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香る生活


香りで、秋の夜長の安眠
よい香りは睡眠を誘う
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何年か前にある大学の先生が「香りのよいシャンプーでぐっすり」という内容の発表をされました。

私たちは、よい香りに包まれていると経験的に眠りに入りやすく、深い眠りが得られることを知っています。それを科学的に実証した点がニュースですね。

前に「安眠香水」というテーマで投稿しました。しかし、「安眠香水」というネーミングそれ自体は薬事法的に問題が推測されます。

よって、開発中の安眠系フレグランスについてそろそろ正式なシリーズ名を決めようとしています。

フレグランス先輩であるヨーロッパでは安眠系の香りはどんな商品になっているのでしょうか?

事情をちょっと垣間見ると、圧倒的に多いのが「ピローミスト」(枕用のスプレーミスト)や「ピロー&リネンミスト」(枕やシーツ、カバー類のためのミスト)。

あちらは「リネンウォーター」や「ハンドウォーター」のように伝統的に様々なものに香り付けを好む文化があるためピローミストは当然あってもよい製品ですが、ピローミストやピロー&リネンミストはよい香りというだけでなく明確に「安眠」をテーマにしている点が特徴です。

安眠がテーマだとすると、配合する成分も、やはり似てきます。

まずは「万能精油・ラベンダー」は欠かせませんよね。

アロマテラピー的には「気持ちを穏やかに不安を和らげ、リラックス、疲労回復」とされるエッセンシャル・オイル。

実験によれば血圧さえも下げるそうなので生理的な影響を与えることができるパワーのある香りです。

エッセンシャル・オイルのいいところは、ほとんどすべてのエッセンシャ ル・オイルが殺菌・防菌・虫除けになる点です。安眠+清潔感の心地よさ。

そして「懐かしく切ない香り・カモミール」もオススメでしょう。

「懐かしく切ない香り」は私の個人的な意見ですヨ。カモミールは、一般にローマンカモミールとジャーマンカモミールの2種類が流通していますが、特にローマンカモミールは「青リンゴ」のような甘い香りと評価されます。

臭いという人もいますので好みは分かれます。

ラベンダー同様、精神鎮静作用があるとされ、心を楽にさせてくれます。

ヨーロッパでは万能の民間治療薬としてのイメージが強いようで日本のヨモギ(蓬)やアロエ的存在でしょうか?

ドイツでは、寝付けない子供のために子供部屋にカモミールを香らせるご家庭が多いそうです。まさに安眠効果を予感させる話です。


次ぎに「ローズ」。ローズはとにかく万能。ローズに安眠作用があることは聞きませんし、実証されているわけでありませんが、ローズの香りに包まれているとそのまま奈落の底まで墜ちていきそう。

経験則的にぐっすりいけるならローズは、やはり欠かせない香り。しかも当社には様々なローズオイルの集積があり原料には事欠きませんし・・・

あともう一つの成分。これは次回お話させてください。


本題に戻ります。「安眠香水」プロジェクトの製品名は「スリーピング ミスト」 または「スリープ ミスト」になりそうです。

Sleeping Mist、Sleep Mist。英語ではどちらも使用される普通名詞です。意味に違いはなく音の好みで使い分けられているようです。

「スリーピング ミスト」も「スリープ ミスト」もいずれもヨーロッパのピロー ミストやリネン ミストのようにモノに吹き付けること想定しています。


香りで、秋の夜長の安眠
安眠香水の時代、来るか?
安眠をテーマにした香水

(2007-10-13)
( 香水工場の )

香る生活


香水の付けすぎでファイヤード(解雇)!?
今日はニューヨークで起きているささやかだけど人々の関心を引いているニュースを紹介します。出典は「NEW YORK POST」誌。

LOST JOB 'OVER MY PERFUME'
(香水で失業しちゃうの?)

