( 香水工場の )
香る生活
イチョウの葉 #2
本『イチョウの威力』によれば、イチョウの出現は約2億5千年前。
とんでもない昔で、ヒトらしき動物はかけらもなく恐竜が地上を闊歩していた時代らしいのですが、いかんせん昔のことなのでよくわかりません。
しかし、イチョウは、ソテツなどどともにいかにも古そう。チビッコたちが目を輝かせる恐竜事典に登場しそうな太古植物の風情を漂わせています。
イチョウは氷河期にいったん死滅しますが、1種類のイチョウのみが現在の中国の温暖なところで生き延び、韓国・日本などへと伝播、現在に生命を繋げてきたそうです。上の本によれば。
それゆえ「生きた化石」と呼ばれるそうです。
幕末日本からもたらされたイチョウが、ヨーロッパに根付き、米国にはヨーロッパ経由でもたらされ、現在イチョウは2億5千年前同様、全世界へと広がっています。
お父さんたちは、こういう太古の植物や動物に「憧れ」を感じる人も少なくなく、イチョウはお父さんたちには心に染み入る樹木です。
しかも、イチョウ並木は絵になります。
そういえば、不朽の名作『第三の男』の切ないラストシーンを飾るあの場面も、あれは墓場のイチョウ並木ではなかったろうか?
・イチョウ葉の安全性を調べる(日本)
・イチョウ葉の効用を調べる(海外)
・イチョウの葉 #5 イチョウの葉茶
・イチョウの葉 #4 燃えるイチョウ
・イチョウの葉 #3 脳内血管
・イチョウの葉 #2 イチョウ並木
・イチョウの葉 #1
(2007-11-30)
とんでもない昔で、ヒトらしき動物はかけらもなく恐竜が地上を闊歩していた時代らしいのですが、いかんせん昔のことなのでよくわかりません。
しかし、イチョウは、ソテツなどどともにいかにも古そう。チビッコたちが目を輝かせる恐竜事典に登場しそうな太古植物の風情を漂わせています。
イチョウは氷河期にいったん死滅しますが、1種類のイチョウのみが現在の中国の温暖なところで生き延び、韓国・日本などへと伝播、現在に生命を繋げてきたそうです。上の本によれば。
それゆえ「生きた化石」と呼ばれるそうです。
幕末日本からもたらされたイチョウが、ヨーロッパに根付き、米国にはヨーロッパ経由でもたらされ、現在イチョウは2億5千年前同様、全世界へと広がっています。
お父さんたちは、こういう太古の植物や動物に「憧れ」を感じる人も少なくなく、イチョウはお父さんたちには心に染み入る樹木です。
しかも、イチョウ並木は絵になります。
そういえば、不朽の名作『第三の男』の切ないラストシーンを飾るあの場面も、あれは墓場のイチョウ並木ではなかったろうか?
・イチョウ葉の安全性を調べる(日本)
・イチョウ葉の効用を調べる(海外)
・イチョウの葉 #5 イチョウの葉茶
・イチョウの葉 #4 燃えるイチョウ
・イチョウの葉 #3 脳内血管
・イチョウの葉 #2 イチョウ並木
・イチョウの葉 #1
(2007-11-30)
( 香水工場の )
香る生活
( 香水工場の )
香る生活
イチョウの葉 #1
イチョウは、私が好きな落葉樹です。
黄色い葉を滝のように落とす晩秋のイチョウの大木は見応えがあります。
紅葉した葉っぱが地面を覆うといよいよ冬到来という実感がでてきます。
ところで、今年はイチョウの葉を煎じて飲んでみようかと考えています。
香りの図書館(飯田橋)でたまたま手にしたイチョウの本に影響されて「見るイチョウ」から「食するイチョウ」を試したくなりました。
サプリメントでは、脳内血管を改善する機能性食品(通称「サプリメント」)として「イチョウ葉エキス」があります。
ドイツでは日本から大量のイチョウの葉を輸入し「医薬品」の原料として使用されているそうです。
シュワーベ製薬「EGb761」(Extractum Ginkgo bilobae 761)は、イチョウ葉の成分からギンコール酸(アレルギー性が報告されている)などを除去し、ギンコライドの濃度を調整したものだそうで。
ボタニカル医薬品(植物原料から作る医薬品)として人気があるとか。
現代西洋医学では、医薬品は純度が非常に高い成分のみで製造するため必然的にケミカル合成による成分が使用されます。
