( 香水工場の )
香る生活
『すずらん2020』長期休止のおしらせ
やはり原料問題・・(2023/11/29)
( 『すずらん2020』は2020年にリリースされたが、わずか3年だったか・・むなし )
当社には昔から『すずらん』という製品があり人気がありました。
しかし、『すずらん』に使用していた香水原料のある成分が製造中止となり処方をやり直して2020年『すずらん2020』となりました。
『すずらん2020』のリリースからわずか3年。
またもや別のある成分が製造中止となり、処方をやり直しを迫られています。
処方をリビルドし試作品制作を繰り返しましたが、香りがかなり変化することがわかりました。
新しい適切な原料をリサーチし直す、よいアイデアをお持ちの外部パフューマーさんに調香依頼を行う・・などといった手段はまだ残されていますが時間がかかります。
そこで『すずらん2020』はいったん長期休止期間に入ることをアナウンスすることになりました。
本日時点で、
・『すずらん2020』4mLキューブはすでに在庫切れで長期休止中です。
・『すずらん2020』25mLフルボトルは在庫限りで長期休止となります。
このような状況となりました。
ご愛用中のお客様には、誠に恐縮ですがご理解願います。
本アナウンスで『すずらん2020』を購入される方が急増する可能性がありますので・・
香水原料は、突然あるいは徐々に「入手不可になる」「使用禁止になる」などの事件(香水業界の関係者にとっては事件)が "ときどき" と言うか私たちの感覚では "頻繁" に発生しています。
ハイブランドさんの昔の名香や比較的近年の香水でも、いったん廃盤になった香水がなかなか復刻されない理由の一つです。
たまに復刻香水はありますが、おおむねオリジナルとは別物の香りになりがち。その背景にある事情もこれです。
わずか3年しか生きながらえなかった『すずらん2020』が不憫ですが、他に方法がなくご理解のほどよろしくお願いします。
お客様コメント:
2023/12/01 (Fri) 05:19:26
すずらん2020
・コメント:
すずらんの香りがとても好きで、大手メゾンの人工的な香りとは違う、こちらの植物的な美しい香りを愛用していました。(以前はキャロンのミュゲドボヌールを使っていました。あの青っぽいけど瓜っぽくはない、苦味のある優しいすずらんも好きでした)
原料問題で、始めは数ヶ月休止とのことだったので安心していたのですが…とても残念。毎日の定番だったので、かなり動揺しています。
ぜひぜひ後継の、美しい香りをお願いします!悲しいですが時間がかかってもかまいません。どうぞ完成度を追求して下さい。
ブログの御著者と同じく、私も瓜の香りが苦手なんです。植物っぽさと言って、安易にあの香りに頼らないことを願います。
・・りい
(国分) 当社も当初数ヶ月の休止で乗り切れると踏んでおりました。下手な予想がご期待をかけさせる結果となりましたことお詫びいたします
(2023-11-29)
( 『すずらん2020』は2020年にリリースされたが、わずか3年だったか・・むなし )
『すずらん』の変遷
当社には昔から『すずらん』という製品があり人気がありました。
しかし、『すずらん』に使用していた香水原料のある成分が製造中止となり処方をやり直して2020年『すずらん2020』となりました。
『すずらん2020』の終了
『すずらん2020』のリリースからわずか3年。
またもや別のある成分が製造中止となり、処方をやり直しを迫られています。
処方をリビルドし試作品制作を繰り返しましたが、香りがかなり変化することがわかりました。
新しい適切な原料をリサーチし直す、よいアイデアをお持ちの外部パフューマーさんに調香依頼を行う・・などといった手段はまだ残されていますが時間がかかります。
そこで『すずらん2020』はいったん長期休止期間に入ることをアナウンスすることになりました。
本日時点で、
・『すずらん2020』4mLキューブはすでに在庫切れで長期休止中です。
・『すずらん2020』25mLフルボトルは在庫限りで長期休止となります。
このような状況となりました。
ご愛用中のお客様には、誠に恐縮ですがご理解願います。
『すずらん2020』は本数制限販売へ移行
本アナウンスで『すずらん2020』を購入される方が急増する可能性がありますので・・
本日よりお一人様1本までとする本数制限販売へと移行させていただきます。ご不便をおかけします、ご協力ください
香水の宿命
香水原料は、突然あるいは徐々に「入手不可になる」「使用禁止になる」などの事件(香水業界の関係者にとっては事件)が "ときどき" と言うか私たちの感覚では "頻繁" に発生しています。
ハイブランドさんの昔の名香や比較的近年の香水でも、いったん廃盤になった香水がなかなか復刻されない理由の一つです。
たまに復刻香水はありますが、おおむねオリジナルとは別物の香りになりがち。その背景にある事情もこれです。
わずか3年しか生きながらえなかった『すずらん2020』が不憫ですが、他に方法がなくご理解のほどよろしくお願いします。
お客様コメント:
2023/12/01 (Fri) 05:19:26
すずらん2020
・コメント:
すずらんの香りがとても好きで、大手メゾンの人工的な香りとは違う、こちらの植物的な美しい香りを愛用していました。(以前はキャロンのミュゲドボヌールを使っていました。あの青っぽいけど瓜っぽくはない、苦味のある優しいすずらんも好きでした)
原料問題で、始めは数ヶ月休止とのことだったので安心していたのですが…とても残念。毎日の定番だったので、かなり動揺しています。
ぜひぜひ後継の、美しい香りをお願いします!悲しいですが時間がかかってもかまいません。どうぞ完成度を追求して下さい。
ブログの御著者と同じく、私も瓜の香りが苦手なんです。植物っぽさと言って、安易にあの香りに頼らないことを願います。
・・りい
(国分) 当社も当初数ヶ月の休止で乗り切れると踏んでおりました。下手な予想がご期待をかけさせる結果となりましたことお詫びいたします
(2023-11-29)
( 香水工場の )
香る生活
ホウショウ精油と香料園さん
鹿児島で刺激をいただいてきました・・(2023/11/29)
( 香料園さんに向かう途中、開聞岳を撮影 )
鹿児島にあるハーブ園兼蒸留所さんを見学させてもらった。
正式名称は「開聞山麓香料園」(かいもんさんろく・こうりょうえん)。
この記事では「香料園」さんと表記させていただきます。
大変興味深い蒸留所さんでした。
開聞岳(かいもんだけ)は、九州のほぼ南端に位置する小さな山ですが、なんと言っても完璧な円錐形が特徴で富士山を思わせる山容。
活火山ながら最近の噴火は平安時代だそうで私達が行ったときは穏やかで優雅な姿を海面から現していました。
この麓(ふもと)に香料園さんがある。