カスタマーサポートセンターで働いていたサリバンさん(ブルックリン在住、女性24才、黒人)は「香水の付けすぎ」という理由で解雇(Fired、ファイヤード)された本当の理由は人種差別であると雇用主だったマインドパール社(ロングアイランド)を相手に訴えを起こしました。

マインドパール社は顧客から彼女の香水に対するクレームが相次いでいることが解雇の理由として「前向きに彼女と争いたい」(vigorously contest her claims)と抱負を述べています。

このニュースが、ニューヨーカーを驚かせたのは「たんに香水の付けすぎで解雇されるのか?」という素朴な驚きと疑問。ニューヨークポストは一週間後に再度このニュースを取り上げます。

FIRING LINES:
CAN YOU REALLY GET CANNED FOR WEARING TOO MUCH PERFUME?

(解雇物語:香水の付けすぎで本当に解雇可能か?)

解雇の本当に理由が「香水」だったのか、それとも「人種差別」だったのか事実は不明ですが、労働者はどんな理由でも解雇されるという事実にアメリカ人自身が改めて驚くという内容の記事になっています。それゆえ解雇問題で争おうとすれば、アメリカではかなりセンシティブな問題である人種問題くらいまでいかないと裁判では闘えない現実があります。



「本当に香水程度で解雇されるのか?」という問いに対して、

「答えはYESだ」(The answer: Absolutely)

「それどころか、それ以下の理由でさえ解雇可能だ(you can be canned for doing less than that)。雇用主は従業員を、よい理由でも悪い理由でもそして何もない理由で(for a good reason, a bad reason, or no reason)解雇できる、と雇用の法律専門家は語ります」

Working America(正しい名称が不明のため「全米雇用連合会」とここでは勝手に命名します)のディレクターであるポーラ・ブラントナーさんはこう言います:

「私は15年間、雇用関連の法律を専門にしてきましたが、アメリカ人が抱く労働法に対するもっとも大きな誤解(the biggest misperception)は、おそらく雇用主は正当な理由がなければ従業員を首にできないという幻想でしょう」

「実は、できるのです」(you can get fired for anything)


香水の問題を通り超えて、米国の厳しい雇用模様が見えてきます。アメリカ映画では「You are fired!」(お前はクビだ!)とボスに宣言されたらその場で去っていく状業員の姿は日常的な光景です。解雇通知までもめにもめて、通知後も3ヶ月くらい猶予がある日本の雇用事情からすると、にわかに信じがたいアメリカの「その場解雇」ですが、本当なんですね。

余談ですが・・・こういう私はかってイギリス系の証券会社で働いておりましたが、そのときの社内ルールとしてボスに呼び出され解雇宣言を受けたら自分のデスクに戻れませんでした。

解雇される直前にシステム部の人間が密かにその社員のパスワードを無効にしておきますのでデスクに戻ってもシステムに悪さはできませんが、とにかくまっすくドアから出ていくしかなく戻れない。

デスクに残された私物は後日宅配で自宅に届けられます。これほど一刀両断的な「You are fired!」を現実に目撃したときは驚きの光景でした。




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LOST JOB 'OVER MY PERFUME'

October 1, 2007 -- She wore too much Red Door, so they showed her the door.

That's the claim of a Brooklyn woman who says she was fired as a customer-service rep because she wore too much perfume.

Jorinda Sullivan, 24, of Canarsie is suing her former employer, Mindpearl, a customer-service center in Melville, L.I., for $1 million in Brooklyn federal court, claiming that co-workers' complaints about her perfume morphed into thinly veiled racial discrimination.

After complaints about one perfume, Sullivan switched to Elizabeth Arden's signature Red Door - but said she was soon hauled back into the supervisor's office for the same reason.

Later, she was allegedly attacked over her personal hygiene and asked what soap, shampoo and deodorant she used.

At that point, she decided she was being harassed because she is black and complained to the state Division of Human Rights and the Equal Employment Opportunity Commission.

In February, she was fired because, her boss said, she'd been the subject of three customer complaints the previous week.