複雑で雑多な微量成分を含有するハーブや薬草類のエキス、粉末、抽出物は「医薬品」とは見なされないなので、EGb761は異色の医薬品と思います(EGb761は、米国では医薬品として認可されていない模様)。
・イチョウ葉の安全性を調べる(日本)
・イチョウ葉の効用を調べる(海外)
・イチョウの葉 #5 イチョウの葉茶
・イチョウの葉 #4 燃えるイチョウ
・イチョウの葉 #3 脳内血管
・イチョウの葉 #2 イチョウ並木
・イチョウの葉 #1
(2007-11-28)
黄色い葉を滝のように落とす晩秋のイチョウの大木は見応えがあります。
紅葉した葉っぱが地面を覆うといよいよ冬到来という実感がでてきます。
ところで、今年はイチョウの葉を煎じて飲んでみようかと考えています。
香りの図書館(飯田橋)でたまたま手にしたイチョウの本に影響されて「見るイチョウ」から「食するイチョウ」を試したくなりました。
サプリメントでは、脳内血管を改善する機能性食品(通称「サプリメント」)として「イチョウ葉エキス」があります。
ドイツでは日本から大量のイチョウの葉を輸入し「医薬品」の原料として使用されているそうです。
シュワーベ製薬「EGb761」(Extractum Ginkgo bilobae 761)は、イチョウ葉の成分からギンコール酸(アレルギー性が報告されている)などを除去し、ギンコライドの濃度を調整したものだそうで。
ボタニカル医薬品(植物原料から作る医薬品)として人気があるとか。
現代西洋医学では、医薬品は純度が非常に高い成分のみで製造するため必然的にケミカル合成による成分が使用されます。
複雑で雑多な微量成分を含有するハーブや薬草類のエキス、粉末、抽出物は「医薬品」とは見なされないなので、EGb761は異色の医薬品と思います(EGb761は、米国では医薬品として認可されていない模様)。
・イチョウ葉の安全性を調べる(日本)
・イチョウ葉の効用を調べる(海外)
・イチョウの葉 #5 イチョウの葉茶
・イチョウの葉 #4 燃えるイチョウ
・イチョウの葉 #3 脳内血管
・イチョウの葉 #2 イチョウ並木
・イチョウの葉 #1
(2007-11-28)
( 香水工場の )
香る生活
ローズの贈り物 & サンタの贈り物
(2007/11/25)
今時の欧米はまさに「天然ブーム」。需要が毎年確実に増加してきており、ブルガリアではローズオイルを仕入れたくてもなかなか入手できない状況も呈し始めています。
しかし、当社は少量生産ということもあり、価格の高騰はやむ得ないとしても、それ以外は大きな問題もなく今年も「今年のクロップ」による『ローズの贈り物』をお届けできることになりました。
なるべくローズオイルそのままのテイストを壊さないこと。
ローズ香水の多くは「ファンタスティック」で「ロマンティック」にアレンジされたもの。その方が一般には「素敵に」感じられます。
それが香水のすばらしさであり、また香水の香水たる所以ですが『ローズの贈り物』に関してはそういうアレンジを最小限にしています。
よって、本物のローズオイルをご存じない方には「これがローズ?」という疑問符も付くかもしれません。お気に召す香りであることを祈ります。
『サンタの贈り物』は、今年も北海道産モミの木精油を使用しました。これは『ローズの贈り物』のように成分をそのまま全面に出すことを意図していません。
モミの葉っぱから水蒸気蒸留によって抽出される精油は、おだやか香り立ちです。懐かしさを感じさせる香りです。
この2品『ローズの贈り物』・『サンタの贈り物』には、30mLのボトル1本ごとに1個の「練り香水 ローズの贈り物」がプレゼントとして付いてきます。
この練り香水はローズオイルをたっぷり入れています。どれくらい本物か、本当のローズオイルを愛するお客様にぜひお使いいただきたいと願っております。
「練り香水 ローズの贈り物」
(2007-11-25)
天然ブームによる品薄