今では樹林帯に覆われた開聞岳だが、もとが火山なので周辺の土壌は岩や火山性砂質が豊富だと感じられた。
植物ごとに好みとする土壌は違うが、一般に香料性のハーブは水田みたいな粘土質より、斜面で水はけがよいサラサラした土壌を好むものが多いのでこの地にハーブ園があるのも納得。
私は以前、香水業界とは無念のビジネスマンでこの業界に来てからは香水・香料関連の本を何冊も読んで勉強した。
香水の書籍はなぜか全般的に退屈なものが多い。
しかし、おもしろくて刺激的だった何冊かがとても記憶に残っている。
その一つが曽田政治氏が書いた『香料とともに60年』。
日本の大手香料会社・曽田香料株式会社の創業者さんが書いたもの。
市販されず曽田香料50周年とかのイベントで関係者に配布された書籍らしい。
自分がどうやってこの本の存在を知ったか今では思い出せないが、読みたいという気持ちでネット古書店で探して入手した。
社長自らが綴るリアルな自叙伝的社史といった内容・・新潟の田舎から上京し丁稚奉公からはじまる物語は起業家スピリッツに満ちておりビジネス書としても香水・香料業界の話としても大変おもしろい。
日経新聞のコラム『私の履歴書』、あるいはニッカウイスキー竹鶴政孝氏をモデルにしたNHKドラマ『マッサン』に似た構図に見えた。
曽田氏は香料会社の創業者と同時に日本での香料植物プランテーションの創始者と言えるでしょう。
有名な北海道のラベンダーももとは曽田氏が北海道大学とはじめた実験農場がはじまり。
台湾のジャスミン畑や小豆島のゼラニウム畑など開拓されています。
この本で鹿児島にはかつて曽田香料鹿児島農場がありゼラニウムやホウショウが栽培されていたことを知った。
しかし、この本が執筆された時点ですでに農場は閉鎖されていたので私は「この農場はもう存在しない」と理解した。
その思い込みが違っていたことが10年以上経過した今年判明した。
ホウショウとはクスノキの一種でホウショウ精油が採れる。
漢字では「芳樟」と綴る。芳樟の「樟」はクスノキ、「楠」や簡単に「クス」とも呼ばれる。
九州・四国・中国地方など関東より南の地域でよく育ち、神聖な樹木としてお寺や神社にもよく植えられる。
カンファー=樟脳(しょうのう)が採れる樹木としても有名である。
巨大化し偉容を誇る姿と独特の香りを放つことで自然と人々の信仰を誘ったのではないかと思う。
ホウショウはこのクスノキの一種で外見はほぼ同じながらカンファーの代わりにリナロールを多く含む。
ホウショウのふしぎなところは種から育てると8割がクスノキに変異する点である。
( 鹿児島県にある巨大クスノキ「蒲生のクス」Wikipedia )
リナロールは花の典型的な香気成分で香水業界では最も重要な成分の一つ。
現在では工業的に生産されるリナロールだが、昭和40年代くらいまでは世界的に花や植物の精油から採取していた。
リナロールはたいていの花に含まれるが、リナロール採取可能な植物はごく限られている・・代表的植物がローズウッドとホウショウである。
ホウショウのリナロールは純度が高く量が採取できる点が産業的に意味がある。
(花の香気成分が樹木に含まれる点はふしぎだが、同じく樹木であるクロモジにもリナロールが多く含まれる)
( 最近大がかりに収穫されたばかりのホウショウの木、ここまで丸刈りになると木は大丈夫かな?と心配になったが、またどんどん新しい芽が生育するらしい )
( カユプテの木も栽培されていた。樹皮がバガバガした感じでおもしろいので撮影。カユプテはユーカリやティ―ツリー、ニアウリと同じ仲間でこれらの精油は世界的に人気が高い )
鹿児島農場では最盛期には6トンというホウショウ精油が採取され、おもにフランスなど欧米へと輸出されていたと言う。
当時南米のローズウッドが減産傾向に陥る一方で、鹿児島農場は世界最大のリナロール生産地の地位を確立した。
今年、アロマテラピーの専門家で友人の和田さんといっしょにマッサージオイルを作るプロジェクトが持ち上がり、ある日、和田さんの事務所で関係者が集まって商品コンセプトのミーティングを行った。
マッサージオイルに関して消費者の中にどんな需要があるのか、そしてどんな精油を使ったら良いか?というテーマをブレスト風にわいわい言い合った。
その中で和田さんからはリラックス効果としてホウショウ精油を使いたいという話が出た。
開聞岳の香料園さんから「よいホウショウ精油が入手できる」と言うのだ。
この時点で私は不覚にも開聞山麓香料園さんのことは知らなかった。
「あれ?・・」と思った。
10年以上も前に読んだ曽田政治氏の『香料とともに60年』が蘇った。
「もしや農場は残っていたのか?・・」が正直な気持ち。
自宅に戻り香料園さんについて調べた・・大変有名なハーブ園さんで、また実際に稼働している蒸留所さんだった。
今さら和田さんにこんな事情は話せなくて、まるで以前から知っている蒸留所さんみたいな顔してプロジェクトを進めた。
マッサージオイルを作るプロジェクトは『ボンセントオイル』として結実し9月にリリースした。
しかし植物オイル全般の世界的な価格高騰とマッサージオイル自体が市場にあふれている現状を考えると継続的なブラッシュアップが必要と認識している。
ボンセントオイルをリリースした直後、やはり実際に香料園さんに行き自分の目で日本有数の蒸留所さんを拝見したいと考え、アポを取らせていただいた。そして11月に馳せ参じた。
直接お話を伺いいろいろなことが明確になった。
香料園の創始者は故宮崎巌氏。
曽田香料の曽田政治氏の依頼で農園開拓と運営を任された氏は、曽田香料が農園を閉鎖する際に個人的に引き取り開聞山麓香料園としてスタートされた。
曽田政治氏と宮崎家の間には香料植物を通して深い信頼関係があったという印象を受けた。
( 宮崎巌氏・・農作業中のワンショットだろうか? 白いシャツに地下足袋姿・・まるで映画のワンシーン・・胸ポケットの手帳や帽子にも植物学者としての雰囲気が漂う・・開聞山麓香料園のWebサイトにて公開されている写真 )
曽田香料鹿児島農場は世界最大のリナロール生産者となり地域経済の一部を担うほどの産業へと成長した。
ホウショウ畑は開聞岳だけでなく周辺の集落や地域へと拡大していった。
鹿児島県農林部も応援に乗り出すどほど。
今回ミーティングでお会いした香料園園長の宮崎泰氏によれば、ホウショウを栽培してくれる農家は多かったという。
当時周辺ではオレンジの一種 "ポンカン" の栽培が盛んでしたが、生育が早い上に巨大化するホウショウの木はポンカンの防風林として役立つ。
九州は台風の通り道 "台風銀座" なので防風林が必要なわけですが、その防風林の葉っぱを買い取ってくれる蒸留所の存在はありがたかったに違いない。
鹿児島農場の最盛期には複数の釜で日に複数回の蒸留が繰り返されており、精油の豊かな香りは蒸留所を超えて集落や地域一帯を覆うほどだったと言う。