Vincent Gaines, chairman and CEO of Mindpearl, said, "The company denies any wrongdoing and intends to continue to vigorously contest her claims."
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FIRING LINES
CAN YOU REALLY GET CANNED FOR WEARING TOO MUCH PERFUME? DRINKING THE WRONG BEER - AND IT HAPPENS


October 8, 2007-- As Jorinda Sullivan tells it, it wasn't chronic lateness that got her fi red. It wasn't talking back to the boss, or screwing up an important project. Nope, it was perfume.
As The Post reported last week, Sullivan, a 24-year-old from Brooklyn, says she was canned from her job as a customer-service rep because she laid on the scent too heavily, and customers complained.

For some readers the unlikely axing may have recalled a story that was widely reported in March, involving four municipal workers in Hookset, N.H., who were pink-slipped for another uncommon reason: gossiping. (As some pointed out at the time, firing office workers for gossiping is akin to firing kangaroos for jumping.)

Sullivan, who's black, says the underlying reason she was fi red was racism, and she has filed suit; her employer denies any wrongdoing. The New Hampshire case has likewise wound up in litigation. The courts will wade through the details, but in the meantime there's an immediate lesson to be drawn from these cases for anyone asking in amazement: Can you really be fired for hitting the Shalimar too hard, or whispering about your boss' comb-over?

The answer: Absolutely - in fact, you can be canned for doing less than that. Generally speaking, “An employer can fire someone for a good reason, a bad reason, or no reason at all," says Kevin Zwetsch, an attorney specializing in employment law.


While this isn't breaking news - so-called “employment at will" has long been the rule in the United States - it inevitably comes as a big surprise to many workers, who tend to believe some kind of workplace bill of rights must apply in such situations.

“I've been an employment lawyer for 15 years, and probably the single biggest misperception about the law is that an employer has to have a reason before they can fire you," says Paula Brantner, the program director for Working America, a community affiliate of the AFL-CIO that advocates for nonunion workers, and offers an “Ask-a-lawyer" service on its Web site that fields many inquiries about questionable firings.

“Most people don't know you can get fired for anything," she says. “They think they have rights they don't have."
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(2007-10-10)
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香る生活


ココアバター
ココアバターとは、ココアやチョコレートの原料である「カカオ豆」に含まれる脂肪分から精製された固形オイル。

熱帯に生育する「カカオの木」には、大きな「カカオの実」が実ります。

「カカオの実」には「カカオ豆」が含まれます。つまり「カカオ豆」は「カカオの実」の種(タネ)です。

この種には豊富な脂肪分や食物繊維が含まれているそうです。カカオ豆を水に浸けて発酵させ種の皮と胚芽を取り除いてすりつぶした固形状にしたものが「カカオマス」になります。

カカオマスは「チョコレート」や「ココア」(ココアパウダー)の原材料です。同時に「ココアバター」が採れます。

なぜ「カカオ」(Cacao)が「ココア」(Cocoa)というネーミングに変化するか不明です。「カカオバター」でもよさそうですが、なにか理由があるのでしょう。


私は、街に出たときハーブ・野草のお店や、手作り化粧品原料を販売しているお店にぶらりと入ることがあります。先日御徒町を歩いていてぶらりと入ったお店でココアバターを見つけました。

ココアバターは食べ物の原材料ですが、そこでは「化粧品原料のコーナー」で販売されていました。

ハンドクリームか練り香にしてみるか、と手に取ってみるとココアバターはクリーム色。

「チョコレート色でない」


ところで、「バター」とはもともと牛乳から採れる動物性の半固形の脂肪分を指していたと思いますが、植物オイルに「バター」というネーミングを授けた人はエラい。

バターというネーミングからとても「安全」な印象を受けます。

「シアバター」というアフリカのシアの木がら採れるオイルは、はじめて聞いたときなんかとっても「おいしそう」に感じたものです。

しかし、この場合のバターは本来のバターやマーガリンとはまったく無関係です。

トイレタリーや化粧品の製品に多用される「モイスチャーミルク」「ミルクローション」などが本来のミルクとまったく無関係な事実と似ています。このへんはネーミングの勝利ですね。

ココアバターやシアバターの「バター」は植物オイルながら常温で白色固形や半固形状のものを慣用的に指す言葉になっています。さらに固くてベタつきが少ないと「ワックス」と呼ばれます。