今時の欧米はまさに「天然ブーム」。需要が毎年確実に増加してきており、ブルガリアではローズオイルを仕入れたくてもなかなか入手できない状況も呈し始めています。
しかし、当社は少量生産ということもあり、価格の高騰はやむ得ないとしても、それ以外は大きな問題もなく今年も「今年のクロップ」による『ローズの贈り物』をお届けできることになりました。
『ローズの贈り物』のコンセプト
なるべくローズオイルそのままのテイストを壊さないこと。
ローズ香水の多くは「ファンタスティック」で「ロマンティック」にアレンジされたもの。その方が一般には「素敵に」感じられます。
それが香水のすばらしさであり、また香水の香水たる所以ですが『ローズの贈り物』に関してはそういうアレンジを最小限にしています。
よって、本物のローズオイルをご存じない方には「これがローズ?」という疑問符も付くかもしれません。お気に召す香りであることを祈ります。
今年の『サンタの贈り物』
『サンタの贈り物』は、今年も北海道産モミの木精油を使用しました。これは『ローズの贈り物』のように成分をそのまま全面に出すことを意図していません。
モミの葉っぱから水蒸気蒸留によって抽出される精油は、おだやか香り立ちです。懐かしさを感じさせる香りです。
今年のプレゼント
この2品『ローズの贈り物』・『サンタの贈り物』には、30mLのボトル1本ごとに1個の「練り香水 ローズの贈り物」がプレゼントとして付いてきます。
この練り香水はローズオイルをたっぷり入れています。どれくらい本物か、本当のローズオイルを愛するお客様にぜひお使いいただきたいと願っております。
「練り香水 ローズの贈り物」
キャンペーン
- 開催期間:2007年11月25日〜12月25日
- 内容:期間限定の『ローズの贈り物』・『サンタの贈り物』(30mL/1mL)リリース
- ショッピングサイト:
・『ローズの贈り物』
・『サンタの贈り物』
- プレゼント:30mLの『ローズの贈り物』・『サンタの贈り物』には、1本ごとに1個の「練り香水 ローズの贈り物」がもれなく付きます。
- 店頭販売:伊勢丹新宿店地下2F、フレグランスコーナーにて
- ※注意事項:数量限定で本数に限りがあります。在庫がなくなり次第販売を終了します。
(2007-11-25)
( 香水工場の )
香る生活
九州の櫨7 化粧品原料としてハゼ蝋
●化粧品原料としてハゼ蝋
私は製造中のハゼ蝋(櫨蝋)をひとつまみ手に取り口の中に放り込んでみました。天然物の成分試験は高度な分析機を駆使しますが、最終的には香料も原料も「味で見る」という職人芸的な研究者は少なくありません。
実はパフューマーの中にもそれが本物の天然香料かどうかを判断する際、最終的に舐めたり口に入れる人がいます。私は残念ながら味で成分まで判別する職人芸は持ち合わせていませんが、まねごとでなめて噛んでみるとハゼ蝋(櫨蝋)にはまったく味がありませんでした。
まさに噛むほどにロウを噛む感触(当たり前ですが)。上下の歯にまとわりつく粘り気はハゼ蝋(櫨蝋)の特徴である強靱さを感じさせます。
植物蝋(ベジタブルワックス)として世界的に流通しているものは、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、そしてハゼ蝋(櫨蝋)(ジャパンワックス)。動物蝋としてミツロウ(ビーズワックス)、鉱物蝋としてパラフィンワックスなどがあります。
それぞれに特徴があり優劣は付けられないと思いますが、化粧品の原料という観点からすれば化粧品メーカーとってはパラフィンワックスがもっとも優れているとする意見が圧倒的。
たとえば、コスト。たとえば、安定供給性。
その他、純度の高さ(純度の高さは品質の安定性となります)、安全性(アレルギー反応を起こす人が少ないとされています)、汎用性、色・匂い(化粧品原料は一般に無色無臭か白色無臭が好まれます)・・・どれもこれもパラフィンワックスは絵に描いたような理想的な原料です。
しかし、私はこの目前に独特の匂いとともに高温で流れ出ているオリーブ色の素朴なハゼ蝋(櫨蝋)を使用して化粧品を作りたいという気持ちでいっぱいです。