また蒸留後に余った蒸留水の温度は60度くらい、ちょっと冷めればお風呂にちょうどよく従業員や家族のお風呂の湯として利用されたとのこと。
精油採取時に発生する蒸留水は副産物だが、ある程度精油成分が含有されているため香りが良い、美容に良いし、健康にも良い。
私たちはこういう蒸留水を「フローラルウォーター」と呼ぶが、フローラルウォーターの使い途は化粧水の原料にしたり、料理用の水にしたり、中には直接飲む人もいる。
フローラルウォーター風呂は聞いたこともないほど贅沢なお風呂だが、そんな風呂上がりは、もちろん「水もしたたるよい香水男・香水女」のできあがりである。
もし私がそんなお風呂に毎日入れるとしたら、どれだけ長生きできるかとまじめに感謝するだろう。
クレオパトラの有名なバラ風呂でさえ、せいぜいバラの花びらを湯船に浮かべたレベル、その程度では精油成分は体に取り込めない。
隣町の「指宿」(いぶすき)は、昭和40~50年代に新婚旅行ブームで沸いた温泉街(関東における熱海や伊豆半島に似ている)だが、フローラルウォーターは指宿の一部のホテルにも提供されていたようです。
このようにホウショウ精油は地域経済の一部を担うほどの産業へと成長したが、リナロールが工業的に合成されるようになると需要も減少へと転じ、ついに曽田香料鹿児島農場は閉鎖されることになる。
関係者や地域の人々の落胆がどれほどのものか察せられるが、それは体験者でない自分にはとうていわからないこと。
しかし、宮崎巌氏が香料園をスタートさせたことで日本の香料産業の遺産が一部でも残されたことは後世の私達からすれば幸運だったと農園内を案内されながら感謝の気持ちを抱いた。
当社はまだ30年未満の弱小企業。
一方、香料園さんは80年以上の歴史。
単に長く生き残っただけでなく一時は世界最大のリナロール生産を担い地域経済を回した歴史と重みがある。
ゆらゆらと園内を歩き回りながら、私の脳裏には「歴史と遺産」が感じられ、今風に言えばリスペクトの気持ちでいっぱいだった。
( 500Kg蒸留釜、戦前の東京で製造されたもの。精油用蒸留釜としては巨大で国内ではこのクラスの蒸留釜は珍しい。曽田政治氏はもっと大きな釜を作りたかったが列車に乗せられないためこのクラスで断念したらしい・・この釜が壊れたら修理できる人はもやいないが、まだまだ壊れる気配はない。昔のモノ作りの凄さも伝わる )
( 香りを確認中の当社代表・・ホウショウ精油は蒸留採取された後、数ヶ月間、冷暗所で熟成を待つ。蒸留したての精油にはややツンと来る蒸留臭なるものがあるとのことだった )
ホウショウの香水は他社さんがすでに出しておられるでしょうが、「武蔵野ワークス版」があってもいいかもしれない。
オードパルファム『芳樟』(仮名)を制作できないか検討したい。
リリースできるか、できるとしたら何年後?・・まったく未定でゆるいプランですが、固まったらまたこのブログで報告したい。
お客様コメント:
2024/04/09 (Tue) 15:19:10
日本製があると知ってびっくり
ホウショウって「ホーリーフ」のことですよね。大好きな精油です。海外製しかないと思っていましたが、まさか国産があったとは!是非嗅いでみたいです。
検討中の香水も首を長くしてお待ちしています。
・・
2024/01/05 (Fri) 08:54:41
九州のクスノキ
・コメント:
九州の木といえば何と言ってもクスノキですね。福岡県みやま市で生産されている樟脳が有名です。
常緑樹照葉樹のあばれ木であるのに、葉柄(葉の軸)が長く、葉の縁がゆるく波立っているためか、軽やかで優しい印象です。
初夏に花姿が見えないのに、どこからか落ちてくる素晴らしく爽やかな芳香に驚くことがありますが、たいていクスノキです。
小さな、キレイなキミドリ色の花をわんさかつけています。鼻をつけて嗅ぐと匂いません。
寺社が多い地区では、空気の流れしだいでは街中がクスノキの花の芳香に満たされることもあります。意外と知られていない、いい匂いの花が咲く植物です。じみーに好きな木がとりあげられていたので、うれしくて。
・・おかーぽん
(国分) みやま市にはクスノキから樟脳を生産する工場があったと思いますが、後継者問題など厳しい状況だとお聞きしました。伝統が長く続いてくれるといいですね
(2023-11-28)
( 香料園さんに向かう途中、開聞岳を撮影 )
鹿児島へ行ってきました
鹿児島にあるハーブ園兼蒸留所さんを見学させてもらった。
正式名称は「開聞山麓香料園」(かいもんさんろく・こうりょうえん)。
この記事では「香料園」さんと表記させていただきます。
大変興味深い蒸留所さんでした。
開聞岳(かいもんだけ)は、九州のほぼ南端に位置する小さな山ですが、なんと言っても完璧な円錐形が特徴で富士山を思わせる山容。
活火山ながら最近の噴火は平安時代だそうで私達が行ったときは穏やかで優雅な姿を海面から現していました。
この麓(ふもと)に香料園さんがある。
今では樹林帯に覆われた開聞岳だが、もとが火山なので周辺の土壌は岩や火山性砂質が豊富だと感じられた。
植物ごとに好みとする土壌は違うが、一般に香料性のハーブは水田みたいな粘土質より、斜面で水はけがよいサラサラした土壌を好むものが多いのでこの地にハーブ園があるのも納得。
なぜ香料園さんを訪問?
私は以前、香水業界とは無念のビジネスマンでこの業界に来てからは香水・香料関連の本を何冊も読んで勉強した。
香水の書籍はなぜか全般的に退屈なものが多い。
しかし、おもしろくて刺激的だった何冊かがとても記憶に残っている。
その一つが曽田政治氏が書いた『香料とともに60年』。
日本の大手香料会社・曽田香料株式会社の創業者さんが書いたもの。
市販されず曽田香料50周年とかのイベントで関係者に配布された書籍らしい。
自分がどうやってこの本の存在を知ったか今では思い出せないが、読みたいという気持ちでネット古書店で探して入手した。
社長自らが綴るリアルな自叙伝的社史といった内容・・新潟の田舎から上京し丁稚奉公からはじまる物語は起業家スピリッツに満ちておりビジネス書としても香水・香料業界の話としても大変おもしろい。
日経新聞のコラム『私の履歴書』、あるいはニッカウイスキー竹鶴政孝氏をモデルにしたNHKドラマ『マッサン』に似た構図に見えた。
香料植物プランテーションの創始者
曽田氏は香料会社の創業者と同時に日本での香料植物プランテーションの創始者と言えるでしょう。
有名な北海道のラベンダーももとは曽田氏が北海道大学とはじめた実験農場がはじまり。
台湾のジャスミン畑や小豆島のゼラニウム畑など開拓されています。
この本で鹿児島にはかつて曽田香料鹿児島農場がありゼラニウムやホウショウが栽培されていたことを知った。
しかし、この本が執筆された時点ですでに農場は閉鎖されていたので私は「この農場はもう存在しない」と理解した。
その思い込みが違っていたことが10年以上経過した今年判明した。
ホウショウとは?
