、カルナウバ、キャンデリラ、ウルシロウ、モクロウなどが上がりました。おもしろいところでは、ココアバターやマンゴバターも考えました。

ココアバターは実際試しましたが、これは愛嬌・遊びです。

とってもお菓子な匂いで「驚き練り香水」的な商品としてはおもしろいのですが、今回はパス。趣旨と若干違いますので。後日、グルマン系練り香水として出すことも???

シアバターも候補として試しました。予想通り柔らかすぎてクリームチーズのようになります。パスです。

この種の化粧品や皮膚用の医薬品・医薬部外品に多用されるパラフィンやワセリンも候補でした。パラフィンやワセリンは軟膏の基材としても有名ですよね。

石油由来成分ですが、大変刺激が少なく安定している点や長年実績がある点が安心です。医薬品的には純度の高さが理想的です。

「石油由来=危険、天然由来(植物由来・動物由来)=安全」という信念をお持ちの方がおられますが、それは短絡的な考え方かもしれません。

蜜蜂の巣を水炊きにして採取されるミツロウは完全に天然由来であですが、ごく一部の人にはアレルギー反応があることが知られています。タマゴや大豆、ソバなどのアレルギーと同じ種類のアレルギー反応らしいのですが、詳しいことは不明です。

しかし、そんな人でも石油由来のパラフィンやワセリンでのアレルギー反応を示す人は経験がありません。

それほど安全な基材ですので候補として考えました。しかし、パラフィンでの試作は、個人的に質感、見た目に若干不満が残りました。パラフィン自体の問題ではなく処方に失敗している可能性があるのですが、それ以上はテストしていません。

本当は、・・・私の目標はモクロウを投入することでした。そのためわざわざ九州まででかけ、モクロウ工場から直接1キロ購入して持ち帰ってきたのですが、クセがある強烈なワックスで、小手先の実験では手に負えずタイムアウト。

モクロウは継続的に研究していきます。なお、モクロウについては、現在配布中の冊子『香る生活』の最後の方のページに、私の熱い取材記事を投稿させていただいています。機会があればぜひぜひお読み下さい。



横道横道に倒れつつ、結果的に下記の成分構成になりました。セレシンとは大地から採れるロウ(ワックス)です。口紅やメイクの基材として実績があります。

ホホバ種子油/オリーブ油/ミツロウ/香料/セレシン/トコフェロール(ビタミンE)


リリースは4月20日。「沈丁花」「金木犀」の2種類。1,470円(税込み)です。

ショッピングのページ(伊勢丹新宿店ではお取り扱いしておりません)

練り香水金木犀&沈丁花(ソリッド・パフューム)
(2008-04-04)
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香る生活


メールトラブルで熱くなる人 パート1
インターネットメールって凄いですよね。感動の一言です。こんな凄いツールが誰でも非常に安価に利用できるインターネットに感謝しています。今ではこのツールなしにはビジネスもプラべートも成立しなくなってしまいました。手軽で便利で正確で早い!古い知人とのネットワークや人間関係にも役立っています。

オレってメール依存症?

いえいえ。凄いツールではありますが、しかし、なければなくても生きていけるクチです。メールやインターネットにはそれなりのトラブルや問題や弱さがあることも知っていますし、完全に依存しているわけではありません。


私がはじめて電子メールに触れたのは1989年。社内メールでした。そのころはまだインターネットは普及しておらず、社外の人との連絡には利用できませんでした。

「ARPANET(アーパネット)」と呼ばれる米国の国防用コンピュータネットワークが、インターネットの前進ですが、当時はまだ米国軍関連研究所や大学間を結ぶ通信網として研究段階からようやく利用の段階に入ろうとしていた時期です。

このネットワークの場合、それまでの通信と違う点は、通信網の「網」の部分です。

要はアメリカが、ソ連や中国から核攻撃を受け一部の地域や通信設備・通信線が壊滅や切断されることを想定して、そんな場合でもデータが自律的に有効ルートを発見し迂回しながら目的地までたどり着くという通信モデルの研究から始まりました。