植物性であること、天然であること、環境循環型の産物であること、トレーサビリティーがしっかりしていること、そして日本産であること。私は日本産の原料を使用することにとても心惹かれます。魅力的な要素がいっぱいです。
それにしても化粧品原料としてのハゼ蝋(櫨蝋)は個性が強すぎます。濃厚なオリーブ色、独特の強い匂い。それらは扱いにくさの要素ですが、強い粘靱性は魅力です。
その粘靱性はリップクリームには向きそうです。天然成分で「落ちない口紅」を作ることは実現不可能ですが、ハゼ蝋(櫨蝋)なら強い強度で残り、そして適度に落ちて、しかも完全に安全なリップケア用の製品になる予感がします。
この粘靱性の立て役者が「日本酸」(Japan Acid)。
ハゼ蝋の成分はパルミチン酸などがメインですが、「日本酸」というとても珍しい成分が含まれています。
日本酸(にほんさん)とは、脂肪酸の一種ですが、ハゼ蝋に特徴的な成分で他の植物性オイル・バター・ワックスに見られない成分です。当然動物性のワックスや脂肪にもありません。実は中国産のウルシの木にも日本酸が含まれていることが発見されていますが、その含有率は零点数パーセント。
一方日本のハゼ蝋(木蝋・モクロウ)には数パーセント〜5パーセント含有されています。これがハゼ蝋(木蝋・モクロウ)の「腰の強さ」(粘靱性)を支えているのではと考えられています。
両端をカルボキシル基にはさまれた21個の炭素鎖有機化合物とのことです。ネーミングについておもしろい記述がありまあした。
「これはドイツの化学者が20世紀の初めごろ、日本産のハゼの木の木蝋から単離したものです。なぜ日本酸というネーミングになったか、詳しいところは明らかになっていません」
日本酸のおかげで、天然ながら「付けやすく落ちにくい」リップクリームが期待できそうです。
また、スキンケアとして、荒れた肌の強力な保護クリームとしてはどうでしょうか?・・・様々な構想やアイデアが浮かんできますが、試作や検証してみないとわからないことばかりです。他の成分との相性も気になります。
(2007-11-24)
私は製造中のハゼ蝋(櫨蝋)をひとつまみ手に取り口の中に放り込んでみました。天然物の成分試験は高度な分析機を駆使しますが、最終的には香料も原料も「味で見る」という職人芸的な研究者は少なくありません。
実はパフューマーの中にもそれが本物の天然香料かどうかを判断する際、最終的に舐めたり口に入れる人がいます。私は残念ながら味で成分まで判別する職人芸は持ち合わせていませんが、まねごとでなめて噛んでみるとハゼ蝋(櫨蝋)にはまったく味がありませんでした。
まさに噛むほどにロウを噛む感触(当たり前ですが)。上下の歯にまとわりつく粘り気はハゼ蝋(櫨蝋)の特徴である強靱さを感じさせます。
植物蝋(ベジタブルワックス)として世界的に流通しているものは、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、そしてハゼ蝋(櫨蝋)(ジャパンワックス)。動物蝋としてミツロウ(ビーズワックス)、鉱物蝋としてパラフィンワックスなどがあります。
それぞれに特徴があり優劣は付けられないと思いますが、化粧品の原料という観点からすれば化粧品メーカーとってはパラフィンワックスがもっとも優れているとする意見が圧倒的。
たとえば、コスト。たとえば、安定供給性。
その他、純度の高さ(純度の高さは品質の安定性となります)、安全性(アレルギー反応を起こす人が少ないとされています)、汎用性、色・匂い(化粧品原料は一般に無色無臭か白色無臭が好まれます)・・・どれもこれもパラフィンワックスは絵に描いたような理想的な原料です。
しかし、私はこの目前に独特の匂いとともに高温で流れ出ているオリーブ色の素朴なハゼ蝋(櫨蝋)を使用して化粧品を作りたいという気持ちでいっぱいです。
植物性であること、天然であること、環境循環型の産物であること、トレーサビリティーがしっかりしていること、そして日本産であること。私は日本産の原料を使用することにとても心惹かれます。魅力的な要素がいっぱいです。