ホウショウとはクスノキの一種でホウショウ精油が採れる。
漢字では「芳樟」と綴る。芳樟の「樟」はクスノキ、「楠」や簡単に「クス」とも呼ばれる。
九州・四国・中国地方など関東より南の地域でよく育ち、神聖な樹木としてお寺や神社にもよく植えられる。
カンファー=樟脳(しょうのう)が採れる樹木としても有名である。
巨大化し偉容を誇る姿と独特の香りを放つことで自然と人々の信仰を誘ったのではないかと思う。
ホウショウはこのクスノキの一種で外見はほぼ同じながらカンファーの代わりにリナロールを多く含む。
ホウショウのふしぎなところは種から育てると8割がクスノキに変異する点である。
( 鹿児島県にある巨大クスノキ「蒲生のクス」Wikipedia )
香水業界にとってのリナロール
リナロールは花の典型的な香気成分で香水業界では最も重要な成分の一つ。
現在では工業的に生産されるリナロールだが、昭和40年代くらいまでは世界的に花や植物の精油から採取していた。
リナロールはたいていの花に含まれるが、リナロール採取可能な植物はごく限られている・・代表的植物がローズウッドとホウショウである。
ホウショウのリナロールは純度が高く量が採取できる点が産業的に意味がある。
(花の香気成分が樹木に含まれる点はふしぎだが、同じく樹木であるクロモジにもリナロールが多く含まれる)
( 最近大がかりに収穫されたばかりのホウショウの木、ここまで丸刈りになると木は大丈夫かな?と心配になったが、またどんどん新しい芽が生育するらしい )
( カユプテの木も栽培されていた。樹皮がバガバガした感じでおもしろいので撮影。カユプテはユーカリやティ―ツリー、ニアウリと同じ仲間でこれらの精油は世界的に人気が高い )
鹿児島農場では最盛期には6トンというホウショウ精油が採取され、おもにフランスなど欧米へと輸出されていたと言う。
当時南米のローズウッドが減産傾向に陥る一方で、鹿児島農場は世界最大のリナロール生産地の地位を確立した。
香料園さんとの出会い
今年、アロマテラピーの専門家で友人の和田さんといっしょにマッサージオイルを作るプロジェクトが持ち上がり、ある日、和田さんの事務所で関係者が集まって商品コンセプトのミーティングを行った。
マッサージオイルに関して消費者の中にどんな需要があるのか、そしてどんな精油を使ったら良いか?というテーマをブレスト風にわいわい言い合った。
その中で和田さんからはリラックス効果としてホウショウ精油を使いたいという話が出た。
開聞岳の香料園さんから「よいホウショウ精油が入手できる」と言うのだ。
この時点で私は不覚にも開聞山麓香料園さんのことは知らなかった。
「あれ?・・」と思った。
10年以上も前に読んだ曽田政治氏の『香料とともに60年』が蘇った。
「もしや農場は残っていたのか?・・」が正直な気持ち。
自宅に戻り香料園さんについて調べた・・大変有名なハーブ園さんで、また実際に稼働している蒸留所さんだった。
今さら和田さんにこんな事情は話せなくて、まるで以前から知っている蒸留所さんみたいな顔してプロジェクトを進めた。
プロジェクト『ボンセントオイル』
マッサージオイルを作るプロジェクトは『ボンセントオイル』として結実し9月にリリースした。
しかし植物オイル全般の世界的な価格高騰とマッサージオイル自体が市場にあふれている現状を考えると継続的なブラッシュアップが必要と認識している。
ボンセントオイルをリリースした直後、やはり実際に香料園さんに行き自分の目で日本有数の蒸留所さんを拝見したいと考え、アポを取らせていただいた。そして11月に馳せ参じた。
香料園の創始者
直接お話を伺いいろいろなことが明確になった。
香料園の創始者は故宮崎巌氏。
曽田香料の曽田政治氏の依頼で農園開拓と運営を任された氏は、曽田香料が農園を閉鎖する際に個人的に引き取り開聞山麓香料園としてスタートされた。
曽田政治氏と宮崎家の間には香料植物を通して深い信頼関係があったという印象を受けた。
( 宮崎巌氏・・農作業中のワンショットだろうか? 白いシャツに地下足袋姿・・まるで映画のワンシーン・・胸ポケットの手帳や帽子にも植物学者としての雰囲気が漂う・・開聞山麓香料園のWebサイトにて公開されている写真 )
ホウショウ精油、最盛期の風景
曽田香料鹿児島農場は世界最大のリナロール生産者となり地域経済の一部を担うほどの産業へと成長した。
ホウショウ畑は開聞岳だけでなく周辺の集落や地域へと拡大していった。
鹿児島県農林部も応援に乗り出すどほど。
今回ミーティングでお会いした香料園園長の宮崎泰氏によれば、ホウショウを栽培してくれる農家は多かったという。
当時周辺ではオレンジの一種 "ポンカン" の栽培が盛んでしたが、生育が早い上に巨大化するホウショウの木はポンカンの防風林として役立つ。
九州は台風の通り道 "台風銀座" なので防風林が必要なわけですが、その防風林の葉っぱを買い取ってくれる蒸留所の存在はありがたかったに違いない。
鹿児島農場の最盛期には複数の釜で日に複数回の蒸留が繰り返されており、精油の豊かな香りは蒸留所を超えて集落や地域一帯を覆うほどだったと言う。
また蒸留後に余った蒸留水の温度は60度くらい、ちょっと冷めればお風呂にちょうどよく従業員や家族のお風呂の湯として利用されたとのこと。
香水風呂の話
精油採取時に発生する蒸留水は副産物だが、ある程度精油成分が含有されているため香りが良い、美容に良いし、健康にも良い。
私たちはこういう蒸留水を「フローラルウォーター」と呼ぶが、フローラルウォーターの使い途は化粧水の原料にしたり、料理用の水にしたり、中には直接飲む人もいる。
フローラルウォーター風呂は聞いたこともないほど贅沢なお風呂だが、そんな風呂上がりは、もちろん「水もしたたるよい香水男・香水女」のできあがりである。
もし私がそんなお風呂に毎日入れるとしたら、どれだけ長生きできるかとまじめに感謝するだろう。
クレオパトラの有名なバラ風呂でさえ、せいぜいバラの花びらを湯船に浮かべたレベル、その程度では精油成分は体に取り込めない。
隣町の「指宿」(いぶすき)は、昭和40~50年代に新婚旅行ブームで沸いた温泉街(関東における熱海や伊豆半島に似ている)だが、フローラルウォーターは指宿の一部のホテルにも提供されていたようです。
歴史と遺産
このようにホウショウ精油は地域経済の一部を担うほどの産業へと成長したが、リナロールが工業的に合成されるようになると需要も減少へと転じ、ついに曽田香料鹿児島農場は閉鎖されることになる。
関係者や地域の人々の落胆がどれほどのものか察せられるが、それは体験者でない自分にはとうていわからないこと。
しかし、宮崎巌氏が香料園をスタートさせたことで日本の香料産業の遺産が一部でも残されたことは後世の私達からすれば幸運だったと農園内を案内されながら感謝の気持ちを抱いた。
当社はまだ30年未満の弱小企業。
一方、香料園さんは80年以上の歴史。
単に長く生き残っただけでなく一時は世界最大のリナロール生産を担い地域経済を回した歴史と重みがある。
ゆらゆらと園内を歩き回りながら、私の脳裏には「歴史と遺産」が感じられ、今風に言えばリスペクトの気持ちでいっぱいだった。
( 500Kg蒸留釜、戦前の東京で製造されたもの。精油用蒸留釜としては巨大で国内ではこのクラスの蒸留釜は珍しい。曽田政治氏はもっと大きな釜を作りたかったが列車に乗せられないためこのクラスで断念したらしい・・この釜が壊れたら修理できる人はもやいないが、まだまだ壊れる気配はない。昔のモノ作りの凄さも伝わる )
( 香りを確認中の当社代表・・ホウショウ精油は蒸留採取された後、数ヶ月間、冷暗所で熟成を待つ。蒸留したての精油にはややツンと来る蒸留臭なるものがあるとのことだった )