このとき考え出されたネットワーク構造が網目状ネットワークで、そのコア技術がIPプロトコルという呼ばれる通信方式です。IPプロトコルは現在のインターネットの基礎技術になっています。

インターネットは、迂回ルートを確保しつつネットワークを拡げる思想があるために、単なるポインツーポイント(Point-to-Point)の「通信線」でなく、脳内血管のようにクロス状・網状の「通信網」にする必要がありました。

アーパネットの利便性が知られるようになると様々な研究機関や大学から「アーパネットに接続させて」といった要望が高くなります。このネットワークは「網目状の通信網」を構成することで価値が高まりますし、参加者が多いとそれだけ利便性が高まりますのでネットワークに参加し通信回線を接続することが歓迎されました。

当時もっとも多用されたアプリケーションは言うまでもなくメール。そしてデータ転送を目的としたFTP、遠隔地のコンピュータを操作するTelnetなどでした。現在の主流アプリケーションWebは、普及までさらに5年くらいかかります。

通信回線自体はAT&Tのようなキャリアから専用線を借りる必要があり、通信機として「ルータ」と呼ばれるIPプロトコルをソフト的に実現するコンピュータが必要になります。高価な出費にもかかわらず、そのコストを捻出してでもネットワーク接続希望者が続出状態でした。

ちなみにルータを開発していたサンフランシスコのシスコ社は数年で世界屈指の大企業に成長しベンチャービジネスの典型的成功例として、マイクロソフト社などとともに語り継がれている会社さんです。

私はごく初期のシスコ製品を見たことがあります。一見すると大学生の工作物のような箱でした。しかし、IPプロトコルのソフトウェア実装が他社よりも早かったこと、完成度が高かったことが勝敗を決したと考えています。

アーパネットから独立したインターネットはその成長の仕方も、インターネットの設計思想同様に「自律的に(あるいは自立的に)」発展します。次第に民間企業やキャリア、インターネットプロバイダーが後追い的に接続し始めて、アッという間に世界最大のネットワークが形成され、そして現在でも新規回線が接続され回線容量の巨大化が続いています。

(※)キャリア=電気通信事業者。通信回線を所有し音声やデータ通信サービス提供する会社、AT&T、ワールドコム、スプリント、NTT、KDDIなど。(※)インターネットプロバイダー=個人や民間企業などのユーザーにインターネットとのIPプロトコルインターフェースを提供する企業。

インターネットに接続するためには、ハード的には(1)通信回線 (2)ルータがいることは上に述べましたが、制度的に(3)IPアドレスを授与してもらう必要があります。IPアドレスを管理している機関が米国NICというNPOだったと記憶していますが、今は民間企業に委託されている模様です。

逆に言うとインターネットは自立的に日々、世界中で増殖しているにもかかわらず、それを管理している機関は米国NICくらいで、しかもその仕事はIPアドレスの割り当てとドメイン名管理程度です。

インターネットを事実上全体的に管理統制しているところはありませんし、インターネット全体の所有権や権限を有する機関も政府もありません(なんと民主的なネットなんでしょう。日光や空気のように世界の人民の共有財産となろうとしています)。

しかし、逆に言えば、データ通信に関して責任を負う機関も行政も存在しないということです。

続く・・・

(2008-04-03)
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香る生活


花の香気成分はナゾだらけ、ガスクロ体験 パート2
千葉大学「柏の葉キャンパス」は、秋葉原から出ている「つくばエキスプレス」で「柏の葉キャンパス」駅を降りて数分の距離です。3月も下旬に突入した3月21日、なんと農場では梅の花が全開(関東では梅は3月中旬くらいまでが見頃)です。周囲一帯に、梅のすばらしい芳香が漂よっていました。

隣には東京大学柏キャンパスがあり、目前には警察庁科学警察研究所のでかい建物が威容を誇っていますが、それ以外はいたってのどかの農園。のどかで穏やかな雰囲気がとても気に入りました。