分子的には、脂肪酸の炭素数(C)が多いもの(炭素数12以上の高級脂肪酸)でナンタラという難しい定義がありますが、一般にバターより固目の固形状オイルで、気化すると良く燃えるモノがワックスです。

それって日本語では、蝋燭(ロウソク)のロウに当たります。

本来のワックスは植物性・動物性ともにありますがもともと天然でした。蝋燭のロウも「ハゼの木」になる「ハゼの実」から採れる天然蝋(ワックス)でした。

ワックスといえば、自動車にかけるワックスや床板にかけるワックスなど最近ではケミカルをイメージさせるので、化粧品原料としては響きがよくありません。

その点「バター」は食べ物をイメージして安全なイメージです。練り香水も基材として有名なミツロウ(ビーワックス)も良いイメージを得るために「蜜バター」というネーミングに変えようと社内提案しましたが、あっさり却下されました。

ココアバター
(そのまま食べてしまいたくなる香り)


さて、ココアバターでハンドクリームを作ってみました。ココアバターは袋を破いただけで気が遠くなる甘さ。

こういう原料はグルマン系(お菓子系、もともとの意味はフランス語で「大食い野郎」)化粧品やグルマン・フレグランスにぴったりですが、あまりにも強烈で他には応用できそうにもありません。

やはり基材は無色・無臭が使いやすいですね。

もし商品化するとしたら、ハンドクリーム「ザ・カカオ」といった感じの商品にするのがいいかも。添加物もなしにすぐにできてしまいそうです。完全天然で保湿効果も抜群らしいです。


※「ココアバター」も「シアバター」も日本の化粧品原料名としては、正式なものではなく正式にははそれぞれ「ココア脂」「シア脂」となります。


(2007-10-09)
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香る生活


金木犀の開花、昨年の13日遅れ
キンモクセイの香りを感じますか?

みなさんの近所はいかがでしょうか?早くから咲き始めた地域もあるようですが、東京は昨日咲き始めました。私の記録によれば昨年の東京の開花は9月23日でした。残暑が厳しかったためでしょうか?今年はかなり遅れました。

これから10日間くらいは台風が来ないことを祈るばかりです。台風は花を落としてしまいますので一晩で見頃(というより香頃?)が台無しです。嵐の翌朝、オレンジ色の花が地面を見事に埋め尽くす光景も、また見応えがあるもの確かではありますが。

この金木犀の花から香りのエッセンスを取り出したいと願うのは私だけではないようです。金木犀茶(桂花茶)や金木犀酒(桂花酒)にして金木犀を楽しむ中国人の食文化は相当深いものがありそうです。桂花は厳密には金木犀とはやや品種が違うそうですが、金木犀があれば間違いなく金木犀茶や金木犀酒になってしまうのがあちらの食の流儀。そんな中国人も金木犀のエッセンス抽出は考えなかったようです。

ある国営公園さんからお問い合せが来ています。園内のキンモクセイから精油を抽出してその公園オリジナルの香りの商品ができないかどうかという内容です。金木犀の天然精油の抽出は産業的に非常に厳しく世界的にもごく限られたところでしか生産していません。

当然日本でも産業として成立していません。それゆえ流通もかなり限られています。おもしろいことに香料会社の方々さえ金木犀の天然精油に触れたことがある人はもちろん、見たことがある人でさえごくわずかと思われます。

それだけ稀少です。

日本では数十年前、大手菓子メーカーさんがキンモクセイ風味(フレーバー)のチューインガムを発売されていました。人から聞いた話で詳細や事実関係は不明ですが、そのとき金木犀の天然精油が使用されていたとのこと。もちろんゴールドよりプラチナより高価な金木犀の精油をチューインガムに使用するにはごくごく微量のことだったろうと推測されますが、微量とはいえ心意気がいいですね。