オードパルファム『芳樟』
ホウショウの香水は他社さんがすでに出しておられるでしょうが、「武蔵野ワークス版」があってもいいかもしれない。
オードパルファム『芳樟』(仮名)を制作できないか検討したい。
リリースできるか、できるとしたら何年後?・・まったく未定でゆるいプランですが、固まったらまたこのブログで報告したい。
お客様コメント:
2024/04/09 (Tue) 15:19:10
日本製があると知ってびっくり
ホウショウって「ホーリーフ」のことですよね。大好きな精油です。海外製しかないと思っていましたが、まさか国産があったとは!是非嗅いでみたいです。
検討中の香水も首を長くしてお待ちしています。
・・
2024/01/05 (Fri) 08:54:41
九州のクスノキ
・コメント:
九州の木といえば何と言ってもクスノキですね。福岡県みやま市で生産されている樟脳が有名です。
常緑樹照葉樹のあばれ木であるのに、葉柄(葉の軸)が長く、葉の縁がゆるく波立っているためか、軽やかで優しい印象です。
初夏に花姿が見えないのに、どこからか落ちてくる素晴らしく爽やかな芳香に驚くことがありますが、たいていクスノキです。
小さな、キレイなキミドリ色の花をわんさかつけています。鼻をつけて嗅ぐと匂いません。
寺社が多い地区では、空気の流れしだいでは街中がクスノキの花の芳香に満たされることもあります。意外と知られていない、いい匂いの花が咲く植物です。じみーに好きな木がとりあげられていたので、うれしくて。
・・おかーぽん
(国分) みやま市にはクスノキから樟脳を生産する工場があったと思いますが、後継者問題など厳しい状況だとお聞きしました。伝統が長く続いてくれるといいですね
(2023-11-28)
( 香水工場の )
香る生活
株式会社になりました
2023年11月1日付けで・・(2023/11/24)
( 商号変更のメリット・デメリットを検討して・・ )
会社形態の違いなどに関心ある人は少ないと思いますが、もし興味ありましたお読みください、そういう方にはおもしろい記事かも・・
これまで当社は有限会社でしたが今回株式会社に変更しました。
取引台帳の修正があるので取引先数社に連絡したところ一社から「おめでとうございます」と言われた。
特に意味はなく軽い社交辞令的な反応だろうが、どことなく違和感を感じた。
有限より株式会社の方が格上というイメージがあることを暗示する何気ないよい一言だった。
当社は1996年に「有限会社」という会社組織で創業した。
当時は資本金「1,000万円」以上が株式会社の条件で、額がやや厳しいし、それに小さな企業には有限の方がなにかと動きやすいと判断した。
たとえば、株式会社だと決定事項によっては株主総会での承認が必要だったり、監査役の設置が求められたり。
取締役の任期は通常2年で2年ごとに重任するなり新任するなり法務局で登記しなおすなどの規制がある。
さらに株式会社には決算結果の開示義務もある。
個人で言えば給料明細をパブリックに公開するようなもの、中小企業の成績表は立派でないところが多いので、なかなか胸を張って公開しにくいものである・・
だから小さな企業には有限会社の方がふさわしい。
ところが・・
2006年に新会社法が施行されて会社形態が大きく変化した。
一つは有限会社の廃止。
二つ目は資本金制度の廃止。
あの「1,000万円」だった資本金は不要となり、法的には「1円」でも株式会社は設立可能となった。
決算の公告義務は残っているものの非公開会社は、事実上しなくてもお咎めなしのダブルスタンダード。
(その結果、全国の9割以上の株式会社が決算公告を行っていない)
さらに取締役の任期が10年まで延期されたことで「小さな企業もすべて株式会社でいいじゃん!」という雰囲気へと政府は方針転換をしたのです。
日本では当時すでに経済的没落がはじまっていた。
多くの国民に起業・開業を奨励し経済活性化の刺激策にしたいという政府の意図が見て取れる。
2006年の新会社法以前に存在した有限会社は "特例" として有限を名乗ることができるものの法的建前としては「そんな会社は存在しない」というポジションになりました。
なくなったからには、いつかは商号変更しなくちゃ・・と思いながら10年以上放置してきた。
社内では、今となってはむしろ「希少価値となった有限を残したい」という意見も強かった。
メリット・デメリットを検討してついに重い腰を上げ今回商号変更となった。
なお、商号変更の検討の過程で「合同会社」という選択肢もありましたが、話が長くなるので今日はここまで。
(追加) 合同会社については「話が長くなるので・・」と筆を止めましたが、再考して書き残すことにしました。
実は2006年の新会社法で有限会社を廃止すると同時に新しい形態の会社組織が導入されました。それが合同会社。
有限会社と同じように小規模組織向けの組織に向いている形態、というより有限会社よりさらに小さな会社に最適。
株式会社とはもともと出資者と経営者が別人(所有と経営の分離)で、株式を不特定多数の人々に公開する企業形態を想定している。
だから株主総会の開催や決算公示義務など厳しいルールがある。
出資と経営が同じ人間や家族や仲間など限られた人間になりがちな個人事業や小規模会社の形態としては、株式会社はまったく最適化されていないと言える。
しかし1990年代インターネット革命がはじまると起業スタイルがガラリと変化しました。
それまで起業と言えば、どこからか資本金をかき集めてきて工場を建てたり大型機械を入れたり、大きな設備投資を行うスタイルでした。
このスタイルはもちろん現在でも続いていますが、ネット時代の起業は数人の仲間で資本金もなしに自宅のガレージなどでスタートするスタイル・・Apple、Google、AmazonなどメガIT企業の多くはこうやって立ち上がってきました。
少人数でお金をかけずに起業する、つまり個人事業レベルでの起業の方がネット時代にはむしろ有利ということでしょう。
1980年代、米国ではこういうスタイルにマッチした新しい会社形態として「LLC」(Limited Liability Company)が生み出されました。
(格安航空会社「LCC」(Low Cost Carrier)ではない)
LLCは出資者と経営者が分かれておらず、私には有限会社よりもさらに個人事業に近いモデルに感じられます。
意思決定が速く迅速で機動力が魅力で、変化が早いITやライフサイエンスなどのハイテク分野に最適な企業形態です。
日本の合同会社は米国LLCをモデルとしているそうです。
だから有限会社の名称を廃棄するとしたら、小規模企業の当社は株式会社よりも合同会社の方がいいのでは?と最後まで迷いました。
一方、Apple、Google、Amazonの日本法人は巨大なのにすべて株式会社から合同会社へ移行しました。これは決算公示義務の回避のためと推測されます。
合同会社に対する世間の認知度が理由です。
当社がApple、Google、Amazonのように地名度があれば会社形態など誰も気にしませんが、社会的信用が不足している場合、当社を知らないお客様にとって社名における第一印象は正直勝負部分になることがある・・というわけでこうなった次第です。
今回当社は、商号が少しだけ変化しました、中身に変化ありません。
今後ともごひいきのほど、よろしくお願いします。
(2023-11-24)
( 商号変更のメリット・デメリットを検討して・・ )
会社形態の違いなどに関心ある人は少ないと思いますが、もし興味ありましたお読みください、そういう方にはおもしろい記事かも・・
「おめでとう」なのか?