それにしても化粧品原料としてのハゼ蝋(櫨蝋)は個性が強すぎます。濃厚なオリーブ色、独特の強い匂い。それらは扱いにくさの要素ですが、強い粘靱性は魅力です。
その粘靱性はリップクリームには向きそうです。天然成分で「落ちない口紅」を作ることは実現不可能ですが、ハゼ蝋(櫨蝋)なら強い強度で残り、そして適度に落ちて、しかも完全に安全なリップケア用の製品になる予感がします。
この粘靱性の立て役者が「日本酸」(Japan Acid)。
ハゼ蝋の成分はパルミチン酸などがメインですが、「日本酸」というとても珍しい成分が含まれています。
日本酸(にほんさん)とは、脂肪酸の一種ですが、ハゼ蝋に特徴的な成分で他の植物性オイル・バター・ワックスに見られない成分です。当然動物性のワックスや脂肪にもありません。実は中国産のウルシの木にも日本酸が含まれていることが発見されていますが、その含有率は零点数パーセント。
一方日本のハゼ蝋(木蝋・モクロウ)には数パーセント〜5パーセント含有されています。これがハゼ蝋(木蝋・モクロウ)の「腰の強さ」(粘靱性)を支えているのではと考えられています。
両端をカルボキシル基にはさまれた21個の炭素鎖有機化合物とのことです。ネーミングについておもしろい記述がありまあした。
「これはドイツの化学者が20世紀の初めごろ、日本産のハゼの木の木蝋から単離したものです。なぜ日本酸というネーミングになったか、詳しいところは明らかになっていません」
日本酸のおかげで、天然ながら「付けやすく落ちにくい」リップクリームが期待できそうです。
また、スキンケアとして、荒れた肌の強力な保護クリームとしてはどうでしょうか?・・・様々な構想やアイデアが浮かんできますが、試作や検証してみないとわからないことばかりです。他の成分との相性も気になります。
- 九州の櫨9 スローライフとハゼ蝋
- 九州の櫨8 島原半島のハゼ蝋
- 九州の櫨7 化粧品原料としてハゼ蝋
- 九州の櫨6 ハゼ蝋の安全性
- 九州の櫨5 ハゼ蝋産業の半世紀
- 九州の櫨4 和蝋燭とイケているオトコのポマード
- 九州の櫨3 ハゼ蝋の工場、荒木製蝋
- 九州の櫨2 久留米の柳坂曽根
- 九州の櫨1 太宰府天満宮
(2007-11-24)
( 香水工場の )
香る生活
ムエット・匂い紙の深い話
(post) 2007/11/23, (updated) 2021/09/11
( 現在、社内でメインに使われているムエット )
きょうは「ムエット」のお話です。香水売り場に備え付けられているあの "紙切れ" のことです。
日本語では「匂い紙」(においがみ)。
日本の調香師さんは「試香紙」(しこうし)や「香料試験紙」と呼んでいます。
だいたい白い厚手の紙で、短冊状に切られたもの。先っちょに香料や香水を付けたり、スプレーしたり、瓶に直接入れて香りを付けます。
香水は、本来自分の肌に直接つけて自分の肌や体臭との相性や試すものですが、何種類も試す場合や、純粋に香料だけを見る場合は、無色無臭の紙切れ・ムエットで試します。
コーヒーのテイスティングでは、口に含んだら飲み込まずに戻すやり方が多いでしょ。
香水も自分の肌に残すと次の香りがわからなくなるため、数種類のスメリングではムエットを利用します。
売り場では、ムエットで何種類か試してお気に入りの香りがあれば、そのまま購入せず、そのお気に入りの一品を実際に肌に付けて時間の経過(1日くらい)とともに香りの変化を見るとよいでしょう。
(トップノートだけでの衝動買いは、あまりお勧めしません)
ムエットはフランス語、「mouillette」。私はフランス語がダメなので、間違っているかもしれませんが、もともと料理用語のようです。
mouilletteの英語訳は、ある辞典によれば「strip of bread」(パン切れ)とでています。
・「Piece of bread or other solid food that is dipped in a sauce.」
(ソースに突っ込んで食べるパン切れか他の固形状切れ端)