この案件の金木犀はダメモトで調査です。その公園には簡易水蒸気蒸留装置がありますが溶剤抽出でないと香りを傷める可能性大です。

公園事務所の担当者と打ち合わせ。

(国分)「で、大量の新鮮な花が必要になりますが、花摘みは誰が?」
(ご担当者)「花摘みも含めて、是非トータルサポート、よろしくお願いします!」


いずれにしても、もし何かが出てくるとしたら、来年の金木犀の季節でしょうか。

天然植物とのお付き合いはロングスパン。腰を据えて・・・



(2007-10-07)
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香る生活


マスマーケットに向かうラグジュアリー7
「マスマーケットに向かうラグジュアリー」の最終回です。長い連載にお付き合いいただきありがとうございました。

記事中、世界のブランドCEOさんの発言が綺羅星のように散りばめられ、私自身刺激的でした。実際会って取材したのか、それとも他の文献からの引用なのか不明ですが、さすがフォーチュン誌ですよね。その気になれば世界のセレブも大企業の経営者も直接話を聞いてこられるに違いありません。

記事全体としては、一点の強い結論に向かうわけでなくやや脈絡もなく流れかける内容もでてきましたが、ブランド論のエッセンスみないなものが随所に顔を出していたため読み終わっると、なんとなくヒントのようなモヤモヤが頭に残りました。この記事は「ラグジュアリー」について書かれてものですが「ラグジュアリー」はすべて「ブランド」という言葉に置き換えてかまわないと考えています。

そして、刺激的に続いてきた記事の結論は、さてどうなるでしょうか?

-------------(原文訳)--------------
高値の限界は?ヘネシーは2400万円の100本限定コニャックを販売することで高値限界に挑戦中です。中身は、会社の威信をかけた最高のブレンドではあるのですが、容器が豪華で芸術品並みです。

スタンダードルームが一泊10万円以上というパリのPlaza Atheneeホテルでは、歴史的な調度品が飾ってありますが、奥には音を立てながら燃える暖炉のビデオイメージとマドンナの顔を織り込んだカーペットで飾られた氷の部屋風バーがあります。若い世代をも取り込もうとする作戦です。「驚きましたか?」と支配人が説明してくれました。「当ホテルのお客様のご子息・ご令嬢の方々は、ルイ15世スタイルの暮らしには興味がありませんからね」。

この混乱ぶりは、ある意味現在の混迷するラグジュアリーの状況を象徴しています。それは階級を超えてちょっと違う階級に足を少しだけ踏み入れたいと願う人々の世界の現れです。いずれにしても言えることは、関係者すべてがこのトレンドが末永く続くことを祈っているということです。
-------------(原文訳)--------------

2000万円以上の時計やお酒やら「消費者が腰を抜かす」(INCREDIBLE)ような価格帯を実験中の世界のブランド。「限界はあるのか?」(Is the sky the limit?)と筆者は問いかけます。

リアルな世界から乖離しはじめたラグジュアリーマーケットは、伝統と格式を重んじるはずのパリの高級ホテルにポップな装飾が施されているように現在の「落ち着かないラグジュアリーマーケットの状況」(the restless state of luxury)を象徴しているようです。「みんな自分の境遇や現実から少しだけ違う世界を味わってみたい、という欲望が今日のラグジュアリーマーケットの原動力」とのこと。

そして、結論は、しかし、そんなことはどうでもよくて、みんな儲けられるならこんなすばらしいトレンド、いつまでも続いて欲しいと祈りを捧げている(veryone has his fingers crossed=あちらでは、人差し指と中指を絡ませる行為はお願い事のためのジェスチャらしいです)。

昨年だったか「原価千円なら10万円のように原価を遥かに超える金額で販売している西洋や日本のブランドどもはけしからん!」という趣旨の中国の新聞を読みました。日本にもかってそういう意見が大勢を占めていました。今でも多くの良識のある人々がそのような意見をお持ちです。

しかし、世界の消費者が、自分が買う商品が原価とはまったくかけ離れていることを知りつつもやはりラグジュアリーを選んでしまうという現象も、また大きな事実です。それだけラグジュアリーには魅力があるとしか言いようがありません。