これまで当社は有限会社でしたが今回株式会社に変更しました。
取引台帳の修正があるので取引先数社に連絡したところ一社から「おめでとうございます」と言われた。
特に意味はなく軽い社交辞令的な反応だろうが、どことなく違和感を感じた。
有限より株式会社の方が格上というイメージがあることを暗示する何気ないよい一言だった。
有限会社 vs 株式会社
当社は1996年に「有限会社」という会社組織で創業した。
当時は資本金「1,000万円」以上が株式会社の条件で、額がやや厳しいし、それに小さな企業には有限の方がなにかと動きやすいと判断した。
たとえば、株式会社だと決定事項によっては株主総会での承認が必要だったり、監査役の設置が求められたり。
取締役の任期は通常2年で2年ごとに重任するなり新任するなり法務局で登記しなおすなどの規制がある。
さらに株式会社には決算結果の開示義務もある。
個人で言えば給料明細をパブリックに公開するようなもの、中小企業の成績表は立派でないところが多いので、なかなか胸を張って公開しにくいものである・・
だから小さな企業には有限会社の方がふさわしい。
ところが・・
新会社法で有限会社は消滅
2006年に新会社法が施行されて会社形態が大きく変化した。
一つは有限会社の廃止。
二つ目は資本金制度の廃止。
あの「1,000万円」だった資本金は不要となり、法的には「1円」でも株式会社は設立可能となった。
決算の公告義務は残っているものの非公開会社は、事実上しなくてもお咎めなしのダブルスタンダード。
(その結果、全国の9割以上の株式会社が決算公告を行っていない)
さらに取締役の任期が10年まで延期されたことで「小さな企業もすべて株式会社でいいじゃん!」という雰囲気へと政府は方針転換をしたのです。
日本では当時すでに経済的没落がはじまっていた。
多くの国民に起業・開業を奨励し経済活性化の刺激策にしたいという政府の意図が見て取れる。
むしろ希少価値となった有限会社・・
2006年の新会社法以前に存在した有限会社は "特例" として有限を名乗ることができるものの法的建前としては「そんな会社は存在しない」というポジションになりました。
なくなったからには、いつかは商号変更しなくちゃ・・と思いながら10年以上放置してきた。
社内では、今となってはむしろ「希少価値となった有限を残したい」という意見も強かった。
メリット・デメリットを検討してついに重い腰を上げ今回商号変更となった。
なお、商号変更の検討の過程で「合同会社」という選択肢もありましたが、話が長くなるので今日はここまで。
(追加) 合同会社については「話が長くなるので・・」と筆を止めましたが、再考して書き残すことにしました。
ダークホース「合同会社」
実は2006年の新会社法で有限会社を廃止すると同時に新しい形態の会社組織が導入されました。それが合同会社。
有限会社と同じように小規模組織向けの組織に向いている形態、というより有限会社よりさらに小さな会社に最適。
株式会社とはもともと出資者と経営者が別人(所有と経営の分離)で、株式を不特定多数の人々に公開する企業形態を想定している。
だから株主総会の開催や決算公示義務など厳しいルールがある。
出資と経営が同じ人間や家族や仲間など限られた人間になりがちな個人事業や小規模会社の形態としては、株式会社はまったく最適化されていないと言える。
会社形態の変化
しかし1990年代インターネット革命がはじまると起業スタイルがガラリと変化しました。
それまで起業と言えば、どこからか資本金をかき集めてきて工場を建てたり大型機械を入れたり、大きな設備投資を行うスタイルでした。
このスタイルはもちろん現在でも続いていますが、ネット時代の起業は数人の仲間で資本金もなしに自宅のガレージなどでスタートするスタイル・・Apple、Google、AmazonなどメガIT企業の多くはこうやって立ち上がってきました。
少人数でお金をかけずに起業する、つまり個人事業レベルでの起業の方がネット時代にはむしろ有利ということでしょう。
1980年代、米国ではこういうスタイルにマッチした新しい会社形態として「LLC」(Limited Liability Company)が生み出されました。
(格安航空会社「LCC」(Low Cost Carrier)ではない)
合同会社は小規模会社に最適
LLCは出資者と経営者が分かれておらず、私には有限会社よりもさらに個人事業に近いモデルに感じられます。
意思決定が速く迅速で機動力が魅力で、変化が早いITやライフサイエンスなどのハイテク分野に最適な企業形態です。
日本の合同会社は米国LLCをモデルとしているそうです。
だから有限会社の名称を廃棄するとしたら、小規模企業の当社は株式会社よりも合同会社の方がいいのでは?と最後まで迷いました。
一方、Apple、Google、Amazonの日本法人は巨大なのにすべて株式会社から合同会社へ移行しました。これは決算公示義務の回避のためと推測されます。
なぜ合同会社にしなかったのか?
合同会社に対する世間の認知度が理由です。
当社がApple、Google、Amazonのように地名度があれば会社形態など誰も気にしませんが、社会的信用が不足している場合、当社を知らないお客様にとって社名における第一印象は正直勝負部分になることがある・・というわけでこうなった次第です。
今回当社は、商号が少しだけ変化しました、中身に変化ありません。
今後ともごひいきのほど、よろしくお願いします。
(2023-11-24)
( 香水工場の )
香る生活
冬期、販売休止になるアイテム (2023年)
冬の風物詩・・ (updated: 2023/12/11)
( 寒くなるとオリが出やすい香水がある )
当社の香水の中には冬になるとオリ(澱)が発生するものがあります。
オリとは液体中に生成する半固体や固体の物質。
オリで有名な事例がワインですね。
市販ワインではめったに見られないが、製造タンク内では必ず生成されます。
ワインのオリは商品化の際フィルターで取り除かれますが、オリに栄養やおいしさが凝縮している場合があり真のワインファンは悩ましい。
当社の香水でオリが発生する製品は、多くの場合、ローズオイルが原因。
ローズオイル中のワックス成分が低温で固形化するケースが多いのです。
ワックス成分が固まるので白いオリが多い。
低温で固まる点は雪の結晶に似ていますが、香水のオリは雪の結晶のようには美しくない。
そのため不純物や異物でないかと連絡が来ることがあります・・ご安心ください、むしろ天然成分の証とお考えください。
当社ではオリも天然成分の一部としてある程度許容し過剰なフィルタリングをしない方針です。
またオリの発生を化学的に抑制する溶剤も添加しない方針で香水を製造していますのでオリがでます。
こんなオリですので、春になればほぼ解けて見えなくなります。
また暖かいお部屋では一日程度でオリは消えます。
下記2種類が「冬期・販売休止アイテム」:
なお、オリを承知の上で購入したいというお客様もおられますので、購入できるページを準備しています(『黄金星』を除く)。
それぞれのページに「オリでも問題ない方は、ここをクリック」画像がありますので必要な方は押してください。
(2023-11-22)
( 寒くなるとオリが出やすい香水がある )
オリとは?