・「Small long and thin bread piece that one soaks in the soft-boiled eggs.」
(半熟玉子に浸して食べる長くて薄いパンの切れ端)
なるほど、要は小麦粉を焼いて作るスティック状の平ぺったい固パンらしいです。
かのフランスにはそういう食材があるのでしょう。
朝食に出された半熟玉子をスティックで掘り返しているイメージが浮かびます。
綴りを見ると「ムイレット」「ムワイレット」と発音したくなりますが、私が聞いた範囲では、フランス人は mouillette を「ムイエット」と発音しています。
最後の「ト」は聞き取れるか聞き取れないくらいの音。
→ mouillette の発音
ムエットは英語では smelling-strip といいますが、mouillette も通じるようです。
さて、ムエットに使用される紙にはちょっとした特徴があります。
(1) まずは無臭であること (当然ですよね)。
(2) 香料を付けても化学変化しないこと。香りをつけてヘンな匂いを発生しないこと・変化しないことは重要です。
(3) それに、香料の浸透性がよくて香りの保留性も高いこと。
逆にこの条件を満たせばどんな紙切れでもムエットとして使用可能です。
ムエットは、何かスペシャルな素材の紙だと誤解されている方も少なくないようですが、ボクら商談で海外などに行ったとき、手持ちのムエットがないとノートの端切れを破いてムエット代わりにします。
特に外国人はあまり気にしません。
武蔵野ワークスでは、自社オリジナルのムエットを何度か制作したことがあります。
紙屋さんで様々な紙切れをもらってきて片っ端から香料を付けていきます。
香り立ちがよく、香りの保留性が高いものをテストして、他社では見たこともないような紙質の固い強度のあるもので制作したこともあります。
パフューマーや香りのプロが使用するムエットは、それ専用に開発されたムエットです。
(1) どこの国でもだいたい細くて長い紙切れです。
(2) 時として先っぽが細くなります。
その理由は口が狭い香料瓶が多いためです。
短冊状の紙切れの先をちょっと香料を浸すためには細くて長くて尖っている方がよいわけです。
香水売り場で見かけるムエットはむしろ帯広です。
時として名刺やウチワのような形状のおしゃれムエットもあります。
この理由は売り場でのスメリングはスプレーを吹きかけるため面積がある程度あったほうがいいし、また無地のムエットよりはブランド名や商品名を入れたいからです。
ムエット自体おしゃれということもあり、世の中には「ムエットコレクター」なる人々もおられます。世の中さまざまですね。
そして、反対意見もあると思いますが、私の実験によれば、帯広のムエットの方が一般人には香りがはっきり判別できるのです。
しかもよい香りに感じます。ムエットの面積と判別のしやすさはある程度比例しています。
逆にパフューマーやプロはなるべく細くて面積の小さいムエットを選ぶ人が多いでしょう。
面積が広いムエットで大量の香りを吸い込むと次の香り判別に影響がでますので。
嗅ぎ方も何回もクンクンするのではなく1回、ほんの少し香りを吸い込み、すぐにムエットを鼻から遠ざけます。
なるべく1回勝負で香りを評価したり成分を判別する方が理想的だと思います。
他の五感(感覚器官)と比較すると極端に疲労しやすい嗅覚 (嗅覚疲労 = その匂いを感じなくなる現象) は、少ない回数で白黒をつけることが大切です。
人によってはコーヒー豆などで嗅覚疲労をリセット(気付け)する人もいます。
そういうアドバイスをする人がいますが、多くの人にとってコーヒーは大して効きません。
むしろ、自分の脇の下を嗅ぐリセット(脇の下リセット)の方が、効果があるように思います。
嗅覚疲労リセットは、それよりも、10分くらいどこか歩き回ってくることおすすめします。
最後に、お客様からいただいた質問です。
「ムエットはどこで買えばいいですか?」
大手通販サイトで検索すればでてきますよ。
相場は、だいたい1枚10円といったところでしょうか?