最後の結論が「けしからん」ではなく、「このまま続いて欲しい」という「祈り」だったことは、アメリカの経済誌らしく笑えてしまいました。自分の意見でなく第三者の意見を装っているにしてもニコっとさせられます。


マスマーケットに向かうラグジュアリー7
マスマーケットに向かうラグジュアリー6
マスマーケットに向かうラグジュアリー5
マスマーケットに向かうラグジュアリー4
マスマーケットに向かうラグジュアリー3
マスマーケットに向かうラグジュアリー2
マスマーケットに向かうラグジュアリー1

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Is the sky the limit? Hennessy is testing to find out. The spirits company is selling a limited edition of 100 bottles of cognac for $200,000 a bottle. It's a blend of the best eaux de vie in the house, but a big part of the attraction - and price - comes from the packaging: a case surmounted by Venetian-glass pearls and fashioned by artisans who usually make stained glass for cathedral windows. "It's more like a work of art than a consumer product," says Mo・ Hennessy president Christophe Navarre.

Tell that to hoteliers in an age when seven stars is the new five. At the Plaza Athenee in Paris, owned by the Sultan of Brunei, where a standard room costs $950 a night, chief operating officer Fran輟is Delahaye strides through the flower-bedecked lobby, pointing out the historical fixtures and the formal Michelin three-star restaurant.

Then he rounds the corner to show off his pride and joy: the bar, revamped to look like an ice cube, complete with video image of a crackling fireplace and a carpet woven from a pixelated close-up of Madonna's face. "Big shock, right?" he asks. It's all an attempt to bring in a younger affluent crowd. "The sons and daughters of our guests," he says, "are fed up living with Louis XV style." The contrast is jarring, but in some ways it symbolizes the restless state of luxury today. It's a world in which the snobs want to be a little bit populist, the populists want to be a little bit snobbish, and everyone has his fingers crossed that the extraordinary demand of the past decade will continue unabated.
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(2007-10-06)
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香る生活


マスマーケットに向かうラグジュアリー6
「マスマーケットに向かうラグジュアリー」の6回目です。今回はヒップポップのスター達が歌詞で取り上げたことでドンペリやクリュッグのように有名になったシャンペン「クリスタル」の話です。商品は爆発的に売れたものの、ちょっとしたハズミで逆にボイコットを受けます。アメリカ資本主義の洗礼を受けるフランスの素朴なシャンペンメーカーは、日本人もやられかねないという危惧を感じました。高級時計など、一方では「ウルトラ限定バージョン」というバブル化するラグジュアリーの話題もでてきます。さっそく・・・

-------------(原文訳)--------------
ピエール・カルダンやバーバリーばかりでなく高級飲料メーカーも同じようなジレンマを抱えています。シャンペン「クリスタル」やコニャック「クルバジェ」は、有名ラップ・スターたちの歌詞の中に繰り返しでてきます。ラップ・スターが歌うことで売上げは激増したものの、昨年、クリスタルの愛飲者であったラッパーのJay-Zは、このメーカーが「人種差別的」発言をしたとして消費者にクリスタルのボイコット呼びかけました。

そのへんの事情はaccessible-luxury(手の届く贅沢)の話で、本当のお金持ちにはあまり関心がないことかもしれません。世界の高額所得者は過去10年で倍増していますから、ヴィトンやカルティエなどは彼らを取り込む作戦に出ていますが、そのやり方は「限定バージョン」や「限定品」を成層圏プライス(超高価格)で提供することです。

2500万円でヴィトンのTourbillonを買えば、あたなの星座を時計に彫ってくれるでしょう。それとも「ウルトラ限定バージョン」がお好きでしょうか?価格さえも公表されていないヴィトンのスーツケースはいかが?このウルトラ限定バージョンは極めて限られた顧客向けですが、非常に高い成長分野です。信じがたいほどユニークなモノに強い需要があるとルイ・ヴィトンのCEOは語ります。
-------------(原文訳ここまで)--------------

2006年米国「エコノミスト」誌でクリスタルの製造元であるシャンパンメゾン「ルイ・ロデレール社」(Louis Roederer)の重役が、ラッパーに愛されることをそれほど歓迎しない内容の発言をしたことをきっかけにJay-Zが反撃に出たというニュースを指しています。