当社の香水の中には冬になるとオリ(澱)が発生するものがあります。
オリとは液体中に生成する半固体や固体の物質。
オリで有名な事例がワインですね。
市販ワインではめったに見られないが、製造タンク内では必ず生成されます。
ワインのオリは商品化の際フィルターで取り除かれますが、オリに栄養やおいしさが凝縮している場合があり真のワインファンは悩ましい。
当社香水のオリはローズオイルの成分
当社の香水でオリが発生する製品は、多くの場合、ローズオイルが原因。
ローズオイル中のワックス成分が低温で固形化するケースが多いのです。
ワックス成分が固まるので白いオリが多い。
低温で固まる点は雪の結晶に似ていますが、香水のオリは雪の結晶のようには美しくない。
そのため不純物や異物でないかと連絡が来ることがあります・・ご安心ください、むしろ天然成分の証とお考えください。
当社ではオリも天然成分の一部としてある程度許容し過剰なフィルタリングをしない方針です。
またオリの発生を化学的に抑制する溶剤も添加しない方針で香水を製造していますのでオリがでます。
春になればオリは消える
こんなオリですので、春になればほぼ解けて見えなくなります。
また暖かいお部屋では一日程度でオリは消えます。
冬期休止アイテム
下記2種類が「冬期・販売休止アイテム」:
休止期間:12月21日 - 翌年 2月28日
※2024年3月1日『黄金星』を除いて再開しました(『黄金星』はまだオリが残っておりもうしばらく保留いたします)
(1) 摩天楼
(2) ホワイトフリージア
(3) 黄金星
※2024年3月1日『黄金星』を除いて再開しました(『黄金星』はまだオリが残っておりもうしばらく保留いたします)
(1) 摩天楼
(2) ホワイトフリージア
(3) 黄金星
購入可能な隠しページあり
なお、オリを承知の上で購入したいというお客様もおられますので、購入できるページを準備しています(『黄金星』を除く)。
それぞれのページに「オリでも問題ない方は、ここをクリック」画像がありますので必要な方は押してください。
(2023-11-22)
( 香水工場の )
香る生活
2023年11月のダブルベタ、レビュー
盛り上がりました・・(2023/11/12)
( ダブルベタのチラシ・・なんでベタガードの後ろにパンなんだ?・・の回答は下の記事に )
ダブルベタ11月分が終了しましたので今回の状況をレビュー。
まずはダブルベタってなに?という方のために簡単に説明します。
10年以上続くイベントで文字通りベタガードがダブルになるお得な企画。
以前は数量制限がなく100個以上購入される方もおられました、しかも個人のお客様・・100個買えば、大きなダンボール箱でドーンと200個、自宅に配送されてくる、業者レベルである・・う~ん、凄い・・
しかし、資材の高騰やらで当社が耐えきれなくなり去年から「3個まで」という数量制限が入るようになりました。
ダブルベタは毎年冬がはじまる11月の第一週に開催し、12月の第一週、そして翌年2月の第一週の年3回セットで開催中です。
大盛り上がりでした、当社にしては。
いかんせん中小企業のオペレーション、ちょっと注文数が増えると激しく忙しい!
発送作業は通常の数倍、ピーク日は10倍超え!
ダブルベタのときばかりは社員総出で社内は上を下への混雑ぶり。
「ベタガード、まだ人気は衰えていないな~」という実感が満ちるときであり、「また来年もこの製品を作ろう!」という気にさせてくれる。
ダブルベタをご利用いただいたすべてのお客様へ、今回もご愛顧いただきありがとうございました。
お客様からもさっそくレビューをいただいた:
ありがたいコメントですね~
これはVOICEコーナーにお寄せいただいたコメントだが、実際はそこまでサラサラではないので、やや後ろめたくもある。
が、一般的なワセリンクリームと比較すると使いやすいと思う。
ベタガードの商品写真にはパンが背景になったものをよく掲載しています。
「なぜ?」という質問はいただいたことはない。
よって返答する必要はないが、しゃべられて欲しい・・ベタガードを付けた手でお料理しても食事しても違和感がない!という意味を込めております。
100人が100人、同じ意見ではないでしょうが、ナチュラルな香り、口に入っても害がない成分という点で共感いただけるお客様は多いと信じます。
お待ちしております!
(2023-11-12)
( ダブルベタのチラシ・・なんでベタガードの後ろにパンなんだ?・・の回答は下の記事に )
10年以上続く企画
ダブルベタ11月分が終了しましたので今回の状況をレビュー。
まずはダブルベタってなに?という方のために簡単に説明します。
10年以上続くイベントで文字通りベタガードがダブルになるお得な企画。
以前は数量制限がなく100個以上購入される方もおられました、しかも個人のお客様・・100個買えば、大きなダンボール箱でドーンと200個、自宅に配送されてくる、業者レベルである・・う~ん、凄い・・
しかし、資材の高騰やらで当社が耐えきれなくなり去年から「3個まで」という数量制限が入るようになりました。
ダブルベタは毎年冬がはじまる11月の第一週に開催し、12月の第一週、そして翌年2月の第一週の年3回セットで開催中です。
2023年11月開催分のレビュー
大盛り上がりでした、当社にしては。
いかんせん中小企業のオペレーション、ちょっと注文数が増えると激しく忙しい!
発送作業は通常の数倍、ピーク日は10倍超え!
ダブルベタのときばかりは社員総出で社内は上を下への混雑ぶり。
「ベタガード、まだ人気は衰えていないな~」という実感が満ちるときであり、「また来年もこの製品を作ろう!」という気にさせてくれる。
ダブルベタをご利用いただいたすべてのお客様へ、今回もご愛顧いただきありがとうございました。
お客様レビュー
お客様からもさっそくレビューをいただいた:
少しずつ指先に取ってなじませてみたら、ベタってしなくてサラサラでした。
すぐに編み物してもスマホを使っても違和感なく過ごせました。
ありがたいコメントですね~
これはVOICEコーナーにお寄せいただいたコメントだが、実際はそこまでサラサラではないので、やや後ろめたくもある。
が、一般的なワセリンクリームと比較すると使いやすいと思う。
背景になぜパン?