ここに園芸研究の一環として花の芳香を分析している研究室があります。芳香が強い花なら成分のトップ3程度はガスクロで比較的簡単に分析ができますが、芳香が弱い花はガスクロでも成分が出てきません。今回は芳香が弱い花が分析機に掛けられていました。

私の立場は、分析に立ち会わせてもらう代わりにパフューマーを同行して「官能テスト」に協力するというものです。この種のテストは機械でガリガリとデータを取ったら官能テストで評価するのが一般的です。データは人によって確認できますし、人が感じる香りの印象はデータで裏付けできますので、双方にとってメリットがあります。

まずは開花している花で匂いの強い花をガラス容器やプラスチック袋で覆い、その中に充満する香気成分を注射器針状の樹脂製の試料に吸着させます。

花は種類によって芳香を強く発する時間帯や条件が違いますが、比較的多いのが夜明けから芳香を発しはじめ、よく晴れた日で気温が若干高くなると匂いを活発に発する傾向があります。これはハチやチョウたちの活動時間帯と一致しており、花の芳香は虫たちを誘うための武器なのかもしれません。

匂いの吸着は一昼夜かける場合もありますし、数時間のこともあります。花の種類や気温などの条件によっても芳香の出方が違うため、テストごとに試行錯誤です。これだけでも疲れる作業ですが、香気成分を吸着した試料をいよいよガスクロに掛けます。

大学では「ガスクロにシリンジを打つ」という表現をされていました。クールに言い方ですね。

ガスクロの分析機を起動してもしばらくは無反応でチャートは進みますが、数分から数十分程度でなにやら成分を検知し、チャートに心電図のようなピークを打ちますが、すぐに衰えます。チャートの横方向が時間、縦方向が成分濃度です。

このようなスパイク的なピークを打つ成分は、隣に連結されている質量分析機(マススペクトロメーター、MS)に送り込まれます。ガスクロは芳香成分を各成分ごとに分離するだけで、未知の成分の特定に対してはほとんど頼りになりません。

そのためガスマスはマススペクトロメーターと一体に結合されている製品が多いようです。このようにガスクロとマススペクトロメーターが一体化した装置は「ガスマス」(GC-MS、Gas Chromatograph-Mass Spectrometer、ガスクロマトグラフ質量分析装置)と呼ばれます。

ガスマスの中ではプラズマや強力な磁界などを掛けて成分分子を帯電・イオン化したりバラバラに分解するそうです。その分解されたさまざまパーツの種類と濃度から、装置内コンピュータのデータベースに保存されている数十万種類のデータと照合して分子構造や分子構成を推測し成分を特定します。このデータベースのデータ量も成分同定には違いが出ます。

有機成分のデータベースは毎年進化しているそうで常にデータベースを最新の状態にメンテしておくことも重要なようです(=お金がかかります)。

成分同定作業自体は多くがコンピュータがやってくれるので私たちは待っていればよいのですが、なんとできてきた結果は、・・・

たとえば、ある成分についてこのようにでました。

「リテンションタイム○○、CAS番号○○、分子式C10H18O、分子量154.14、リナロール、一致率85%」

つまり、同定された成分は確率ではじき出されます。この日の分析では10成分ほど検出されましたが、一致率は72%〜99%。

100%は一つもありません。

なるほど、最先端技術を持ってしても検出成分は保証されているわけでないんですね。99%なら常識的には「リナロールが含まれている」と断言してもよさそうですが、72%なら約3割の確立で違う成分ということになりますし、80%なら評価は分かれます。

「一致率」を導き出す計算式がどうなっているか不明ですが、これもGCMSメーカーのノウハウですから、メーカーが違えば計算式も違い、結果も違ってくることが推測されます。

最終的には、人が官能テストで「検査ではリナロールと出ているけど、リナロールの香りはするか?」と自分の鼻を頼りに試すしかありません。官能テストでも裏付けされればそのデータの確証は高くなります。