たかが小さな紙切れですが、案外高いでしょ?需要が少ないので生産メーカーも少なく、このような価格になります。
海外から輸入すれば、それなりに安価になるのですが、最低ロット1万枚など、一般消費者にとっては、枚数が現実的でありませんよね。
そうそう、もう一つだけ。
使用済みのムエットを本やノートのしおりとして利用する人がいます。楽しい利用方法ですね。
・オリジナルムエットは案外高い・・・たかが紙切れですが、1万本制作して1本10円程度と知ってしまえば、気持ち的にムエットも「たかが紙切れ」とはバカにできなくなるんですよね・・・
・真ん中あたりにあるのが、武蔵野ワークスオリジナルお客様用ムエット。社内の調香やスメリングでは、上記の理由により、細い標準ムエットが使用されています。
・商談中のスメリング。パフューマーのように日常的に嗅覚を使用すれば慣れると思いますが、これだけの種類の香りを嗅ぐと私の場合体力の消耗が激しく疲れます。スメリングで脳味噌内の普段使われない嗅覚は超アクティブ状態。
【関連記事】
・おもしろ企画、ムエット配布プラン (2021/09/08)
(2007-11-23)
( 現在、社内でメインに使われているムエット )
ムエットとは? 試香紙とは?
きょうは「ムエット」のお話です。香水売り場に備え付けられているあの "紙切れ" のことです。
日本語では「匂い紙」(においがみ)。
日本の調香師さんは「試香紙」(しこうし)や「香料試験紙」と呼んでいます。
だいたい白い厚手の紙で、短冊状に切られたもの。先っちょに香料や香水を付けたり、スプレーしたり、瓶に直接入れて香りを付けます。
自分に付けないための小道具
香水は、本来自分の肌に直接つけて自分の肌や体臭との相性や試すものですが、何種類も試す場合や、純粋に香料だけを見る場合は、無色無臭の紙切れ・ムエットで試します。
コーヒーのテイスティングでは、口に含んだら飲み込まずに戻すやり方が多いでしょ。
香水も自分の肌に残すと次の香りがわからなくなるため、数種類のスメリングではムエットを利用します。
ムエットで試し、そして自分の肌で確認
売り場では、ムエットで何種類か試してお気に入りの香りがあれば、そのまま購入せず、そのお気に入りの一品を実際に肌に付けて時間の経過(1日くらい)とともに香りの変化を見るとよいでしょう。
(トップノートだけでの衝動買いは、あまりお勧めしません)
ムエット?・・フランス語講座
ムエットはフランス語、「mouillette」。私はフランス語がダメなので、間違っているかもしれませんが、もともと料理用語のようです。
mouilletteの英語訳は、ある辞典によれば「strip of bread」(パン切れ)とでています。
・「Piece of bread or other solid food that is dipped in a sauce.」
(ソースに突っ込んで食べるパン切れか他の固形状切れ端)
・「Small long and thin bread piece that one soaks in the soft-boiled eggs.」
(半熟玉子に浸して食べる長くて薄いパンの切れ端)
なるほど、要は小麦粉を焼いて作るスティック状の平ぺったい固パンらしいです。
かのフランスにはそういう食材があるのでしょう。
朝食に出された半熟玉子をスティックで掘り返しているイメージが浮かびます。
ムエットの発音・・ムイエット?