ベタガードの商品写真にはパンが背景になったものをよく掲載しています。
「なぜ?」という質問はいただいたことはない。
よって返答する必要はないが、しゃべられて欲しい・・ベタガードを付けた手でお料理しても食事しても違和感がない!という意味を込めております。
100人が100人、同じ意見ではないでしょうが、ナチュラルな香り、口に入っても害がない成分という点で共感いただけるお客様は多いと信じます。
12月もぜひ参加ください
お待ちしております!
(2023-11-12)
( 香水工場の )
香る生活
カツラの紅葉がはじまる
カツラの落葉を探しにい・・(2023/10/29)
( 近所の公園で紅葉を探す )
秋が深まるといち早く紅葉し落葉し、そしてそのハート型のかわいい葉っぱから甘~い香りするので人気が高い広葉樹。
もともとは人里離れた冷涼な山奥や渓流沿いに自生しているが、人気があるので都会の公園や街路樹として植えらるケースも多い。
東京では奥多摩に自生するカツラを見ることができる。
Wikipediaによるとカツラの日本での群生地として「奥入瀬渓谷、奥日光、奥多摩、丹沢、上高地、芦生の森」が上げられている・・どこも渓流にめぐまれた山深い山中でしょ?
この木は清流を好み根を深く張る、そしておいしい水をたくさん飲む性質がある。
逆にカツラがあるところ地下水が豊富という伝説を有す。
中には巨大化する場合もあり、巨大化したカツラは森の魔王を思わせる風貌で信仰の対象にもなりやすい。
おお、そういえば確かこのブログでも「軍刀利神社(ぐんだりじんじゃ)の霊木カツラ」を書いたな~と思い出して調べると、なんと10年以上も前に記録していた。
(つい数年前のような記憶なのだが・・最近は万事この調子だ)
見よ、このサグラダ・ファミリアのごとき神々しさ!
・・いかがですか? 地下水脈を語る木、ハート型の葉っぱ、甘~い香り、神々しい造形・・なかなか物語性のある樹木でしょ?
もし私が田舎の持ち家に住んでいたら、カツラは我が家のシンボルツリーとして欲しい気がするな・・
当社ではかつて『桂の木』という香水を販売していたが、売れ行き悪く残念、廃盤に至る。
しかしカツラの木への愛着は商品開発以来続いている。
さて今回、都内の公園にカツラの紅葉具合を見に行った。
ここは武蔵関公園(むさしせきこうえん)、東京都練馬区。
西武新宿線の東伏見駅や武蔵関駅から歩ける公園だが、この公園は東京を横断する石神井川(しゃくじいがわ)のほぼ源泉である。
武蔵野台地の地中を脈々と流れる地下水が湧出するパワースポットなのだが、この話をはじめると熱くなるのでこのへんで。
ポイントは湧水地点ということ。
都内のカツラは人の手によって植林されたものが多いが、武蔵関公園のカツラはどうなんだろう?・・と思う。
今年はカツラの落葉した葉っぱから抹香(まっこう)を作りスタッフに見せようと考えている。
抹香とはお香の一種でお香原料を粉状にしたもの。
仏前で行われる焼香などにも利用される。
現在、この公園のカツラは少し紅葉がはじまっているものの落葉は今ひとつだった。
甘い香りも観察できなかった。
このカツラは東京都練馬区の「ねりまの名木」に指定され保護されている。
そのためか柵があって近寄れず神木に手を触れることが出来ない点が難点だが、都内から行きやすいのでありがたいカツラスポットである。
お客様コメント:
2023/10/31 (Tue) 20:01:17
桂の木、大好きです。
ウッディ系の香りが好きになったきっかけの香りでもあります。
ですが廃盤になってしまったのでなかなか使えない…
期間限定かグランデで注文できる機会が来ないものかとお知らせを密かに待っております。
・・むぎさん
(2023-10-29)
( 近所の公園で紅葉を探す )
カツラの木の話
秋が深まるといち早く紅葉し落葉し、そしてそのハート型のかわいい葉っぱから甘~い香りするので人気が高い広葉樹。
もともとは人里離れた冷涼な山奥や渓流沿いに自生しているが、人気があるので都会の公園や街路樹として植えらるケースも多い。
東京では奥多摩に自生するカツラを見ることができる。
Wikipediaによるとカツラの日本での群生地として「奥入瀬渓谷、奥日光、奥多摩、丹沢、上高地、芦生の森」が上げられている・・どこも渓流にめぐまれた山深い山中でしょ?
この木は清流を好み根を深く張る、そしておいしい水をたくさん飲む性質がある。
逆にカツラがあるところ地下水が豊富という伝説を有す。
中には巨大化する場合もあり、巨大化したカツラは森の魔王を思わせる風貌で信仰の対象にもなりやすい。
10年前のカツラの写真をお見せしよう
おお、そういえば確かこのブログでも「軍刀利神社(ぐんだりじんじゃ)の霊木カツラ」を書いたな~と思い出して調べると、なんと10年以上も前に記録していた。
(つい数年前のような記憶なのだが・・最近は万事この調子だ)
見よ、このサグラダ・ファミリアのごとき神々しさ!
・・いかがですか? 地下水脈を語る木、ハート型の葉っぱ、甘~い香り、神々しい造形・・なかなか物語性のある樹木でしょ?
もし私が田舎の持ち家に住んでいたら、カツラは我が家のシンボルツリーとして欲しい気がするな・・
香水『桂の木』
当社ではかつて『桂の木』という香水を販売していたが、売れ行き悪く残念、廃盤に至る。
しかしカツラの木への愛着は商品開発以来続いている。
カツラを見に行こう
さて今回、都内の公園にカツラの紅葉具合を見に行った。
ここは武蔵関公園(むさしせきこうえん)、東京都練馬区。
西武新宿線の東伏見駅や武蔵関駅から歩ける公園だが、この公園は東京を横断する石神井川(しゃくじいがわ)のほぼ源泉である。
武蔵野台地の地中を脈々と流れる地下水が湧出するパワースポットなのだが、この話をはじめると熱くなるのでこのへんで。
ポイントは湧水地点ということ。
都内のカツラは人の手によって植林されたものが多いが、武蔵関公園のカツラはどうなんだろう?・・と思う。
勉強用の抹香作り
今年はカツラの落葉した葉っぱから抹香(まっこう)を作りスタッフに見せようと考えている。
抹香とはお香の一種でお香原料を粉状にしたもの。
仏前で行われる焼香などにも利用される。
現在、この公園のカツラは少し紅葉がはじまっているものの落葉は今ひとつだった。
甘い香りも観察できなかった。
このカツラは東京都練馬区の「ねりまの名木」に指定され保護されている。
そのためか柵があって近寄れず神木に手を触れることが出来ない点が難点だが、都内から行きやすいのでありがたいカツラスポットである。
お客様コメント:
2023/10/31 (Tue) 20:01:17
桂の木、大好きです。
ウッディ系の香りが好きになったきっかけの香りでもあります。
ですが廃盤になってしまったのでなかなか使えない…
期間限定かグランデで注文できる機会が来ないものかとお知らせを密かに待っております。
・・むぎさん
(2023-10-29)
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