研究者の方々は一般に万事断定を避ける言い方をされる方が多い(反対は政治家の方々ですね)ように感じていますが、連想してしまいます。どこまていっても「100%」や「必ず」「絶対」という世界ではないことは確かです。ある意味、人生に似ているかも。


(※補足1)リナロールとは、花の芳香成分として代表的なものです。たとえば、バラの芳香成分は数百種類と言われていますが、代表的なものは・・・

ジメトキシメチルベンゼン、オイゲノール、メチルオイゲノール、リナロール、ファルネソール、β-イオノール、β-イオノン、ゲラニオール、シトロネロール、ネロール、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルアルコール、・・・

(※補足2)GCMSの代表的なメーカー:米アジレント・テクノロジーや島津製作所など。今回はアジレント・テクノロジー社のGCMSを拝見しました。分析ソフトウェアが凄そうでクリクリしてみたかった〜。何年か前、島津製作所の田中耕一氏がノーベル賞を受賞されましたが、高分子の構造解析に関するGCMSがらみの研究成果からだったような・・・
(2008-04-01)
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香る生活


花の香気成分はナゾだらけ、ガスクロ体験 パート1
ガスクロマトグラフという分析機をご存じでしょうか?略して「ガスクロ」や「GC」と呼ばれています。この分析機は香料や医薬品などの開発・研究をしているところには必須のとても有名な機械です。

薬品成分を分析するための方法に「クロマトグラフィー」という手法があります。プリズムに光を通すと赤青黄色・・・と7色に分かれる実験を小学生の頃したことがある方も多いと思いますが、似ています。

成分分析をしたい物質をあるベースとなる気体の中に通して加熱しながら混ぜ合わせると時間の経過とともに一つずつ個別の成分が飛び出してきます。出てくるまでの時間が成分ごとにズレているために個別に採取して、質量分析機(MS)と呼ばれるモノで分析するとある程度その成分を特定できるというものです。

個別成分が出てくる時間(リテンションタイム)は成分によって特徴的でライブラリーやデータベースと照らし合わせるとある程度その成分を特定できますが、それをさらに質量分析機(マススペクトロメーター)で分子量や構造まで調べてかなりの確率で成分を特定できます。


・・・なんてかなり専門的なお話で恐縮ですが、きょうご紹介したいお話は成分分析の難しさです。

農薬入りギョーザが現在一世を風靡しておりますが、そもそも食品検査の際、なぜ農薬を検知できなかったのか疑問に思っている消費者は多いと思います。それは検査の方法にあります。

一般の方々の成分分析機に対するイメージは、分析機に試料を入れると数分後に全成分がコンピュータ画面にリストアップされてくるようなイメージがないでしょうか?

そういう機械はありません。

農薬入りが疑われる場合は、どんな農薬が使用されているかアタリをつけて「それが入っているか、どうか?」の検査が基本になります。もし未知の農薬が使用されていれば基本的に検査はパスします。

食品検査で農薬を検知するためには「農薬が入っていることを前提」に検査する必要がありますが、今までの考え方ならそんな前提自体が凄い事態ですし、最大のネックは検査にはカネがかかることです。それを消費者が負担してもたってまでやれるるかどうかとなると市場原理がどうのこうの・・・ドツボにはまります。

ドーピング検査もおそらく同じでテストステロンなどの禁止物質のリストがあり、それが血液中や尿中にあるかどうかという検査で、もし未知の薬物なら検査はパスするのではないでしょうか。

未知の薬物ならそもそも禁止対象にならないということもありますが、その前に物質が何なのか技術的に特定できない可能性大です。


花の香気成分の分析は世界の香料会社や研究所ですすめられています。私も自分で分析してみたいとかねがね考えていましたが、ガスクロは店頭で販売されているようなマシンではありません。マススペクトロメーターまでつけると一声数千万円、当然所有しているところも限られています。

運良く千葉大「柏の葉キャンパス」の畑の片隅で、まさにある花の香気成分をガスクロに掛けようとしている研究チームさんを知り立ち会わせていただきました。・・・続く
(2008-03-27)
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