綴りを見ると「ムイレット」「ムワイレット」と発音したくなりますが、私が聞いた範囲では、フランス人は mouillette を「ムイエット」と発音しています。
最後の「ト」は聞き取れるか聞き取れないくらいの音。
→ mouillette の発音
ムエットは英語では smelling-strip といいますが、mouillette も通じるようです。
ムエットに適した紙の種類・特徴
さて、ムエットに使用される紙にはちょっとした特徴があります。
(1) まずは無臭であること (当然ですよね)。
(2) 香料を付けても化学変化しないこと。香りをつけてヘンな匂いを発生しないこと・変化しないことは重要です。
(3) それに、香料の浸透性がよくて香りの保留性も高いこと。
逆にこの条件を満たせばどんな紙切れでもムエットとして使用可能です。
ムエットは、何かスペシャルな素材の紙だと誤解されている方も少なくないようですが、ボクら商談で海外などに行ったとき、手持ちのムエットがないとノートの端切れを破いてムエット代わりにします。
特に外国人はあまり気にしません。
オリジナル・ムエット
武蔵野ワークスでは、自社オリジナルのムエットを何度か制作したことがあります。
紙屋さんで様々な紙切れをもらってきて片っ端から香料を付けていきます。
香り立ちがよく、香りの保留性が高いものをテストして、他社では見たこともないような紙質の固い強度のあるもので制作したこともあります。
プロ用のムエット
パフューマーや香りのプロが使用するムエットは、それ専用に開発されたムエットです。
(1) どこの国でもだいたい細くて長い紙切れです。
(2) 時として先っぽが細くなります。
その理由は口が狭い香料瓶が多いためです。
短冊状の紙切れの先をちょっと香料を浸すためには細くて長くて尖っている方がよいわけです。
帯広なムエットの意味
香水売り場で見かけるムエットはむしろ帯広です。
時として名刺やウチワのような形状のおしゃれムエットもあります。
この理由は売り場でのスメリングはスプレーを吹きかけるため面積がある程度あったほうがいいし、また無地のムエットよりはブランド名や商品名を入れたいからです。
ムエットコレクター
ムエット自体おしゃれということもあり、世の中には「ムエットコレクター」なる人々もおられます。世の中さまざまですね。
そして、反対意見もあると思いますが、私の実験によれば、帯広のムエットの方が一般人には香りがはっきり判別できるのです。
しかもよい香りに感じます。ムエットの面積と判別のしやすさはある程度比例しています。
ムエットの使い方
逆にパフューマーやプロはなるべく細くて面積の小さいムエットを選ぶ人が多いでしょう。
面積が広いムエットで大量の香りを吸い込むと次の香り判別に影響がでますので。
嗅ぎ方も何回もクンクンするのではなく1回、ほんの少し香りを吸い込み、すぐにムエットを鼻から遠ざけます。
なるべく1回勝負で
なるべく1回勝負で香りを評価したり成分を判別する方が理想的だと思います。
他の五感(感覚器官)と比較すると極端に疲労しやすい嗅覚 (嗅覚疲労 = その匂いを感じなくなる現象) は、少ない回数で白黒をつけることが大切です。
嗅覚疲労のコーヒーリセット? 脇の下リセット?
人によってはコーヒー豆などで嗅覚疲労をリセット(気付け)する人もいます。
そういうアドバイスをする人がいますが、多くの人にとってコーヒーは大して効きません。
むしろ、自分の脇の下を嗅ぐリセット(脇の下リセット)の方が、効果があるように思います。
嗅覚疲労リセットは、それよりも、10分くらいどこか歩き回ってくることおすすめします。
ムエットの販売店と価格
最後に、お客様からいただいた質問です。
「ムエットはどこで買えばいいですか?」
大手通販サイトで検索すればでてきますよ。
相場は、だいたい1枚10円といったところでしょうか?
たかが小さな紙切れですが、案外高いでしょ?需要が少ないので生産メーカーも少なく、このような価格になります。
海外から輸入すれば、それなりに安価になるのですが、最低ロット1万枚など、一般消費者にとっては、枚数が現実的でありませんよね。
使用済みムエットのおしゃれな使い方
そうそう、もう一つだけ。
使用済みのムエットを本やノートのしおりとして利用する人がいます。楽しい利用方法ですね。
・オリジナルムエットは案外高い・・・たかが紙切れですが、1万本制作して1本10円程度と知ってしまえば、気持ち的にムエットも「たかが紙切れ」とはバカにできなくなるんですよね・・・
・真ん中あたりにあるのが、武蔵野ワークスオリジナルお客様用ムエット。社内の調香やスメリングでは、上記の理由により、細い標準ムエットが使用されています。
・商談中のスメリング。パフューマーのように日常的に嗅覚を使用すれば慣れると思いますが、これだけの種類の香りを嗅ぐと私の場合体力の消耗が激しく疲れます。スメリングで脳味噌内の普段使われない嗅覚は超アクティブ状態。
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