あちらでは大きな芸能ニュースだったようで、検索すればたくさん記事が出てきます。たとえば、Dom Perignon or Krug would be delighted to have their business(ドン・ペリニョンやクリュッグなら(ラッパーのリリックに登場することを)喜んでいるでしょうが、私たちは・・・)という発言。

その記事にはラッパー達を"unwelcome attention"(招かれざる客)と意図的な焚き付けとも取られかねないタイトが付いています。スゴイデスね〜

日本人記者なら敵意がない限り相手の発言に対して意図を汲み取ってタイトルを付けると思いますが、アメリカではより刺激的な記事にされるのかもしれません。

クリスタルはフランス・シャンパーニュの小規模メゾンで高級シャンパンながら、ドン・ペリニョンやクリュッグのようには知られていないメーカーさんでしたが、ラッパーの歌詞に頻繁に取り上げられることで、90年代猛烈に売上げを伸ばしたとされます。クリスタルは現在ナイトクラブでセレブ御用達のシャンパンとしての不動の地位を築いているそうです。

さて、真のラグジュアリーブランドはどのような作戦で、リッチ層を取り込もうとしているのでしょうか?答えは「ULTRA-LIMITED EDITION」(ウルトラ限定エディション)。2500万円の時計???いくらブランドとはいえ、一桁いや二桁くらいゼロの数字が違うのではないかと疑いたくなりますが「INCREDIBLE」(信じがたいほどの)ものが期待できる成長分野だそうです。そうか、発売元のルイ・ヴィトンにとっても実は信じがたい値付けだったのか・・・消費者が腰を抜かす値段であることが重要なようです。

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マスマーケットに向かうラグジュアリー1

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Drinks companies faced a similar dilemma when rap stars feted Cristal champagne and Courvoisier cognac in their lyrics. That helped boost sales, but it made some executives uncomfortable. Last year rapper Jay-Z called a boycott of Cristal after interpreting remarks by one of the maker's executives as racist.

But at least some wealthy people aren't interested in the familiar. As the number of high-net-worth individuals in the world has doubled in the past decade, Vuitton, Cartier, and others are in a race to the top to woo them. Even as they look to extend their brands downward, they are offering limited-edition or one-of-a-kind products at stratospheric prices.

Buy that $220,000 Vuitton Tourbillon watch and the company will incorporate your zodiac sign on it. Or perhaps you'd prefer the ultra-limited edition: one of just five trunks containing 33 Marilyn bags, each in a different shade of crocodile leather, for which Vuitton won't disclose a price. CEO Carcelle says that these "・er-luxury" items account for a minority of sales, but that it's a high-growth area. "There is demand for things that are incredible and unique," he says.
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Managing Director Of Cristal Not Impressed With Rap Patronage

In a special edition of The Economist Magazine, the managing director of Louis Roderer Cristal addressed the popularity of the brand amongst Hip-Hop artists.

In an article titled "Bubbles & Bling" in the March 2006 issue, Frederic Rouzaud, the managing director of Cristal, stated that the company observes its association with the rap world with "curiosity and serenity."

Despite importing over 50,000 cases of the champagne per year, Rouzaud was less than thrilled at rappers' fondness for the posh drink.

"What can we do?" Rouzaud told The Economist. "We can't forbid people from buying it. I'm sure Dom Perignon or Krug would be delighted to have their business."

The article further labeled the constant Cristal patronage by rappers as "unwelcome attention."

The article contains pictures of Sean "Diddy" Combs, one of the drink's most popular enthusiasts and quotes Jay-Z's No. 1 hit "Hard Knock Life," which name-checked the brand.

According to AmericanBrandstand.com, the pricey champagne was the 8th most mentioned brand on Billboard's Top 100 chart in 2005 with 35 mentions, being promoted by the likes of Kanye West, Trina, Lloyd Banks, The Game, Mariah Carey, and others.

Source: allhiphop.com
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(2007-10-05)
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